第八十七話 玉座
「とりあえず……この階の管理人を倒すとしよう」
「そうですね。先程のゴブリンの話の通りですと、オークキングでしょうが……どう攻略しますか?」
「……まぁ、普通に考えれば正面突破だが、今はクリフがいるしな、あの手で行こう」
「あの手……ですか」
「あの手ですね」
………………………………
………………
……
「ご報告があります。第一階の管理人にして、オークキングのガヘッド様。四天王のテクスト様より連絡がありました」
「四天王のテクストだと?あのCランク冒険者にやられたとかいう四天王の面汚しがか?……今更腰抜けが何の用だ?」
「どうやら王都を掌握した模様です」
「ふん……名ばかりの四天王だと思っていたが一応最低限の実力はあったようだな。まあ、そのうちその四天王の座も俺様が頂く事になるがな、ガハハハ…は?」
大声で笑うガヘッドが突然倒れる。
「ガヘッド様!?どうされましたか?どこかお陰で……も……」
報告をしていた部下も数秒遅れで倒れた。
「ふぅ……やっぱり呼吸をする魔物にはクリフが1番強いな……」
そっと物陰から出てくる僕達。
いつも通りクリフに空気操作で周りの空気を二酸化炭素だらけにした。
魔物の中でも呼吸に頼るタイプと頼らないタイプが分かれるが、基本的に生殖によって子孫を作る魔物は呼吸に頼り、自然に生まれたタイプと上位者に作られたタイプは呼吸に頼らない。
「じゃあこの調子で他の階も攻略していくか」
僕達は(主にクリフ)各階の管理人と魔物を順調に倒していった。
呼吸するタイプの魔物はクリフが倒し、他は僕とエネマとエルナで倒す。
上に報告されないよう迅速に倒していき、警戒されずに進むことが出来た。
そうしてついに最後の部屋手前まで来た。
「この上に魔王がいるわけですね」
「……まだ僕達の存在はバレてないよな?だったらここで倒せないか?」
何もテクストを倒さなくても魔王を攻略して仕舞えば全て解決する。
「流石に二酸化炭素で倒せたりはしなくても今なら不意打ちだし……」
「そうですね……試してみる価値はあります」
「でもリスクが高い」
「うっ!失敗したら死ぬだろうな」
「どうする?やはり今は……」
その時、僕達に恐ろしい声がかかる。
「なんだ?我が玉座に立ち入ろうとする者どもよ。来ないのか?」
(バレてるだと!?)
「ハハハハハ。我に不意打ちなど出来るとは思わぬことだ」
……これが魔王。
扉の向こうからなのに、圧倒的な存在感を感じる。
「来ないのならばこちらから……」
「3人とも捕まれ!」
僕は死の予感を感じて縮地をした。
縮地をするまでのコンマ数秒。
とてつもない速度のダークレイが襲いかかってきたのが見えた。
しかし、僕達に当たる直前に縮地に成功した。
「ハアハアハア……何だよあれ……」
あと0.3秒撤退が遅かったら確実に死んでいた。
「もう……やめておきましょう。魔王軍にもかなりダメージを与えましたし……大人しくテクストが来るのを待つとしましょう」
「ああ…そうだな」
久しぶりに心の底から恐怖というものを感じた。




