第七十五話 違う道
「…ガル……ド……?……お、おいしっかりしろガルド!」
かつてガルドだった物を揺さぶるが返事はない。当然だ。
綺麗に分けられたそれは元の状態から等分されていて、たしかにこれでは騎士団も分からないだろう……
死体の側には限りなく細い闇が落ちていた。
ガルドの魔法だ。抵抗した時の物だろうか………
闇は、使用者が死んでもしばらくの間は残り続ける。この闇をガルドの形見にしたいが、それも叶わない。
「しかし、ガルドさんはもっと大きな闇を使えたはず……何故こんな細い闇を」
エルナがどうでも良いことを話す。
「なんでも良いだろそんなの。とりあえず犯人を見つけて拷問するぞ……」
なんで……なんでガルドがこんな目に……
「落ち着いてください!ケインさん?貴方は犯人の目星がついているのですか?」
「あるわけないだろそんなの!でも探すしか……」
「闇雲に探しても意味はないでしょう!?それにすぐに先生達に報告に行かないと…」
「勝手にやってれば良いじゃん。僕はガルドを殺した奴に死を与えてくるよ」
「……それが例え、魔王軍四天王が相手だったとしてもですか?」
「……何を知ってる?」
「大したことではありませんが……以前テクストが四天王の1人がミトドリアの近くを拠点にしていると言いました。……ガルドさんはかなり強いです、一般人ならともかく、声を出させずに殺すなんて私でも無理です」
「……僕なら出来た。絶対にやらないけどな」
その言葉にエルナに少し眉を動かしたが、構わず続ける。
「だとしたら、やはり相手はケインさんに匹敵するほど強い、もしくはそれ以上ということになります。そんな相手に1人で……しかもなんの情報も無く戦うのですか?」
「ああ、絶対に負けるものか」
「考え直してください!」
「……昔ね、死んだ僕の友人が言ったんだ『お前は自分の為に剣を振るえば良い』ってね。だから、僕はガルドを亡くした僕自身の為に剣を振るうよ」
「……そうですか、ならば私はもう知りません。勝手にやってれば良いでしょう」
そう言うとエルナは立ち去っていった。
「クリフはどうする?」
「僕も……ガルドさんを殺した犯人を放ってはおけない。でもこんな方法間違ってます!」
「……ならエルナや騎士団と共に犯人を捜せば?」
クリフは躊躇った様子をみせたが、すぐにエルナの方へ行った。
「……もう巻き込めないもんな」
勇者の仲間として狙ったのか、それとも僕の仲間としてガルドを殺したのか……
それは分からない。しかし、もうあの2人と一緒にはいられない。
この戦いには巻き込みたく無いから……




