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王都で光の教えが広まり人々の身体は健康を取り戻しつつあった。
光とアーサーは王都周辺の土地をまわり順調に毒を消していき、たくさんの人々に感謝され俄然やる気を出している光だったが、一つ頭を悩ませる事ができた。
「えらい人ってなんでこう面倒なんだろ…。」
「すいません。私もヒカリに近づけたくはないのですが…。」
各地をまわり始めて光はその土地の領主から感謝のおもてなしを受ける機会が増えた。
一応断るのだが直ぐに引き下がってはくれず、あまり断るのも失礼なので仕方なく受ける事になるのだが、感謝の心より下心が丸見えで何とも言い難い。
今現在もある領主宅に招かれて馬車で向かっている最中だったりするが、光の頭の中はどう逃げるかでいっぱいだ。
もちろんアーサーも他人事では無いのだが、そこは王子としての教養と年季が違うのでサラりとかわしている。
「ひかりんが頑張って~。嫉妬花の捜索範囲が少し狭くなってきたからありさも感謝してるわよ~。」
「うぐっ……店長が助かってるならだけど、こういうのは助けになってないもん。頑張れない。」
「あら、そんな事ないわよ~。言ったでしょ?負の感情を食べるって事は下心満載の人間の近くにいる事が多いのよ~。」
「それ、フラグですか。」
「フラグ?ただの事実ね~。ただ、見つけてもひかりん達は掴んじゃダメよ?ありさじゃないとあてられちゃうから~。」
そんな話をしてる間に光とアーサーは領主の屋敷に到着した。
アーサーが馬車から真っ先におり光をエスコートしていると早速領主が近づいてくる。
「アーサー殿下!聖女様!わざわざお越しいただきありがとうございます。」
「本日はお招き感謝します。」
「いえいえ、領主たる者が領民を癒して下さったお二人を無視するなど出来ません。さあ、どうぞ我が家へお入りください。」
屋敷の中に入ると領主の家族が待機していた。
煌びやかなドレスに身を包んだ女性二人と身なりの良い男性が一人、三人共何となく圧が強めで光とアーサーは一瞬強ばった。
「紹介しましょう。私の妻と娘のレイミー、息子のガルボです。」
「はじめましてぇレイミーでぇす。アーサー様とぉお会いできてぇレイミー感激ですぅ。」
「お美しい聖女様、私の事は気軽にガルボとお呼びください。貴方のような女神の為に私は生まれてきたのでしょう。二人で語らえるのを楽しみにしております。」
光とアーサーの心の中は一つだ。
((ああ…帰りたい。))
案の定、光もアーサーも領主の息子と娘がベッタリだった。
屋敷の庭を案内してくれると言うのでついて行けばレイミーはアーサーの腕に絡みつきゼロ距離で胸を押し付ける。
ガルボも光の許可なく肩や腰など身体に触れようとするので、光は花に興味がある振りをして必死で避けている。
「領主殿、庭は充分楽しませてもらいました。」
「さようですか、でしたら部屋に戻りお茶にしましょう。」
庭を後にしようとした時、光の肩にのっていたリンゴブリュレは嫉妬花の気配を感じた気がして視線を這わせた。
しかし見つける事はできず黙ってそのまま光の肩にのっていた。




