第九十六話 最強の2人
ケイン達が無事に王都に着き、エネマ達との合流を果たしていた頃……
雷帝オルトメキナは禍々しい鎧をその身に纏った暗黒の剣士と対峙していた。
周りには騎士団の人間や、ガダルマンダの冒険者もいたが、皆2人から溢れ出る気配に圧倒されて尻をついている。
彼等は互いを見つめあった後問いかける。
「貴様が四天王筆頭魔剣王のヴィクターか?」
「いかにも……貴殿は雷帝のオルトメキナか?」
「ああそうだ…念の為聞くが此処を落とすつもりで来ているのだな?」
「そうだ。ところで一つ提案をしたいのだが……」
「なんだ?見逃せという話なら出来んぞ?」
「そんなことでは無い。私と一騎討ちをしてほしいのだ。貴殿は強い。私も死んでしまうかもしれない……しかし、貴殿と戦った結果その命尽きるというのなら、それは私の本望だ。貴殿程の者と戦うのはこれが今世初なのだ」
「ふむ……ならば乗ろう、その一騎討ちに。貴様にはどうやら素晴らしい騎士道精神を持っているようだ。私も楽しみになってきたよ」
「それは嬉しいな……では行くぞ!」
その言葉によって戦いは開始された。
オルトメキナは恐らく今までの人生で最高の速度を出した。
しかし、それは受け止められてしまう。
「フッ、流石だな雷帝。これ程のものに会うのはこれが初めてだ」
「それはどうも…まさか受け止められるとは思わなかったが」
今度はヴィクターが剣を振る。
その攻撃には氷魔法が乗せられており、威力はとんでも無いものだった。
オルトは自分の本来の速度より3倍早く動ける、『雷神』でそれ避けた。
本能的に、攻撃を食らったら死ぬと悟ったのだ。
受けなかったのは正解だった。
もし食らっていたら死んでいただろう。
世界でも相当強いであろうオルトでさえ一撃で敗れるほどの威力。
それだけ魔法と剣の融合は恐ろしい物だった。
通常、剣に魔法を纏わせることしか出来ないが、ヴィクターは剣と魔法を混ぜているのだ。
オリジナルスキル『魔剣王』のおかげで魔力と剣の扱いに長ける。
本来なら剣術も魔法もAランク相当でないと使えない剣と魔法の融合だが、ヴィクターはこれを成したのだ。
名をつけるなら魔法剣と言ったところか……
オルトは、ヴィクターの攻撃を避け続けるしかなかった。
幸い、『雷神』を使っていたおかげで避けるのは難しくなかったが、反撃ができない。
オルトはヴィクターの攻撃を観察する。
何が反撃の手立てはないのか?
攻防は続き、数分が経過した頃。
「素晴らしい。ここまで私と打ち合ったのは貴殿が初めてだ。貴殿のことは永遠に忘れん。だが……これで終わりだ。三十槌の氷柱!」
氷の檻に閉じ込められて、オルトは加速できなくなってしまった。
「さらばだ」
そう言って剣を振り下ろすヴィクター。
オルトは腹を括る。
「一か八か!雷鳴」
オルトは、ヴィクターの剣を相殺する為にヴィクターの剣を真似て自身の剣に雷を混ぜたのだ。
上手いこと魔法剣に成功し、オルトはヴィクターの剣を相殺した。
簡単に言うようだが、これを成功させるのはとてつもなく難しい。スキルに頼らず、純粋な技量のみで使えるようになったのは世界でもオルトメキナが初めてだった。
「ほほう、まさか魔法剣を使う者が私の他にいたとはな……」
「いいや、今見て覚えただけだ。だが、これでようやく対等に戦えるな……雷鳴!」
「まったく……貴殿とは味方として会いたかったよ。氷伊吹!」
彼等は打ち合う。剣の腕は互角だが、ステータスはオルトが上。しかし、その差を魔法剣の熟練度でヴィクターは埋めていた。
何時間斬り合ったのか分からぬ頃に、2人は同時に倒れた。
「次で……最後だ」
「ではこうしよう……私達は互いに最大の技を出し合う。それをぶつけて、生き残れた者が勝者だ」
「よし…乗った」
最後の力を絞り出して技の構えに入る。場には緊張が張り詰め、一切の音が聞こえない。
魔力が集中されて同時に動き出した。
「魔剣王!」
「雷帝!」
互いが自らの二つ名である技名を叫ぶと、命を賭けて衝突する。
砂埃で隠れて勝敗がわからない。
見守っていた騎士団と冒険者は5秒後歓喜する。
現れたのはヴィクターの死体だった。
それはつまりオルトメキナが勝ったことを意味している。嬉しさで叫びを上げそうになるが、1秒後彼等は涙する。
ヴィクターの死体のそばにある、オルトメキナの
死体を見て……
最近よくキャラクターが死んでいる気がする……
あまり死なせたくないのでちょっと書いてて悲しいです。




