第七十九話 信じられる事
「フレアバーストヴェノーヴァ!」
「ヴァリアブルエアバレット!」
「縮地!」
「チッ!厄介だな……」
僕が糸による攻撃を引きつけ、エルナとクリフが魔力による攻撃を相殺する。これによって大概の攻撃は防げているが、どうにかしてあの糸を断ち切らないと本体の元に向かえない。
何故本体は動かないのだろうか?
おそらくだが、近接戦に自信が無いのではなかろうか?
断定するのは危険だが、今の所糸でしか攻撃をしない。それならまずはこの糸をどうにかしなければならない。
1人では無理だ。
だが、今は仲間がいる。
「エルナ!20秒だけ持ち堪えられるか!?」
「了解です!」
すぐさま糸の包囲網を掻い潜りクリフの元に向かう。
「クリフ!頼みがある」
「なんでも言ってください!」
「このあたりの火山帯から出る鉱石には塩素が含まれている…その中から塩素を取り出す事は出来るか?」
「出来ますよ」
「じゃあその塩素と水素を同時に燃やして塩化水素ガスを作って欲しい。それを水に混ぜて塩酸にしてくれ!」
「了解です……が貴金属は塩酸では溶けませんよ?」
「問題ない。それができたら呼んでくれ!」
そう言って僕は前線に戻る。
「遅いですよ!3秒オーバーです!」
「悪い」
「……何か良い案があるのですね?」
「ああ、やってみないと分からないが、あいつが自分で言っていた事だしきっと上手くいくだろう」
「なら私は貴方を信じて受け続けますよ!」
「ふんっ!おしゃべりしてるとこ悪いけど、いつまで持つかなぁ!あんまり壊れるのが遅いおもちゃも嫌いなんだよね」
「無駄ですよ、貴方なんかに壊せません」
「僕達がおもちゃなら、さしずめお前はおもちゃも上手く扱えない頭空っぽのガキだな…精々自分の敗因も分からぬままにあの世に行きな!」
「黙ってろよこのポンコツ共が!」
焦りを見せ始めたネドリア。今まで苦戦というのをした事はなかったのだろう。それは凄いことではあるが、同時に弱点にもなる……
「出来ましたよ!塩酸」
「ナイス!エルナ悪いが…」
「また耐えてくれっていうんですね、分かってますよ!」
「助かる」
そして僕はクリフの元へまた駆け寄る。
「クリフ、次は窒素と酸素をエルナと協力して燃やしてくれないか?それで一酸化窒素が出来る!それを酸素と結合させ、出来た気体を水に溶かせ!最後に塩酸も混ぜてくれ!」
「!それじゃあ暫くの間ケインさんが1人であいつを…」
「大丈夫だ、僕を信じろ!」
今のケインに信じろと言われたらクリフにはもう迷う事などない。冷静になった彼女ならば必ず勝利に導いてくれるはずだと、信じているからだ。
「分かりました!」
いつもの様に返事をする。
でもそのトーンはいつもよりも少し明るかった。
塩素の取り出しは正確には空気操作で無い気もしますが、そういう能力だと思って目を瞑ってください。お願いします。
頼むから突っ込まないで……




