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やっと城の全員に深呼吸を教え終わった頃、アーサーは光に今後の予定について話をする為に光の部屋を訪れた。
ノックをするとマリナが顔を出し慌てた様子でドアを閉める。
「で、殿下、申し訳ございません。ヒラノ様は只今取り込み中でして…」
「そうですか…いきなり来た私が悪いですね。出直します。」
マリナがペコりと頭を下げるとアーサーは光の部屋を後にし、そのまま執務に取り組む気になれなかったアーサーは少し庭を散歩する事にした。
庭に出ると色とりどりの花々が咲き誇り、甘い香りと共にアーサーを癒してくれる。
以前は心から美しいと思っていたが、毒に侵されてからはどうしても心から美しいと思うことが出来ない。
それでもアーサーにとって少ない癒しである事には変わりがなく時々足を運んでは少しの間息抜きをしていた。
(そう言えば…この真上がヒカリの部屋でしたね…。)
アーサーはふと光の部屋の方を見上げる。
白いバルコニーに人の姿は見えなかったが、ガラス扉の奥に薄らとヒトカゲが浮かぶ。
(あれは…ヒカリでしょうか…)
アーサーが目を細め判別しようとしていると、人影はバルコニーに近づきガラス扉を開けようとしていた。
扉が少し開き顔が見えたのでアーサー
は人影が光であると確信し声をかけようと右手をあげた。
「ヒカ…リ……」
アーサーは思わず両手で口を押え咄嗟に隠れた。
バルコニーに出てきた光はヨガ用のタンクトップにレギンス姿で、こちらの世界では下着姿と認識できるものだった。
アーサーは顔を真っ赤にしながら頭に浮かぶ光の姿を頭を振り忘れようとするが中々上手くいかない。
「ん~。今日もいい天気だね。」
上からは光の呑気な声が聞こえるが、アーサーはバルコニーの真下でバレない事を祈る。
「そうだ!フローラ!!ここでヨガしよう!」
「ヒラノ様、ここでは少し見晴らしが良すぎるのでは無いでしょうか。」
「え~大丈夫大丈夫!それにヨガは元々自然の中でやるものなんだよ。」
光の会話から自分が完全に撤退するタイミングを失った事を悟ったアーサーは息を潜めながらどうするか頭を悩ませた。
もしここで動いて見つかれば下着姿の光を見てしまった事になり非常に不味い。だがここに留まるにも限度があり、更に誰か別の者に見つかれば更に事態は最悪になる。
(どうすれば…)
アーサーは良い方法が浮かばずグルグルと考え込んだ。




