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「殿下にさわるなっ!」
マリナとフローラがブリュレに斬りかかるが暴風に飛ばされて近づく事ができない。
ブリュレはアーサーから手を離しスっと立ち上がる。
「ぷりぷりプリティ―ブリュレミラクル~!」
ブリュレが呪文を唱えるとアーサーの真下に幾何学模様が浮かび上がる。
ブリュレは何処からか出した短剣で躊躇なく自分の胸を刺すと、幾何学模様がブリュレの血を吸い赤黒く光り始めた。
「女神様…お目覚めの時間ですよ。」
幾何学模様はブリュレの血だけではなく身体も飲み込み強い光を放った。
その眩しさに四人が腕で目をかばう。
光が消えて四人が腕をどけるとブリュレの代わりに真っ黒な服を着た赤い髪の少女がアーサーの傍らに立っていた。
「…おやすみブリュレ。ご苦労さま。そして…久しぶり、アーサー…。」
少女がアーサーの額に口付けを落とすとアーサーは起き上がった。
「アーサー!」
「「殿下!」」
アーサーに反応はなくうつろな瞳のまま体勢も変えない。
少女はそんなのアーサーをじっと観察して小さくため息をついた。
「…まだもう少しかかりそうかな。」
少女は立ち上がりくるりと身体を光達の方へ向けた。
そしてニッコリ微笑むと膝を折る。
「初めまして。私はブリュ、この世界の女神。ブリュレと仲良くしてくれてありがとう。全部見てましたよ。」
「…女神様。」
「…あれが…ブリュレはどこにいったの?」
「ありさ、ブリュレは私の一部。だから私の中に戻りました。貴女はブリュレと一緒に良く働いてくれたから、寂しい思いをさせてごめんなさい。あ、そうだわ。ありさも光ももう元の世界に帰って良いのよ?今から帰しましょうか。」
ブリュがありさと光に手をかざすと二人の下に幾何学模様が現れる。
何を言う間もなくそれは実行され二人は光に包まれた。
「ヒラノ様!ありさ様!」
フローラが手を伸ばし光がその手を掴もうとしたが互いの手が触れ合う事は無く光とありさはその場から姿を消した。
「そんな…。」
「くっ。」
その場に座り込んだフローラとマリナには絶望の表情し無かった。
唯一の希望が無くなった今、アーサーを助ける術も無く自身の命すら無いと言っても過言ではない。
「さてと…。」
いよいよ自分達の番かとフローラとマリナは覚悟を決める。
「何だか死ぬ気満々みたいだけど、私は貴女達を殺さないよ?せっかく伝道師っていう称号があるんだもの。貴女達は全てをみていてもらわなくちゃ。」




