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午前中は訓練所で光の力を試していたアーサーだったが、午後になって書類が山になった執務室の机で少しずつその高さを減らしていた。


毒の蔓延により元々多かった書類は更に量が増えすでに致死量に達しているのてはないかという程の量だ。

今日は朝方までかかるかもしれないとため息をつきながら書類をみているとドアがノックされたので入室を促す。


「失礼致します。お忙しいところ恐れ入ります。ヒラノ様について急ぎ御報告させていだたきたく。」


「何があった。」


「はい。先程、ヒラノ様より深呼吸なるものを伝授頂きましたところ身体が軽くなり不調が消え、以前のような感覚が戻りました。共に教わったマリナにも同様の効果が現れております。

更に、ヒラノ様には毒に侵されているか判別するお力があるご様子で、私共から毒が抜けたとも仰っておいででした。」


フローラの報告にアーサーは思わず立ち上がっていた。

まさかこんなにも早く待ち望んでいた言葉が聞けるとは思わず、様々な思いが溢れ出しそうになる。


「ヒカリは自室だな!直ぐに向かう。」


アーサーは書類を適当に机に置いてフローラを伴い執務室を出た。

抑えきれない感情が歩を進める足を早くし今にも走り出しそうだった。





フローラがアーサーに報告へ行った頃、光は深呼吸と毒について考えていた。


呼吸法はヨガでも重要なものであり深呼吸自体も体に様々な良い事があるとは聞いていたが、まさかこの世界では毒消し効果があるとは思わなかった。

呼吸法は幾つかあるので色々試す必要がありそうだと光が鞄からノートを取り出したところで部屋のドアがノックされた。


「は「ヒカリ!今すぐ秘伝のしんこきゅうを教えて欲しい。」い……秘伝?」


返事を言い切る前に勢いよく入室したアーサーにフローラは顔を顰めたが、アーサーに注目していた光とマリナはそれに気づかなかった。


「ア、アーサー……深呼吸は秘伝なんかじゃないよ……?」


「しかし毒が消える程のものという事は聖女の力の一部なのでしょう。聖女の力は聖女が極めているものを媒介し発動するもの。極める程のものなど秘伝以外ありえません。」


「え、待ってその情報今くれるの?それ早く言ってよ~。」


「すいません…頭から抜けていました。」


光はアーサーが思い詰めていた事を知っているのであまり責めることの出来ない。仕方なくこの話を終わらせ秘伝の誤解を解くことにし、深呼吸は元の世界では大人であれば知らない者はほぼいない事であると説明する。


「ヒカリの国では毒は自分で治すという事ですか……素晴らしいですね。」


説明すればする程増える誤解にもう放って置いた方が良いのか真剣に悩んだ光だったが、何とか誤解を解かねばまた聖女が呼ばれた時に間違った知識を広めた者にされると思い直し必死に説明をした。

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