毒7
翌朝。
久しぶりにベッドで寝たのでとてもよく眠ることができた。
いい宿なので、追加で10日泊まることにして、その分の宿代の銀貨5枚を先払いして森へ向かう。
普通の冒険者は朝一で冒険者ギルドに行って、受付カウンター横に張り出されている討伐依頼を受けるらしく、その方が魔石の買取だけでなく依頼料ももらえるので割がいいらしいが、ゴブリン討伐は討伐依頼には無いので、当分俺は討伐依頼は受けずゴブリン狩りだけをしようと思う。
いまのところゴブリン狩りで危険な目には合っていなかったので、安全にコツコツとレベルを上げていこうと思う。
・・・そう思っていたのに、森に入るといきなり狼系の魔物と遭遇した。
鑑定すると
【ステータス】
種族:フォレストウルフ
レベル:3
HP:33/33
MP:0/0
スキル:牙撃Lv.2
基本レベルはゴブリンと同じだが、スキルレベルが一つ上だ。
いきなりの遭遇だったので投石の準備もできていなければ、剣に毒草を塗り付けてもいなかった。
仕方がないので剣で戦うことにする。
フォレストウルフが嚙みついてきたのを横にかわして剣をふるう。
ゴブリンよりも動きが素早く、剣が空振りしてしまう。
2度空振りしたが、3回目は漸く小さな傷をつけることができた。
その後も少しづつダメージを与え続けてなんとか倒すことはできたが、俺自身もだいぶ傷を負ってしまいHPは半分くらいに減ってしまった。
仕方がないので回復ポーションを飲んだ。
軽い傷はみるみるうちに治っていくのはとても不思議だ。
回復ポーション一本でHPが10回復する。
もったいないが安全のために二本飲んでHPを全回復しておく。
回復ポーション2本で銀貨2枚、これで一日の稼ぎが消えてしまうと思うと冒険者稼業はやはり世知辛い。
しかもこれだけ危険な思いをして倒したフォレストウルフの魔石はゴブリンの魔石とほぼ同じくらいの大きさなので全く割に合わない。
まあ、今回は俺の準備不足だったので仕方がない。
ただ、フォレストウルフの素材は売れるとのことだったのでそれに期待しよう。
森の中を進む前に、今度は剣に毒草を塗り付けて、いつでも戦えるように準備する。
でも、その後フォレストウルフと遭遇することはなく、出会うのはゴブリンばかり。
これまでのようにゴブリンを20匹倒したところで日が傾いてきたので街に戻ることにした。
昨日までにレベルは4まで上がっていたので、フォレストウルフには苦戦したがゴブリンの動きには余裕をもって対処できるようになったので、投石しなくても毒剣だけでゴブリンを倒せるようになった。
今日も街に戻る前に川で体を丁寧に洗った。
体を洗いながら、もしかしたら毒草の臭いでフォレストウルフは寄ってこなかったのかもしれないと今頃気が付いた。
冒険者ギルドのカウンターに行くと昨日のお姉さんがいたので、ゴブリンとフォレストウルフの魔石を合わせて21個を渡すとひどく驚かれた。
「もしかして、今日だけで21匹倒したの?」
「はい、そうですが何かまずかったですか?」
「いえ、初級冒険者ではどんなに頑張っても1日にゴブリン10匹が限度よ。中級冒険者でも1日に20匹倒すのは難しいと思うわ。」
自分では分からなかったが、俺の戦い方はかなり効率が良かったようだ。
ちなみに、フォレストウルフの素材を冒険者ギルドの隣の素材屋に売りに行ったら傷が多すぎるため買い取ってもらえなかった。
傷が少なければ銅貨2枚になるらしいが、今の俺では毒草を使わないと傷少なく倒せないし、毒草を使うとフォレストウルフは寄ってこないため、フォレストウルフの討伐は俺には難しそうだ。