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「他人の過去を勝手に話して良いものかと私も思いますが、きっと…何があったのか知って欲しくて私に見せたのだと思います。」
マリナはそう言って光とありさに見せられた全てを話した。
一人孤独にただ人間を見守っていた事、一人の青年が偶然ブリュを見つけて孤独の代わりに恋心を授けたこと、ブリュレが語った物語り通りに話は進む。
ただ、ブリュレが詳細に話さなかった部分までマリナは話した。
青年の後をつけブリュの存在が露見した後の人間の行いは酷いものだった。
地下牢で足を繋がれ女神の力を証明する為に花を咲かせた後は、豪華な部屋に監禁され“愛しい者の為に”と休む間もなく力を使わされ豊穣を与え、天候を操り消費されていく。
感謝もなく、不要と言ってもいないのに食事もない奴隷以下の生活は人間ごときが神にして良い所業ではない。
更に仕打ちは続き、たまに青年がブリュの部屋に入ってくるようになるが、美しさを失っていくブリュと比例するように青年の顔から恋情も消えていく。
青年もブリュに会う度に鉱山を豊かにしろなどとしか言わなくなり最後にはお腹を大きくした王女を連れてきた。
「私は…ブリュを止めることが出来なくなりました。だって同じ立場だったら私も同じ事を…いや、それ以上の事をしてしまうと思います。」
「そうだね…私達の世界でも過去に酷い事をした記録はすごくあるよ。だからこそ、私はブリュを助けたいよ。こんな事をしててもブリュ自身は救われないから。」
「そうだね。やった本人達はもういないのに被害者が苦しみ続けるなんておかしいよ。」
「という事で!マリナ、今はブリュを救う事だけを考えよう。」
マリナはコクリと頷くと自分の両頬を思いっきり叩いた。
「ありがとうございます。少し、目が覚めました。」
少ししてブリュは片手に分厚い本を持って残念そうな顔をして戻ってきた。
「残念……。」
「おかえり!女神を辞めらる方法は無かったの?」
「女神は辞められるけれど…力を失うから人間達に何も出来なくなる。これじゃ意味が無い…。」
光とありさは頷き合いブリュに近づくと光は本を持つ右の手、ありさは左の手の薬指を掴む。
ブリュは驚きはしたものの嫌がる様子を見せなかったので二人はそのまま二人でブリュを抱きしめた。




