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光とアーサーはキョロキョロと辺りを見渡すがそれらしきモノは見つけられない。
「で、殿下。あの…その不気味…いえ不思議なリンゴは……。」
「こちらは精霊様です。我々に協力していただいています。失礼のないようにして下さい。」
「せ、精霊様!!大変失礼致しました!!!」
領主は慌てて勢いよく頭を下げる。光とアーサーは領主が何を思ったか大体想像ができるが咎めるつもりもない。
「そんな事よりブリュレ様、嫉妬花はどこにあるのですか。」
「大きな絵の端に擬態してるわ。分からないの~?」
光とアーサーは飾られた絵画に注目した。それは領主一家が描かれたもので、寄り添う領主一家の周りに色とりどりの花々が描かれている。
ブリュレが端に擬態していると言っていたので光とアーサーは四隅をじっくり見てみると明らかに絵の具で描かれたものでない花が混ざっていた。
「「見つけた!」」
「ありさを直ぐに呼ぶから触らないでね~。」
ブリュレのその言葉は正しくフラグだった。
「アーサー様ってばぁ絵がお好きなんですね!私ぃこの絵を描いてもらった時に少しだけ筆を持たせて貰ったんですよ~。ちょうどこの辺りを少しだけ。」
レイミーはアーサーの腕を引っ張り絵に近づき、自身が少し筆を指したという部分に触れた。
「「「あ。」」」
レイミーが触れたのは絵の部分では無く嫉妬花の花弁で、触れた指先からレイミーの手は黒く侵食されていく。
「え?キャァァァ何これ!!!私の手が!!」
「「レイミー!!」」
「何これ~!」
領主とガルボに肩を抱かれながらレイミーは黒くなってしまった自身の右手を見つめている。
黒く染まった手を領主とガルボに近づけると二人は少し仰け反り更にレイミーの心を傷つけた。
「ブリュレ、アレはどういう状態なの?」
「嫉妬花に触れたから負の感情を食べすぎたのよ。あの手は強い毒に侵されているわ~。このままだと黒いままで動かなくなるわね。だから触らないでって言ったのに~。」
ブリュレの説明にレイミーは絶望し取り乱した。泣き叫びながら領主に綴ろうとするも、肩を抱いていた領主とガルボは毒と聞いた瞬間にレイミーから離れて距離を取っている。
「レイミー、落ち着きなさい。まずは大人しく椅子に座るんだ。」
「お、お父様…」
「大丈夫。とりあえず何にと触れずに。興奮すると毒が早くまわってしまうかもしれない。」
レイミーは領主の言葉に従い力なく近くの椅子に腰をかけた。
光とアーサーはレイミーも心配だが嫉妬花を見失ってはいけないので目をそらさない。
「ブリュレ、店長はまだ?」
「もうくるわ~。」




