40
話し合わなくてはいけない事ができたので散策を中断して屋敷に戻った光達は、監視でもされていたのではないかと疑ってしまう程のタイミングで馬に乗って現れたアーサーに驚きを隠せなかった。
「ヒカリの事が心配で…あ、許可はきちんともらって来てますから安心してください。」
「殿下…先触れも無かったようですが。」
「……途中で追い越してしまったようですね。」
サラりと笑顔で答えるアーサーにフローラの眉がピクリとしたが説教タイムに入る前にアーサーが光の背中を押して足早に屋敷の中に入っていく。
「ヒカリ、ゆっくりお茶でもしましょう。」
「う、うん。私も話したい事があったから丁度いいかな。」
せっかく良い天気なのでテラスでお茶にする事にし、美しい庭園を眺めながら光は森の中での出来事をアーサーに話した。
ブリュレと採捕者の事はアーサーも初耳のようで、500年間隔で起こる災害の原因がまさかの植物の植え替えだったという事実に開いた口が塞がらない様子だった。
「これは…王にも報告しなくてはなりませんね……。ヒカリ、そのブリュレ殿とありさ様に私が会うことは可能でしょうか。」
「それは分からないけど…聞いてみる事ならできるよ。」
「でしたら私は今の話を報告する為に戻りますが、明日また来ますので一緒に滝つぼに行きましょう。そこで会う事が可能であればお願いします。」
「わかった。」
話が済むとアーサーは用意された紅茶を一気に飲み干し足早に去っていった。静養地なのに全く静養できる気がしないなと光は少し残念な気持ちになったが、またありさに会いに行ける事に関しては嬉しく思っていた。
「ん~せっかくだし庭園の中でヨガしようかな。」
「では人払い致します。」
「ありがとう!」
光は二時間程心行くまでヨガをし羽を伸ばした。太陽礼拝もしたので例の如く庭園がキラキラに包まれ浄化され、汗をかいた光はスッキリした気持ちで振り返るとフローラとマリナの周りには野菜やパンがたくさん置かれまるで供物のようだ。
「フローラ、それどうしたの?」
「こちらは滞在中の食料でございます。せっかくですので機会は有効活用したいと思いまして。」
一瞬なんの事かさっぱり分からなかった光だったが、よく見ると野菜達はキラキラとしている。
それで何をしていたのか察した光は少し複雑な気持ちになりながらも一石二鳥だと自分に言い聞かせた。




