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第3話 転生してから3年経った・・・

 俺がミソギハライに転生させられてから、もう3年が経つ。


 最近ある程度であれば、自由に走り回れるくらいにはなってきた。

 また成長と共に、聴力や口腔の機能が発達してきたおかげか、言葉足らずながらも喋ることもできる。


 最初は、授乳にオムツ替えという名の恥辱プレイに、取り乱してばかりだった俺も、最近では現状を受け入れ落ち着いてきた。


 赤ちゃんなんだから仕方がない。

 そう、仕方がないことなのだ。


 記憶を持ったまま転生してきたことは、決して不幸なことではない。


 それに、ミソギハライは俺を転生させるにあたり、最大限便宜を図ってくれたようだ。


「カナデちゃん、このモンスターはなんて言うのかママに教えてくれるかな?」


 そう、一から文字を覚えることもなく、文字や言葉が理解できるのだ。

 文字や言葉が理解できるとはいえ、俺はまだ3歳児。


 そう3歳児なのだ。

 3歳児らしさを忘れてはならない。


「ぎゅうにゅう!」


 答えは、ミノタウルスである。


「う~ん。惜しい! それは雌のミノタウルスのお乳の名前よ~。カナデちゃんは牛乳大好きだものね。」


 そう、この世界の牛乳はとても濃厚で美味しいのだ。特に、ミノタウルスの肉と乳で作るシチューの味は絶品である。

 とはいえ、まだまだ3歳児。噛む力や消化機能がまだ未熟なため、あまり固いものを食べることはできない。


 ここ数年で集めた情報によると、どうやら俺はセイリュウ一家の次男、カナデとして転生したらしい。

 フルネームで言えば、カナデ・セイリュウ。

 漢字ではなく横文字になってしまったが、姓名判断的に大丈夫なんだろうか?

 とても心配である。


 話しは逸れてしまったが、どうやらこの世界は地球ではないらしい。

 壁に貼ってある地図を見てみるとそこには、見たことも聞いたこともない大陸が描かれていた。

 どうやら本当に異世界に転生してしまったようだ。


 またこの世界には、元の世界で言うところの動物、モンスターが存在する。話によると、ダンジョンと呼ばれる場所に多く生息しているらしい。

 ダンジョン以外にも生息しているみたいだが、ぜひ実物を見てみたい。


 ああ、忘れていた。

 この世界の一日の時間は24時間、一年で365日と元の世界とあまり変わらないらしい。

 そして通貨の単位は、コル。

 1コル1円の価値があるようだ。


 よく異世界系の小説にあるような金貨や銀貨などは使われていない。

 使われているのは、1コル、5コル、10コル、50コル、100コル、500コルの硬貨と、1,000コル、5,000コル、10,000コル紙幣がこの世界では流通している。


 簡単にいえば、動物がモンスターに、円がコルに、サバンナがダンジョンに変わった世界に俺は転生したということが分かってきた。


 そして、この世界には魔法というものがある!

 8歳になると近くの教会で洗礼というものを受けることになっており、その時、魔法の適性と固有魔法を授かることができるらしい。

 実は、洗礼を待ちきれず、両親が寝ている間に魔法の練習をしているのは内緒だ。


「カナデ~。カナデちゃん? ちょっと聞いているの? カナデちゃん??」


 おっと、思考の渦に嵌っていた。

 もちろん、話は聞いていた。ただ聞いた話が耳から耳を素通りしていっただけだ。

 決して、嘘なんかついていない。


 こういう時はあれだ。こんな時使える魔法の言葉がある。


「うん!」


 そう、とりあえず『うん!』と答えておけば何とかなるのである。


「そうですかぁ~! カナデちゃんは可愛いですね~! やっぱり女の子の服が好きですかぁ~。」


 とんでもないタイミングで『うん!』と言ってしまった。


 気付けは、俺は女の子の恰好をさせられている。不幸だ。

 間違って、男の娘にでも目覚めてしまったらどう責任を取るつもりなんだろうか?


 セイリュウ家の次男が男の娘、笑い話にもならない。

 それに『やっぱり』とはどういう意味だろうか、どう考えても母の考えが分からない。


「パパ~。可愛い可愛い私たちのカナデちゃんが呼んでるわよ~。」


 いや。別に呼んでない。

 むしろこんな姿を見せないでほしい。


「カナデちゃんがパパを呼んでると聞いてッ!!」


 母に呼ばれて父が颯爽と現れた。

 金色の髪を靡かせ、数々の女性を泣かしてきたであろう甘いマスクで、じっと見つめてくるのが父だ。


「おお……天使だ。天使がここにいる……。ママ、グジョブ!」


 父も母も大げさである。

 3歳児なんてみんな可愛いに決まっている。


 ちなみに俺の父親、ツバサ・セイリュウは、辺境に住むお貴族様らしい。

 そして、現在進行形で俺を着せ替え人形のように遊んでいるのが、俺の母、カレン・セイリュウである。


 そんな母は、女装の次は、俺の背中に翼を着けはじめた。

 黄色い輪のようなものまで用意している。どこから用意したんだ。

 多分、父の言った天使発言でインスピレーションが沸いたのだろう。


 なお、この世界に天使は本当に存在する……らしい。

 教会では、神さまに代わり天使が魔法を授けてくれるものと信じられている。


 俺としては、割とどうでもいい情報だ。

 この世界にGoTo(転生)した理由、それは前世で掴めなかった幸せを掴み取るために他ならない。


 しかしこの、幸せの定義が難しい。

 前世の俺は、嫌われているせいか友達が一切できなかった。

 なら、まずは友達作りから始めよう。


 奏の年齢は3歳。まだまだ人生が始まったばかりである。

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