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大急ぎで戻ってきた戦場で光は叫ぶ。


「愛情たっぷりの歌を歌って!!」


兵たちはポカーンと間抜けな顔を光に向けた。その後ろではすでに蔓がニョキニョキと迫っている。


「その蔓は愛情に弱いの!!誰でも良いから愛情たっぷりの歌を歌って!!!」


このような状況でそんな事を言われても誰も直ぐに実行する事が出来ない。アーサーすら戸惑い固まっている。


仕方なく光が歌い出す。


〈LaLa~。〉


「ゔ…。」


「コレは…。」


((((聖女様は音痴か…。)))))


乱れる音、感じる不快感に兵たちは瞳を閉じて苦悶の表情を浮かべる。


「あら、ひかりん。お歌は得意じゃないいのね~。」


「La…え?私、歌うの得意だよ?友達も家族も皆凄く褒めてくれるし。」


(((((え?コレを……?)))))


「な、なるほど。文化の違いという事ですね。」


アーサーが必死でフォローにまわるが、蔓にも効いている様子はないのでこの歌をいつまでも歌わせるにはいかない。チラリと兵に視線を送ると大体の者がブンブンと横に首を振る。

しかし、その中で一人、ピンと手を上げ立候補する者がいた。


「殿下!自分が歌わせていただいても。」


「ああ。かまわない。」


「ありがとうございます。では…。」


立候補した兵は光の前に立ち交代を願い出た。光は快く了承し兵に譲り一礼した兵は歌い始めた。


〈えいっさえいっさ、よいっさよいっさ、ドッコイショったらドッコイショ…。〉


光は何だか懐かしさに暖かい気持ちになった。それはまるで、よさこい節の様なリズム。気持ち良さそうに歌ってはいる兵に反して心持ち蔓が少し元気を無くしている。


「嘘だろ…アレで?」


「愛情たっぷりって……。」


ザワザワする周りなど関係なく響きわたる独特のリズムを少し皆が受け入れ波紋のように広がっていく。

皆が踊りながら歌い一部の者たちがその場にある者でリズムを刻む。戦場はいつしか祭り会場のようになっていた。


「何これ……。」


ようやく到着したありさはその異様さに頬をひきつらせる。

ありさが想像していた緊迫した戦場はそこに無く、ありさは苦笑いする光に説明を求めた。

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