5
自分のステータスを見た事で自分にもきちんと能力がある事を知った光は悩んでいた。自分の能力値が一般的にどうなのか分からないからだ。
日記にはこの世界の人達はステータス画面を知らないと書いてあったので相談はできない。
「どうしようかな……。あ、実は私ならステータス画面開けちゃったりしないかな。」
光は試しにフローラに向かってステータスオープンと呟いた。すると、まさかの開けてしまうという事態に心の中でフローラに謝りながらもステータス画面を確認する。
――――――――――――――――――――――――
フローラ (17)
スキル:暗視
暗闇の中でも通常通り物が見える。
熟練度80/100
体力 450
俊敏 400
防御 350
攻撃 780
状態 毒(小)
―――――――――――――――――――――――――
「えっ……コレがこの世界の普通なの…?」
光は思わず別の対象を探した。
近くにいるのはマリナだけだったので光はマリナのステータス画面を開いてみた。
――――――――――――――――――――――――
マリナ (15)
スキル:隠密
周囲の者に気付かれずに潜む事ができる。
熟練度 55/100
体力 300
俊敏 520
防御 420
攻撃 320
状態 毒(小)
―――――――――――――――――――――――――
「と、年下の二人に総合的に負けてる……。というかマリナのスキルって…。」
光は恐る恐るフローラに声をかけた。
「フローラ、二人ってメイドの訓練以外受けたりするの?」
「いいえ、ヒラノ様。私どもはメイドとしての仕事しか教授されません。」
「そ、そうなんだ…。」
メイド達の強さを知ったところで光は状態に毒が着いているのに注視した。いつも体調の悪さなんて微塵も感じさせず、今も全く分からないが二人共に毒がついている。
実際に見てしまうと何とか出来ないかと考えてしまう光だったが、今時点で何をすれば状態を良くする事が出来るのか分からない為とても歯がゆかった。
「ヒラノ様、ご要望の物がご用意できました。」
光はフローラが持ってきた物を受け取り広げてみた。
装飾の何も無い真っ白な膝丈のワンピースはシンプルで元いた世界のTシャツワンピースに近い。少し生地を引っ張ってみると残念ながら伸縮性はそんなに無さそうだが、この世界にはそんな概念がないのだから仕方がないだろうと光は納得する。
「ありがとうフローラ。早速着替えたいです。」
「かしこまりました。」
ドレスを脱ぎヨガウェアを身につけその上から先程用意してもらったワンピースを着ると懐かしい解放感があった。
「うん、これなら大丈夫そうかな。これからフローラとマリナには馴染みの無い事をするけど少し見守っていて欲しいです。部屋にも誰も入れないで。」
「「かしこまりました。」」
「もし、何か変わったことがあったら終わった後に教えて下さい。」
二人が頷いたのを確認すると光は床に座り座禅に似たスカーサナのポーズをとった。少しの間姿勢を保ち自身の感覚の確認をすると、呼吸を整えてゆっくりと腹式呼吸する。そのまま瞑想へと移ると、心が落ち着き光は異世界に居る事も忘れて自分の世界に入っていった。
瞑想を終えて眼を開けると、まだ慣れない景色が異世界にいる事を思い出させる。光が次のポーズに移ろうとすると、ふと光の後ろに並ぶフローラとマリナが気になった。
二人は声こそあげていなかったが酷く驚いた顔をしていたのだ。