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「ッ…」


口の中に広がる鉄の味と痛みに光はベルギー侯爵をキッと睨みつける。

それが気に入らないベルギー侯爵は再び手を振り上げ光の反対側の頬を打とうとしたが、光はそれを腕で防いだ。


「このっ!生意気な!!」


更に怒りを募らせたベルギー侯爵は今度は右足をあげて光を踏みつけようとしたが光はその足を取りそのまま上げてベルギー侯爵を倒した。

ベルギー侯爵が床に倒れ込み腰を摩っている間に光は立ち上がり手の甲で口から垂れる血を拭うとベルギー侯爵を睨みつけた。


「私は…貴方にこんな仕打ちをされる言われは無い!態度悪いわ殴るわ何なの?私が気に入らないなら関わらなきゃいい。勝手に毒に侵されていればいい。

私は…貴方みたいな人の為に動く程お人好しじゃない!貴方の毒なんか絶対に取り除かないわ!!」


光が怒声をあげた瞬間、光の身体から黒いモヤがでてベルギー侯爵を包み込んだ。ベルギー侯爵はそのモヤを手で払おうとするがモヤはベルギー侯爵を包み口から中に入っていく。

モヤが晴れるとベルギー侯爵の首には模様が浮かび上がっていた。ドクロと鎌を象ったそれはに光は目を剥き急いでベルギー侯爵のステータスをみた。


「…聖女の怒り…」


ポツリと呟いた言葉はベルギー侯爵の耳には届かなかった。模様の事を知らないベルギー侯爵はモヤに驚き慌てて部屋を出て行った。

光はベルギー侯爵を追うこともせず、ただ自身の起こしたであろう事象に驚き立ち尽くしていた。





動揺が落ち着いてきた頃、光はとりあえず自身の部屋にもどる為にとぼとぼ歩き出した。

何故大丈夫だと高を括ってフローラとマリナを置いてきたのかと後悔でいっぱいになり泣きたくなったが、ここで泣く訳にはいかず必死で我慢した。


部屋に着きドアを開けるとフローラとマリナが笑顔で迎えてくれて堪えきれなくなった光はフローラに抱きついて声を上げて泣いた。


「ヒラノ様?!どうされたのですか!!マリナ!冷たいタオルをお持ちして!!」


「は、はいぃぃぃ!!」


頬を腫らし泣きつく光をフローラは優しく包み込み頭を撫でる。マリナが冷たいタオルを用意して持ってくるとフローラは光をベッドに寝かせて目と頬を冷やした。


「本日はベルギー侯爵の御要望で赴かれたのでしたね。この仕打ちは侯爵がなさった事でしょうか。」


フローラは怒りで震えそうになる声で光に問いかけると光はコクリと頷いた。

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