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「なるほど…つまり悪いのは光ちゃんか。」
「何でですか?!」
「あれほど人前で歌うのはやめた方が良いと言ったでしょ…。まっ、被害が出てないのも光ちゃんのおかげだけど。とりあえず……大っきいな。」
ありさは蔓の大きさに驚いた。
今までのものと比べても最大級でとても骨が折れそうだ。
「一人だと辛そうだから皆に協力して貰おうかな。」
ありさはまた何処からか青い石が一つついた皮のブレスレットを大量に出現させた。
「コレ付けると嫉妬花に触れても大丈夫になるから皆で蔓をズタズタにしてってね。」
兵たちは「おお~。」と感動しながらブレスレットを受け取っていく。
光とマリナとアーサーもブレスレットを受け取り身につけると、光とマリナは一歩下がって見守る。
「兵たちよ、身体強化をきょかする!」
アーサーが叫ぶと兵たちが一斉に訓練に取り込んでいたヨガのポーズをとる。
「うわっ。なんて異様な光景……。」
「気持ちは分かります。」
身体強化した兵たちは先程とは打って変わり蔓をザクザク切り裂いていく。
しかし本体から分離した蔓は地面でウネウネ動いておりまるで芋虫のようだ。
「気持ち悪い……。」
「光ちゃんこういうの苦手って言ってたもんね。ブリュレ、私を飛ばして!」
「はいは~い。ぷりぷりプリティーブリュレミラクル~!」
リンゴブリュレがクルクル回りながら呪文を唱えるとふわりとありさが浮遊した。
ありさはまた何処からか出現させた如雨露を持って空から蔓に水をかけていく。すると蔓は溶けるように煙を出しながら消えていった。
「すごい!どんどん消えてく!!」
巨大な蔓はどんどん消えていきありさも兵たちも奥に進んでいく。
それに光とマリナとアーサーが続くと派手な色合いの花が見えた。領主の屋敷で見たものより数倍大きく子供の身長程に育った嫉妬花にありさが如雨露からいつの間にか持ち替えた投網を投げて捕獲した。
「よしよしゲット~!じゃあ光ちゃん、今日はちょっと大物だから早々に失礼するね。」
ありさは高度を上げて嫉妬花を持ち上げるとそのまま飛び去った。その後には瓦礫と凸凹の大地が残りアーサーと兵たちが一応もう蔓が無いのか調べる。
「で、殿下っ!」
兵の一人がアーサーを呼び光とマリナもアーサーの後ろに続いた。
呼んだ兵が指を指す場所は崩れた壁の下の空間で、そこには真っ黒になった人型の何かのが横たわっている。
「ここは…。」
アーサーは光の視線を遮るとにっこり笑ってマリナに光と部屋へ戻るように伝える。
「疲れているでしょう。身を綺麗にして再度休んで下さい。」
有無を言わさぬその笑顔に光は従うしかなく現場を後にした。
光が完全に見えなくなるとアーサーは再び下に視線を向ける。ここは地下牢のあった場所。その地下牢に入れられていたのは聖女の怒りを受けた者、ベルギー元侯爵。コレはその成れの果てだった。




