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「なんで気が付かなかったんだろ…女神なんて辞めちゃえばいいのにっ!
そしたら自分の手で皆殺しにする事もできるわ!!ありさ、貴女は天才なの?!」
「いやいやいややっぱり今の無しっ!ブリュが気づかなかったって事は女神様を辞めるなんて無理なんだよっ!!
大体神様を辞めるなんてこっちの世界でも聞いた事ないよ!」
「そうと決まったらちょっと規約調べてくるわっ!!」
ブリュはその場から忽然と姿を消した。
「神様って……規約があるの……?」
「ハッ!マリナッ!!」
光はマリナの入れられている檻に駆け寄る。
ずっと表情も無く先程から一度も言葉を発していなかったマリナだったが、光の顔が近くなり虚ろな瞳に光の姿が映ると少し表情が戻る。
「ヒラ…。」
「マリナ!無事?!大丈夫?!何もされてない?!」
「は、はい…私は……大丈夫です…。」
「全然そうは見えないよ!この檻何とかならないの!!」
光は檻からマリナを助けようと足で蹴ったり手足を使って広げられないか試すが全くビクともしない。
ありさそんな光を観察しながら少し考えると何処からか太めの針金と棒を取り出す。
棒が二本入るように針金を輪にして針金と一緒に出した棒も内側に入れると、ありさはそれをハンドルのようにくるくると回していく。
「この檻がなんの素材か分かんないけど、光ちゃんの力で少し曲がってたから…。」
針金が捻れて輪が小さくなってくると少し二本の棒の間がつまる。
「か……かたい…。」
慌てて光もありさを手伝い二人の力ではどうにもならなくなると隣の二本も同じ要領で作業する。
すると人が通れる程の隙間ができ、マリナは慎重にそこを通り抜けた。
「マリナ!良かった!!」
光は出てきたマリナを思いっきり抱きしめた。マリナも光を抱きしめ返し頬を緩めその暖かさを感じた。
「ありがとうございます。」
「本当に何もされなかったの?」
「そうですね…身体的には何も。ただ…伝道師なのだからとブリュの過去を体験しました。」
「「体験…?」」
「ブリュの視点で過去にあった全てをみました…。」
マリナの表情はとても暗く、光もありさも何かを聞く事が出来なかった。




