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国家破綻と規制緩和と菅総理の退陣について

 新型コロナウィルス(以下、コロナ19)のワクチン接種が始まった頃、通常とは違う観点で、僕はそのニュースに注目をしていました。

 もしかしたら、記憶に残っている人もいるかもしれませんが、「ワクチンの打ち手不足」が懸念されていて、「医師以外の人間にワクチンを打ってもらおう」という話が出ていたのですが、それがどうなったのか気になっていたからです。

 結論から言うと、一部の例外を除いて、やはり医師以外がワクチンを打つのは認められなかったようです。その所為で医師が不足し、少ない医師を奪い合った結果、医師に支払う費用が随分と膨らんでしまいました。

 医療団体にとって、注射を打つ事ができる資格(権利)は、いわゆる“既得権益”というやつです。

 ――つまり、これは、コロナ19禍という危機的状況に臨むに当り、医療に関わる団体が既得権益を捨てる覚悟があるかどうかを問うという意味でとても価値がある出来事だったと言えるのです。

 ……そして、それは残念な結果に終わってしまったようですが。

 一応断っておくと、この話は一般的なお医者さんには当て嵌まりません。個人の医師に関して言えば、コロナ19禍に対して「オンライン診療を普及させるべきだ」というむしろ医療団体の既得権益にとって不都合な方法を主張をした人もいました。既得権益に拘っているのは、恐らくは厚生労働省を中心とする官僚や政治家や医療関連の利権団体ではないかと思われます。

 ま、要するに、問題があるのはトップ層の人間達ってことですね。

 もしかしたら、これを読んで「人の命が関わっているのに、それでも利権に拘るのか?」なんて思った人もいるかもしれませんが、こういった利権団体が人の命よりも利権を大事にするというのは随分と昔からある話です。

 厚生労働省はかつて、エイズを感染させてしまうかもしれないと分かっている血液製剤を、天下り先の企業の利益に配慮して、そのまま市場に流通させてしまった“薬害エイズ問題”を起こしています。この件での死者は実に400人以上にもなります。また、薬害C型肝炎の患者データを隠していたなんて事もありました。C型肝炎は、早くから治療をすれば治る病気ですが、放置すれば下手すれば死ぬ場合すらもあります。つまり、これも殺人にも等しい行為です。

 こういった事例を考えると、厚生労働省がコロナ19対策を主導している現実に不安を覚えてしまいませんか?

 どうしてそれまで拡充しなかったPCR検査が、オリンピックになった途端に増やせたのか未だに僕には分かりません。

 

 官僚を中心とする人々が“既得権益”に固執している事がよく分かる事例なので、“ワクチン接種”の話題を出しましたが、もちろん、既得権益はこれだけではありません。日本社会全体が既得権益に縛られていると言っても過言ではない状況なのです。

 “原子力村”などという言葉が一時流行りましたが、既得権益で最も有名なのは、原子力発電ではないかと思われます。

 福島原発事故が起こった直後、大手メディアは「原子力発電が安価」という試算は、実は作られた「嘘の数字」である旨をニュース番組などで流していました。

 国は発表する原子力発電のコストには、実は様々な費用が計上されていません。

 例えば、原子力発電はコントロールが難しく、電力需要が低い夜間でも発電をし続けてしまうのですが、そこで発生した余分な電力を使う為、「揚水発電」が製造されました。

 これは、水をポンプで吸い上げ、電力が不足したなら水力発電として用いるいわば“大掛かりな蓄電装置”なのですが、何故か原子力発電のコストには入っていません。

 また、核廃棄物の処理の試算や見通しも非常に甘く、このままいけば半永久的に地上で管理する必要がありそうですが、そのコストも正確に反映されているとは言い難いです。

 つまり、将来世代の日本人は、何ら対価を得られない核廃棄物の管理を強制的にさせられてしまうのです。当然ながら、未来の日本にとって重い負担になります。日本社会について真剣に考えている人なら、まず間違いなく反対するでしょう。

 こういった事実が、テレビのニュース番組で流れていたのは、ほぼ間違いなく“原子力村”の権力が福島原発事故によって弱っていたからではないかと思われます。

 この時期、このまま日本の原子力産業は消滅していくと信じていた人も多くいたのではないでしょうか?

 ところがです。

 それからしばらくが過ぎると、そんな報道は忘れてしまったかのように、「原子力発電のコストは安い」と再びテレビ番組で言われるようになってしまったのです。

 素直にこれを解釈するのなら、“原子力村”の権力が復活したと判断できます。

 もっとも、実は福島原発事故の直後でも、フランスが水不足から原発停止の危機に陥っていた事や、高速増殖原型炉「もんじゅ」の事故など、原子力政策にとって不都合なニュースは大きくは取り上げられていなかったので、原子力村の権力は元々そこまで弱っていた訳ではなかったのかもしれないのですが。

 原子力発電関連は怪しい話がまだまだあります。例えば、原子力発電所の近くの土地を中国人が購入しているそうです。日本の原発はテロ対策が非常に脆弱なので、もしそこから爆弾を搭載したドローンで狙われでもしたら容易に爆破できてしまえます。

 「爆破されたら下手すれば日本が半壊しかねない原子力発電所の近くの土地を外国の人間が買っている」

 軍事力や国防を重視している人達なら、絶対にこんな状態のままでは原発推進に反対をするはずだと思うのですが、そんな声は上がりません。むしろ賛成し、応援すらしている人の方が多そうです。

 絶対に変ですよね?

 原子力利権の中心は経産省だと言われていますが、何かしら圧力をかけているようにしか思えません。

 福島原発事故は、“国難”と表現しても過言ではない程の大事件です。この原子力村の大失態は、日本社会全体にどんでもない規模の損失をもたらしました。そんな経緯を経てもなおこのような権力を維持できているというのは“異常”と言うよりありません。

 それから時は流れて2021年。経産省は一度だけ、後に「誤りだった」とその内容を覆してしまうのですが、将来的には原子力発電よりも太陽光発電の方がコストは安くなると発表しました。

 もちろんこれは嘘です。

 原子力発電では本来は計上しなくてはいけないコストを計上せず、太陽光発電では本来計上しなくて良いコストを計上していますから、現在でも原子力発電の方がコストは太陽光発電よりも高いはずです。

 ただそれでも、一時的で、しかも“将来”という言葉があったにせよ、正直にそれを認めた点は評価できるという考えもあるかもしれません。

 世界の潮流はどう考えても再生可能エネルギーの普及にシフトしていますし、再生可能エネルギーを主電力とする事を可能にする蓄電池と言われる“バイポーラ型電池”の実用化に日本の古河電気工業と古河電池が成功しており、既に量産体制に入っていると発表しているので、その影響もあるのかもしれませんし(いえ、そう“思いたい”のですが)。

 が、経産省がそう発表した主な理由は、恐らく再生可能エネルギーの利権団体が日本で成長して来ているからではないかと思われます。

 つまり、原発や火力といった利権団体と再生可能エネルギー関連の利権団体で権力争いをしているのではないかと思われるのですね。

 原子力発電は日本単独では製造も運営もできません。日本はその技術を持ってはいないのです。そして、稼働する為のウラン燃料も海外頼みです。ですから、“自国産のエネルギー”とは言い難いのです。

 それに対して、再生可能エネルギーの多くは“自国産のエネルギー”です。

 エネルギー自給率を高める事は、様々な意味でとても重要です。ですから、本来なら利権など関係なしに、全力で再生可能エネルギーの普及に注力するべきだと思うのですが、どうやら日本はその域には達していなようです。

 

 実は、このような利権団体の利益優先の体質…… “既得権益の確保”は、この数十年の間、日本が衰退し続けている大きな原因の一つだと言われています。

 経済成長とは、“破壊ある創造”です。

 しかし、日本は“破壊”を全力で阻止しようとしてしまうのですね(いかにも日本らしい欠点ですが)。だから、経済成長が停滞してしまうのです。

 例えば、ライドシェアリングが普及すれば、タクシー業界はダメージを受け、規模の縮小は避けられません。だから日本は、世界中の国々で既に普及しているライドシェアリングを実質的に禁止にしているのです(もっとも、現在は、コロナ19の影響で、ライドシェアリングを普及できるような状態ではありませんが)。

 もし仮にライドシェアリングが普及したなら、各家庭で効率的に使われていない“車”という埋もれた資源を有効活用できます。当然ながら、それはGDPの拡大を意味します。タクシー業界に失業者が出てしまいますが、“失業者”とは、すなわち“余った労働力”です。新たな産業で働いてもらえれば、それによって経済は更に成長するのです。

 もちろん、日本はこれを阻止してしまっているので、ライドシェアリングの普及による経済成長は起こりません。これは他のあらゆる産業にも言える事です。

 

 ――そして、経済の停滞は、そのまま“財政赤字の拡大”にも結び付きます。

 

 ここで少し財政赤字の話をしましょう。

 財政赤字が増え続ける原因は、実にシンプルです。国が借金によって調達した資源を、経済成長の為に充分に使っていないのです。

 もし、経済成長の為に充分に使っていたなら、それによって税収が増え、財政赤字は増えたりしませんから、これは自明です。

 つまり、“財政赤字の拡大”の本質は、“資源の無駄遣い”である訳です。日本は既得権益を護りつつ資源を遣い続けたので、結果として膨大な“無駄遣い”を行ってしまったと表現できるでしょう。

 当然ながら、これを放置すれば、やがてはとんでもない事態になります。通貨の価値が暴落し、問題のあるレベルの悪質な物価上昇が起こるか、借金を返す為に大増税を行うか。社会は大混乱に陥るでしょう。

 

 近年に入り、MMT派という経済の学派が、「財政赤字は気にしなくて良い」といった主旨の事を主張して世間を少しばかり賑わせました。

 財政赤字で問題になるのは、“物価上昇”であり、それにさえ気を付けていれば、どれだけ財政赤字が増えても気にしなくて良いというのですね。

 (時折、この主張をどう曲解したのか、「MMT派は財政赤字を増やしても物価上昇は起こらないと考えている」などと言っている人がいますが、勘違いです。MMT派は物価上昇が起こる事は認めています)

 ですが、財政赤字問題の本質は有限である“資源の無駄遣い”であって、物価上昇はむしろ副次的な結果ではないかと思われます。資源を無駄遣いし続ければ、国力が下がり、通貨の価値が下がってしまうのですね。

 MMT派は通貨の流通量は、通貨主権を持っている国にはコントロール可能なので、もし仮に物価上昇が起こりそうになったなら、増税によってそれを防げば良いと主張しています。

 もしそんなに迅速に増税が可能であるのならば或いはその通りかもしれません。ですが、増税はそれほど簡単に行えるものではありません(ただし、工夫をして限定的に行うのなら有効かもしれませんが)。強引に行えば、絶対に社会は混乱します。

 そして、国の財政赤字が問題になるのは、物価上昇だけでもありません。“金利”もとても重要な意味を持ちます。何故なら、国が借金をする為に発行している国債、そして、その国債を日本銀行が購入する事によって増える日銀当座預金、この二つともが金利の影響を大きく受けるからです。

 国債は非常に低金利ですから、金利が上昇してしまったなら、国債を膨大に抱える金融機関は預金者などに支払う利子の方が高くなる、いわゆる“逆ざや”となり、大損してしまいます。

 また、日銀当座預金の場合は、金利が上がれば日銀が金融機関に支払わなくてはならない利子が膨大になり、国の財政がピンチに陥ってしまいます。

 時折、「日銀が国債を買い取れば、国の借金は消える」という主張をする人がいますが、これは誤りです。

 日銀が国債を購入しても、借金の形が国債から日銀当座預金に変わるだけで、借金が減っている訳ではないのです。

 だからもし金利が上昇すれば、大増税か通貨の増刷という実質的に“国家破綻”と表現しても過言ではない事態に陥ります。

 一応断っておきます。人によってはこれを“国家破綻”とは呼びませんから、そういう人達に配慮するのなら、この表現は使うべきではないとは思うのですが、他に適当な呼称は恐らくはないので、ここでは“国家破綻”と表現します(タイトルに関しても同様です)。

 

 さて。

 僕はMMTについて以下の三冊で、勉強をしました。

 『MMT現代貨幣理論入門 著者:L・ランダル・レイ 東洋経済』

 『MMT 現代貨幣理論とは何か 著者:井上智洋 講談社選書メチエ』

 『財政赤字の神話 著者:ステファニー・ケルトン 早川書房』

 僕の理解が不充分である点があったのなら、申し訳ないのですが、その結果、MMT派の主張には欠点があると判断しました。

 通貨主権を持っている国には、自国通貨はコントロール可能という主張はその通りでしょう。ですが、金利までコントロール可能とするのは無理があります。

 金利は国外の影響も受けます。実際、「金融抑圧(金利を低く抑え続けること)は、不可能ではないが、難しい」と考えるのが一般的です。

 確かに日本では長い間、低金利を実現できていますが、それは日本の経済力の高さや国際情勢のお陰だったのではないかと僕は考えています。金融抑圧が可能という理論的裏付けがないからです。少なくとも前述した三冊に明確な根拠は発見できませんでした(僕の見落としだったら、謝るしかありませんが)。

 ですから、経済の状況が変わってしまったなら、国家破綻の危機を覚悟しなくてはならないのではないかと僕は考えています。

 例えば、多くの人が「日本の国力は衰えていく」と予想していますが、その通りに衰退し続ければ、やがては金利のコントロールが上手くいかなくなり、国家破綻してしまうかもしれません。

 

 ところで、ここまでを読んでこんな疑問を覚えた人はいませんか?

 国債はまだしも、日銀当座預金は日本銀行が管理しています。法定準備額を超える金額については利子を払わなくてはならないという決まりにはなっていますが、それは飽くまで“決まり”に過ぎません。

 ならば、その決まりを変えて、「日銀は金融機関に利子を払わなくて良い」としてしまえば、財政危機に陥る事にはならないのではないでしょうか?

 実は既に日本はこれをやっています。少し前に話題になった“マイナス金利政策”ですが、日銀当座預金の一部に“マイナス金利”を設定しているのです。“マイナス”ですから、日銀は金融機関に利子を支払う必要はないどころか、逆にお金を貰えます。

 ですが、これで財政破綻を防げるのかと言えば、もちろん、そんな事はありません。

 これ、実は実質的に金融機関に対して増税をしているのと同じなのです。本来ならば受け取れるはずの利子を金融機関は貰えず、逆に支払わなくてはいけないのですから当然なのですが、だから金融機関の体力を削ります。やり過ぎれば潰れるでしょう。「地方銀行が潰れるかもしれない」と言われていたのはだからです。

 (因みに、安倍政権時代から、地方銀行の体力強化の為の再編を行っていますが、多分、地方銀行が潰れるのを防止したかったのではないかと思われます)

 ただし、これはこういう事でもあります。

 

 「金融機関が日銀当座預金から通貨を引き出し、他で運用すれば財政破綻は防げる」

 

 そして、ここで話は“既得権益”に戻ります。何故なら、金融機関が日銀当座預金から通貨を引き出す為には、資金の運用先、つまりは“新たな投資先”が必要で、それを創り出すには、“既得権益の支配”を打破する必要があるからです。

 こう考えると、アベノミクスの“三本の矢”の一つに、“規制改革・緩和”があった理由がよく分かるのではないかと思います。

 既得権益を護る手段は“規制”なんです。その為、既得権益を打破するにはその規制を改革する必要があるのですね。

 もう少し具体的に説明しましょう。

 例えば、ドローン技術の発達によって、ドローンが街中で飛ばせる程に安全になる目途が立ったとしましょう。歩行者の頭の上にドローンが落ちて来たり、ぶつかったりする心配がほとんどなくなるのですね。

 こうなると、物流にドローン技術を活かせるようになります。そしてそれによって物流が効率化しコストが安くなります。普通に考えると、商品の値段などが安くなるでしょう。当然、インターネットで物を買った場合の配送料も安くなります。

 ただし、物流が効率化するのだから、物流業界で失業者が出てしまいます(物流の需要がそれ以上増えれば、その限りではありません)。がしかし、その失業者には別の仕事をしてもらえば問題はありません。

 これは一案に過ぎませんが、高齢社会の日本は、高齢者福祉の需要が高いので、そこで働いてもらうとしましょうか。

 すると、日本の“生産物”の中に福祉サービスが増えるのです。生産物が増えているのですから、実質GDPが増えます(名目GDPが増えるかどうかは、どういう風にお金が流れるかで変わります)。

 もちろん、“好ましい影響”は、これだけに留まりません。

 福祉サービスが充実すれば、それで生活に余裕が生まれ、子供を産んだり働きに出たりできるようになるでしょう。つまり、世の中に好循環が生まれるのです。

 もっとも、ドローンによる物流の効率化だけでは充分な影響は出ないかもしれませんがね。

 このような事を行えば、“ドローン”に関する様々な事業や福祉事業に資金需要が生まれます。要するに、金融機関の資金運用先が生まれる事になるのです。すると、日銀当座預金が減って財政危機が緩和します。財政再建効果はこれだけではなく、ドローンの普及や福祉事業の発展でGDPが増えるので税収が増え、それでも国の借金は消えます。

 もちろん、日本の借金は膨大なので、ちょっとやそっとの投資では正常化しませんが、AIやロボットなど、これから期待できる技術発達を考慮するのであれば、他にも有望な投資先が生まれると考えられます。長い期間をかければ、問題は解決するでしょう。

 そして、アベノミクスが順調に進んでいけば、それが実際に起こる可能性はありました。ところが、安倍政権は途中でこれを止めてしまったのです。

 (ただし、完全に止まった訳ではありません。2016年に電力の自由化もちゃんとされていますしね)

 主な理由は“既得権益団体の抵抗”だったのではないかと言われています。どこまで本当かは分かりませんが、「既得権益を主導する官僚達に逆らえば、その政権は簡単に潰されてしまう」というような事を言っている人もいて、実際に自民党がJA全中の特権を奪う法改正を審議している際に、自民党が選挙に負けてしまうという事が起きています。

 そして、規制改革の歩みを止めてしまったアベノミクスは、実質的にただの金融緩和政策になってしまったのです。

 アベノミクスの“規制改革・緩和”に少しは期待していたので、僕はこれに失望しました。

 が、菅政権が誕生した時に状況が変わったのです。菅総理は「規制改革を行う」と明言したのですね。そして、その一端でもあると思うのですが、実際にデジタル庁を立ち上げたのです。

 また、文部科学省が反対していたオンライン授業、厚生労働省が反対をしていたオンライン診療をコロナ19への一時対応ではなく、恒久化させています。充分ではありません(特にオンライン授業は緊急時のみ)が、それでも重要な一歩でしょう(参考文献:「岩盤規制 誰が成長を阻むのか 著者:原 英史 新潮社」 “オンライン授業に反対”は182ページ、“オンライン診療に反対”は33ページ辺りから)。

 AIなどのテクノロジーによって、失業者が出る事が懸念されているので、オンライン授業の発達による“学習の効率化”は急務です。それによって迅速にスキルを身に付けてもらえば、社会不安が減退する上に経済成長もし易くなるからですね。

 ほんの少しの前進ではありますが、この方向性は絶対に正しいです。

 オンライン診療の必要性も明らかです。

 高齢社会ですから、自宅にいながら診察が受けられたなら、どれだけの人が助かるか分かりません。

 ――がしかし、このような改革を進めていけば、官僚を敵に回します。

 単に権力を私利私欲の為に利用したい、或いは軍事力強化などが目的だったなら、官僚を敵に回すような言動はしないでしょう。

 正直、自民党政権にはあまり期待していなかったのですが、これで僕の意識はかなり変わりました。

 ただし、同時に不安も抱きました。

 「既得権益を主導する官僚達に逆らえば、その政権は簡単に潰されてしまう」

 これが本当だったなら、これから菅政権への妨害が始まるはずです。

 そして、そんな意識で入って来るニュースに耳を傾けていると、「あれ? なんかおかしいな」と思う事が度々ありました。

 日本学術会議任命拒否問題。安倍政権時代に起こった“桜を見る会問題”が、何故か今更マスコミにリークされて問題を追及され、菅総理の長男が絡んだ総務省幹部への接待疑惑が持ち上がりました。

 これら事件は、本当に純粋な事件だったのでしょうか? もし仮に、菅政権が「規制改革」を口にしなかったのなら、隠されていたか、そもそも事件自体が起こっていなかった可能性はないのでしょうか?

 妙なニュースはまだまだあります。

 平井デジタル改革担当大臣のNECへの「脅し」発言がリークされて問題になり、かなり悪い印象を国民に与えましたが、「国民の税金を無駄遣いさせない為の発言だった」と擁護する声もあります。

 似たようなニュースに、河野大臣がエネルギー行政に関連して経産省に対して「パワハラ」を行ったというものがありますが、経産省の原発利権を知っている僕には原発利権と戦っている姿に思えました。

 菅総理が広島市の記念式典で、原稿の読み飛ばしをしてしまったり、長崎市記念式典では遅刻をしてしまい責められましたが、いずれも“事務方のミスだった”という報道がされています。

 これ、本当にミスだったのですかね?

 つい“嫌がらせだった”という可能性も僕は疑ってしまいます。

 もし嫌がらせだったのなら小学生レベルですが、官僚って本当に小学生レベルの言動をする事があるのですよ。

 クリーニング店には「受け渡し用のロッカーを使ってならない」という規制があります。もちろん、既得権益を護る為の規制なのですが、この規制の理由を厚生労働省は「店員が顔色を見て、感染症の有無を判断する為」などと説明したそうです。

 流石に冗談だと思い、担当者が確認すると本気で言っていたのだとか。

 (参考文献:「岩盤規制 誰が成長を阻むのか 著者:原 英史 新潮社」34ページ辺り)

 他にも、年金保険料納付率の目標を果たす為に、本人の意思を確認しないまま、不正に免除したりだとか、信じられない事件を起こしています。

 コロナ19対応についても疑問があります。

 これは安倍政権時代の話ですが、安倍総理がPCR検査の拡充を指示したのに、厚生労働省が何故かそれを潰してしまったのだそうです。

 菅政権はコロナ19対応でも批判されていますが、本当に責められるべきは菅政権なのでしょうか? いえ、もちろん、幾ばくかの責任はあるのでしょうが、それでも菅政権だけに原因がある訳ではないでしょう。コロナ19対策を主導している厚生労働省が変わらなければ、状況は変わりません。

 冒頭、ワクチン接種で、「注射を打てる」という既得権益を医療団体が手放さなかった話を書きましたが、これは誰に責任があるのでしょう?

 オリンピックに菅政権が反対していたら、それこそデジタル庁の創設すらも潰されてしまっていたという可能性は?

 

 もちろん、真相は分かりません。

 (菅総理は自分に関係のない既得権益は、打破しようとしたが、自分に関係のある既得権益には手を付けなかったという主張もあります)

 「菅政権への妨害が始まるかもしれない」

 という意識で、僕は様々なニュースを聞いていたので、そう聞こえてしまっただけかもしれません。

 僕に伝わってくるのは、表面上のニュースだけですしね。

 ただ、それでも、菅総理は退陣に追い込まれてしまいました。

 つまり、実際に、

 「既得権益を主導する官僚達に逆らえば、その政権は簡単に潰されてしまう」

 という事が起こったのです。

 

 本当はこのエッセイは、“既得権益を主導する官僚達”から妨害を受けているだろう菅政権を応援する目的で書き始めたのです。

 “妨害を受けている”という不公平を少しでも是正したかったのですね。少なくとも、その可能性は高そうだと判断したので。

 断っておくと、僕は別に自民党を支持してはいません。中立です。ですから、菅総理の退陣が決まってしまった以上、これからの自民党政権がどうなるのかを見守っていくつもりでいます。

 

 最後に、蛇足にはなりますが、太陽光発電を例に、“経済の発展”と、その正体についての説明をしたいと思います。

 2020年に小売店のビニール袋が有料化されたことが話題になっていましたね。これ“有料化”と言われてはいますが、実は本質を言えば有料化ではありません。何故なら、ビニール袋代は商品原価に含まれていて、つまりは意識していなかっただけで、これまでも消費者はビニール袋の代金を支払っていたからです。コンビニなど、メーカー側が価格を決めている所は反映が遅いので時間がかかりますが、だから弁当屋など、自分達で価格を決められる店は、有料化(選択制になったとでも言うべき?)に伴ってビニール袋分価格を下げた所もありました。

 必要もないのに強制的に買わされていたビニール袋は、資源の無駄遣いと言っても差し支えないでしょう。シャーペン一本を運ぶのに、誰がビニール袋を買ってまで欲しがるのか?って話です。

 資源の無駄遣いを減らせるのだから、良い事のようにしか思えませんが、これを多くの人が批判しました。

 「ビニール袋の需要が減れば、経済がダメージを受ける。一体、何を考えているのか?」

 っていうような感じで。

 これ、形はかなり異なりますが、一つの“既得権益”だと言えると思います。ビニール袋代を強制的に消費者が支払わされていた慣習によって、ビニール袋の製造業者は利益を得ていたからです。だから、既得権益団体がそれを護ろうとしたのじゃないでしょうか?

 自民党政権はそれを崩したのですね。

 広い意味で言えば、“経済改革の一つ”と言えるのではないかと思います。

 因みに、『ビニール袋が有料化された事で万引きが増えた』なんてニュースが流れましたが、警視庁が公開している統計資料を確認してみると、増えるどころか減っています。既得権益を確保しようって団体が、ネガティブ・キャンペーンで抵抗したのじゃないかと僕は考えています。

 ただ、この自民党の改革自体は正しいのですが、満点とは言えないと思います。

 ビニール袋の無駄遣いが減った事で、その分、労働力が余ります。できるのなら、その余った労働力を使って自民党は何か別の産業が育つように促すべきでした。

 ――さて。

 ここで一点、気にするべき事があります。

 “必要もないのに使われるビニール袋”は、間違いなく資源の無駄遣いです。でも、「経済の為に行い続けるべきだ」と言われていたのです。

 ならば、「太陽光発電は非効率だから、経済の為に促すべきではない」って主張はおかしいとは思いませんか?

 百歩譲って、仮に「非効率だ」という主張を認めるにしても、太陽光発電を普及させれば、メーカーの利益になるし、運送会社の利益にもなるし、太陽光パネルを設置する業者の利益にもなります(因みに、太陽光発電の設置費用って、かなりの割合を設置する業者が占めます。これは建設業者にも可能ですから、大々的に普及すれば建設業者はかなり助かると思います)。そして、自国産のエネルギーも得られるのです。

 生活者の支出が増える?

 そうかもしれませんが、通貨ってのは循環しているのです。支出も増えますが、収入も増えるのが普通です。大きな問題はないはずです。

 もちろん、資源が余っていないのであれば、その限りではないのですが、現在は知っての通り、労働力は余っています。その労働力を太陽光発電の為に使えば良いのですよ。するとその分、経済は成長します。GDPも増えて税収も上がります。

 つまり、何が言いたいのかと言うと、経済というのは“資源を遣って何を生産するか?”を決める事で、経済成長の正体とは“有益な生産物を増やす事”に他ならないのです。

 だから、資源が余っているのであれば、仮に多少非効率であったとしても、生産してしまった方が良いのです。

 いえ、まぁ、そもそも太陽光発電は非効率ではないのですけどね。様々なメリットがあります。

 これは単純な“利益”だけの事を言っている訳ではありません。

 原子力発電所や火力発電で発電される1万円分の電気と太陽光発電で発電される1万円分の電気では、日本社会にとって太陽光発電で得られる電気の方が高い価値を持っています。

 何故なら、原発や火力発電は、他国に燃料エネルギーを依存しているのに対し、太陽光発電は自国産のエネルギーだからです。

 これは、燃料分、海外に利益が流れてしまっているという事でもありますが、そんな単純な意味だけではありません。

 原発のウラン燃料も火力発電の化石燃料も枯渇する資源ですから、いずれは資源価格が高騰する可能性があります。すると、電気代ももちろん高くなります。

 更に、これはあまり考えたくはないのですが、もし、日本が何処かの国と戦争になってしまったなら、“エネルギーを海外に依存している”という弱点を突かれる可能性もあります。早い話が“兵糧攻め”されてしまうかもって話ですね。国際的に大きな影響力を持つ国になら、それくらい可能でしょう。

 それに、そもそも「戦争が本当に始まる」という雰囲気が漂い始めた時点で、原発は稼働させない方が良いでしょうし。

 つまり、原発や火力発電には軍事的にも経済的にもリスクがあるって事です。

 (因みに、中国はアジア最大のウラン資源国であり、ウランの備蓄政策を執ってもいる上に、中国の衛星国である北朝鮮には膨大なウラン資源が埋まっているとされているので、日本が原発中心になったなら、経済的にも軍事的にも中国に不利になるものと思われます)

 リスクが少ない分、太陽光発電の方が価値があると言えるのです。

 ここで、太陽光発電の特性を軽く書き出してみたいと思います。

 まず、太陽光発電は製造設置コストは高いですが、維持費は安いです。なので、今後、日本経済が衰退する、或いは国家破綻によって物価が上昇してしまうと想定するのなら、その前に設置する太陽光パネルの利益率は想定されているよりも高くなります。

 時折、「日本は間違いなく衰退する」みたいな発言をしていて、しかも物価上昇が起こる事も否定しないのに、何故か太陽光発電のこのメリットをまったく考慮に入れていない某論破王みたいな人もいますが、だから太陽光発電には“保険”としての価値もある事になります。

 (一応断っておきますが、飽くまで“保険”です。日本にはまだまだ復活のチャンスがあります。その為に書いてるのですがね、これ)

 次に、太陽光発電にスケールメリットはあまりありません。大規模にしても発電効率が上がるみたいな事は起こらないのです。もっとも、工事費の節約にくらいはなりますが。

 ただし、代わりに、送電ロスが少ないというメリットがあります。電気を使う場所の近く…… 街中の家屋の屋根などで発電できるので送電時に熱エネルギーになって失われる電力を低く抑えられるのですね。

 この2点を考慮に入れると、太陽光発電に適しているのは、市街地って事になります。一括購入によって太陽光パネルを安くできますし、広い面積の方が設置工事のコストは安く済みますからメリットはありますが、だから広い面積はそれほど重要ではありません。

 現在、市街地から離れた地方の山林を切り崩しての太陽光発電が環境破壊になると問題視されていますが、その活用方法は太陽光発電の特性を考えても理に適ってはいません。

 多分、利権からみの何かで、そんな活用方法がされているのじゃないかと思うのですがね。

 太陽光発電の特性を考慮するのなら、例えば、市街地の太陽光発電に適した建物を調査し、電力会社やその他の企業がその屋根に太陽光パネルを設置して発電、その電気は自宅や近所で使用し、電気代ではなく、太陽光のレンタル代として消費者はお金を支払う…… なんて形態が良さげに思えます。

 いえ、ブレインストーミング的なアイデアなので、もっとよく練らないといけないとは思いますが。

 ただ、これを一気に広い範囲(例えば、町内まるごと、とか)に行えば、コストが節約できます。

 太陽光発電に限らない多くの再生可能エネルギーの欠点として、“発電がコントロールし難い”というものがあります。その所為で主電力にはなり難いのですね(補助電力としては今でも有効です)。

 が、前述した通り、その欠点をカバーできる“バイポーラ型電池”の実用化に日本の古河電気工業と古河電池が成功していて、しかも既に量産体制に入っていると発表しています。

 これが本当ならば、再生可能エネルギーを普及させない手はありません。経済成長を促せる大きなチャンスです。

 日本社会がこのチャンスを自ら潰してしまわない事を願いましょう。

 

 ――ところで成長通貨って知っていますか?

 

 経済に詳しい人でも知らなかったりするので、知らなくても無理はありませんが、これは経済成長によって増えた通貨需要に合わせて供給される通貨をいいます。

 もし仮に、上記のような方法を執れば、ほぼ確実に経済が成長します。つまり、通貨需要が増えます。

 これに成長通貨の考えを応用するのなら、最初の一回分に関しては、国が通貨供給を行える事が分かります。

 資源を活用して産み出された生産物の分だけならば、新たに通貨を発行しても、悪性の物価上昇は起こらないのですね。そこに新たな“通貨の循環”が発生する(通貨需要が増える)からです。

 仮に“太陽光発電設置料金”といったものを設けて、そこで“通貨の循環”を産み出せるのなら、つまり「支出が増えるのと同時に収入も増える」という状況を産み出せるのなら、その最初の一回分に関しては通貨を新たに発行できるのです。

 国民の生活負担にならない、とても良い案だと思うのですが。

 

 もし、これが実現できるのなら、環境問題対策と経済成長を両立できるようになります。僕は人間社会が環境問題を乗り越えられる希望は、この方法しかないと考えています。チャレンジしてみる価値は絶対にあると思うのですがね……。

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[気になる点] >もしかして、長期国債金利が国全体の金利の基準になっているのを知らなかったりします? それまでに発行した国債の金利は変わらないので、国債を抱える金融機関は損失を受けるのですが。 たし…
[気になる点] >通貨主権を持っている国には、自国通貨はコントロール可能という主張はその通りでしょう。ですが、金利までコントロール可能とするのは無理があります。 本にそんなこと書いてありました?MM…
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