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静養地に一週間程滞在した光達は城に戻りまた忙しい日々を過ごしている。
というのも光が戻ってくるまでにアーサーがベルギー侯爵事件の後始末を終わらせ、先延ばしになっていたお披露目が城に帰ってきたその日に行われ光は何とかギリギリ失敗せずにやら過ごした。
ベルギー侯爵は爵位を剥奪され地下牢に入れられ貴族たちには事件の概要が説明されたので概ね貴族たちは表立って光になにかすることは無い。
市民たちには馬車の中から手を振るくらいだったが大変なお祭り騒ぎだった。
そして今は前に考案した訓練メニュー用ヨガをアーサーとつめている最中だ。
静養地でありさからたくさんのやる気をもらった光は事件前よりもやる気に満ちている。「店長も頑張ってるんだから私だって!」とフローラとマリナが若干心配するくらいには働きすぎている状態なので、二人はどう休ませるか頭を悩ませていた。
なお、ブリュレにもらったリンゴは月の光に当ててはいるが、今のところ変化はない。
「フローラからは訓練の途中でやる方が良いって言われてるんだけど…」
「確かに、効果が出る前と後の訓練が出来るのは有意義ですね。後は部隊によってメニューを変えてもらえると嬉しいとこです。」
「なるほど…ちょっと考えてみるよ。」
訓練メニューへのヨガの導入が終わると光は本格的に各地をまわる事になっている。光が浄化していかなければ逃げ出した嫉妬花の捕獲も進まないし毒も減らない。
光はアーサーとの打ち合わせが終わってから寝支度が終わっても夜遅くまでメニューとにらめっこしていたが、フローラに強制終了させられすごすごとベッドに入る。
「……寝れない…」
大人しくベッドに入ったが目が冴えてまったく眠れず、光は諦めてバルコニーに出た。
バルコニーの中央にはテーブルに置かれたリンゴが月明かりを浴びている。光は椅子に座りそのリンゴを眺め変化が無い事を残念に思っていた。
「本当に何なんだろ…このリンゴ。」
ありさが態々届けてくれたものなのだから何か有るのだろうが、光のブリュレに対する信用はあまりない。
「いっその事、食べてみちゃう?」
光はリンゴに手を伸ばし手に持って顔を寄せた。
甘い匂いが食べ頃だと主張しており大きく口を開けたが、流石に洗いもせず食べるのは宜しくないかと光は口を閉じて食べるのをやめてベッドへと戻って行った。




