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「ん~気持ちいいなぁ…」
ここ最近落ち込んでいた光は郊外にある王族の静養地の一つに来ている。
もちろんフローラとマリナも一緒だ。
提案したのはアーサーでは無く意外にも王で、王としては迷惑料みたいなものなのだろう。
「郊外にあり緑溢れる場所で住む場所は少し小さいが不自由はないはずだ。」
そう言われてきた光の感想は「デカッ!」の一言だった。
執事と数人のメイドが常駐し、チリひとつない屋敷の中は豪華絢爛で城とはまた違った赴きがある。
「フローラ、森の中散策しに行きたいな!」
「分かりました。お供致します。」
光はフローラとマリナを引き連れて早速森に入って行く。
森の中は小鳥の鳴き声が聞こえ、木の上にはリスも見え隠れしており光好みの環境だった。
「やっぱり森の中っていいね~!空気が美味しい!!私、お城よりここに住みたいよ。」
「ヒラノ様は自然がお好きなのですね。」
「もちろん!私のいた世界はね、森を開拓しすぎてこういう場所を守ろうって活動がされる程だったんだよ。」
「そのような事が言われる程の発展された世界…一度みてみたいですね。」
「ヒラノ様、確かここには大きな滝つぼもありますよ!」
「滝つぼ!どこどこ!!」
マリナに先導されて森の中を進んでいくと、少しして水音が聞こえ始めた。
光が軽い足取りで期待しながら進んでいくと水音は大きくなっていく。
「着きましたよ~。ここです!」
「わぁ~!マイナスイオン!!」
滝つぼに着くと光は両腕をいっぱいに広げて大きく息を吸った。
まるで身体の中に元気の源が入ってくるかのような感覚に自然に頬が緩む。
「少し休憩致しましょう。」
光がとても気に入っている様子だったのでフローラはそう提案すると水がかからない場所を選びシートを広げた。
「椅子はご用意できませんのでこちらにおすわり下さい。」
「流石フローラ、準備が良すぎる。」
「恐れ入ります。」
普通の令嬢ならシートが広げられれば大人しくその上に座りお茶やお菓子をいただきながら景色を眺めるところだが、光はそんなお上品な事はできない。
「フローラ、せっかくシートを敷いてくれたならここでヨガがしたいな!!」
「ここででございますか?」
「うん!ここで!!この最高の場所で!!」
光のキラキラした瞳にフローラは困惑しながらも了承するしか無かった。




