42
結局、アーサーはブリュレ本人には会う事は出来なかった。
しかし、滝つぼでお茶をしながら待ってるとブリュレから伝言を預かったありさが現れたので、アーサーとしてはまったく収穫が無かった訳でもなく、ブリュレの代わりにありさが滝つぼに現れたのだ。
アーサーはありさに最敬礼をとり声をかけた。
「お初にお目にかかります、ブリュレ様。私はアーサー・E・イペリットと申します。御足労いただきました事心から感謝致します。」
「いや、私ブリュレじゃないからっ!」
「ぶぐっ。」
強めの口調で否定したありさはアーサーに絶対零度の視線を送っている。光はこの起こるべくして起こった事故に必死で笑いをこらえ肩を震わせていた。
「私はありさ!光ちゃんと同じ世界からきてブリュレの元で手伝いをしてます。ブリュレのお使いで来たのに間違われるなんて心外すぎる!!」
お怒りモードのありさにアーサーは顔を青くして自身の失態に慌てていた。
よく見ないでも光から聞いた特徴とはまったく違うありさを何故間違えてしまったのかとアーサーは後悔していたが出た言葉は取り消せない。
「戻ろうかな…」
「ありさ様申し訳ございません!緊張のあまりお顔を確認せずご挨拶してしまいました。」
必死に謝罪するアーサーに仕方ないと謝罪を受けいれたありさは堪えきれず爆笑する光の顔に林檎を投げつけた。
見事に顔面で受け止めてみせた光にありさは満足気にニヤリとして「天罰っ!」とガッツポーズをする。
「店長酷いじゃないですか~!」
「おだまりっ!爆笑してた光ちゃんが悪いでしょ。ブリュレがそのリンゴに一週間月の光を当ててってさ。
私もあまりここに居られないから戻るね。光ちゃんまたね~。」
「あっ!」
ありさは言いたいことだけ言って戻って行った。光は足元に落ちたリンゴを拾うとじっと見つめる。
「普通のリンゴ…だよね?」
とりあえず滝つぼで出来ることも無いので光達は屋敷に戻った。
アーサーはタイムアップのようで屋敷に戻ると直ぐに馬に乗る。
「また来ますので、今は失礼します。」
「アーサー、無理しないでね。」
王子様スマイルを浮かべて走り去ったアーサーを真っ赤な顔で見送った光をマリナが不躾にニヤニヤと眺める。
「なぁんかラブの匂いがしませんか?」
「マリナ…」
「う…すいません。」




