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フローラは光が落ち着いた頃を見計らってマリナにアーサーを呼びに行かせた。その間に泣いて腫れた目を化粧で誤魔化し髪も整える。


「頬の腫れもお隠ししたいところですが…殿下に確認していただく必要がございます。」


「うん……ありがとう。大丈夫だから。」


光の準備が整って少しするとマリナがアーサーを連れて戻ってきた。アーサーは慌てて光に駆け寄り痛々しく腫れる頬にそっと触れた。


「こんな…私の配慮が足りませんでした。申し訳ありません。」


「アーサーのせいじゃないから…」


「しかし…」


「それに…私よりもあっちの方が重症だよ。」


光の言葉の意味が分からず三人が疑問の表情を浮かべると、光はベルギー侯爵との間にあった事を説明する。

理不尽な態度、頬を打たれたが反撃した事を包み隠さず説明すると、意外に強い光に三人はびっくりした。


「今後は護身術も積極的に身につけしょう。」


「またこんなおバカさんがいたら遠慮なく投げ飛ばしちゃいましょ!」


「マリナ…」


「聖女は王と並ぶ地位にいます。このような仕打ちは許されない…王に報告し適切な罰を与えます。」


「アーサー…まだ言わなきゃいけない事があるの。侯爵に「貴方の毒なんか絶対に取り除かない」って言った瞬間に黒いモヤが出て侯爵の首に模様が出たの…」


「模様…ですか?」


光はコクリと頷いた。

フローラは光がとても言いずらそうにしているのを察し、その手を強く握る。その手の温もりに勇気をもらい光は言葉を続けた。


「状態を確認したら【聖女の怒り】と出ていたわ…毒の効果が一段階上がり解毒出来なくなる……って…」


光の言葉に三人は息を飲んだ。

聖女にそのような事が出来るなど聞いていない。もちろん光自身も知る由もなく、そのような力を使ってしまった事に酷くショックを受けている。

アーサーは瞼を閉じて深呼吸をし自分を落ち着けると光の頭を優しく撫でた。


「ヒカリ、大丈夫です。貴女は他人を思いやれる優しい心を持っています。これは単なる事故です。ベルギー侯爵の自滅であって貴女に非はありません。

私はこれから侯爵ところに行ってきますので、光はゆっくりと休んでいて下さい。」


アーサーはフローラとマリナに光を頼むと部屋から出た。

部屋から出たアーサーは光を撫でた手を力いっぱい握り込み光を守れなかった自身への怒りを壁にぶつけた。

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