第七十話 アステナの処遇
スライムを倒し始めて半月が経った。
そろそろ帰国の準備を始めなければいけない。
夏休みは来週でおしまいだからな。
今日で最後のスライム狩りだと思って冒険者ギルドに行くとアステナが呼び止めてきた。
「ケインさん?この後少しよろしい?」
「え、あーいや、時間ないので…」
「良いですよね?」
笑顔が怖い。
仕方がないので付いていく事にした。
付いていくと路地裏に来た。
「えーと……ここで何を?」
「あの……ケインさん、初めて会った時は失礼な事言ってごめんなさい」
なんだろう……あまりこの先を聞きたくないな
「私……ケインさんの事見ているうちになんだか……好きになってきてしまって、その……運命を感じたの……」
なんだかこの人からはうちの両親と同じような匂いがするな。人の事を金づるとしか思っていないような……
「もし良ければだけど私と結婚してくれないかな?私たちの愛を確かめたいの!私のこと好きにして良いから……」
いきなり結婚かよ。というかちょっと気持ち悪い……
「……僕に色仕掛けは通じませんよ」
「そんなのじゃないわ。私本気よ」
そう言って胸元をチラつかせてくる。馬鹿にしてるのか?
それとも馬鹿なのか?
「じゃあこの国では同性結婚が許されているんですね?」
「へ?」
一瞬わけのわからないという顔をしたが、すぐに察したようだ。
「フッ、好きな相手の性別も知らないんですね?」
アステナは顔を赤めた後、罵ってきた。
「ふざけんな!てめぇがイケメンAランク冒険者だと思ってたから優しくしてやってたのに!」
あ、やっぱり本性表したな。
「いや、別に優しくされた記憶もないんですけど」
「っざけんな!せめて今後ここで私の専属として働き続けろ!いいな!クソが!」
どんどんポキャブラリーが無くなっていく……
「普通に嫌ですけど」
そういうと壁ドンされた。
「お前ボコボコにされたくなかったら大人しく言うこと聞けや」
「貴方こそ勝てると思ってるんですか?」
「舐めんな!てめぇみてえなチビに負けるかよ!」
殴りかかってきたが、こんなのかわすまでもない。
まともに食らっても痛痒にも感じていない僕にアステナは戸惑っている。
「貴方こそAランク冒険者を舐めすぎです」
たしかに彼女は下手したらCランクに届くかもしれないくらい強いが、それだけだ。
首トンで眠らせる。
「さて、この後どうしよう……」
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「というわけで、アステナは暴行罪と恐喝罪で逮捕されました。元々素行が悪かったので、いつクビにするか悩んでいたのですが……まさかこんな事になるとは………」
目の前でエクレア姉さんが困っている。
「別に僕は怪我してないし構わないんですけどね」
「そういうわけには行きませんよ。どちらにせよケインさんが被害届を出そうが出すまいが捕まっていたでしょうし。調べてみたら今までも色仕掛けやら恐喝やらで自分の所に高ランク冒険者がくるようにしていたみたいでしたし」
あいつ、クソビッチじゃないか。
「この様な事態になるまで気づけないかった私に責任があります。大変申し訳ございませんでした」
「はぁ……次は気をつけてくださいね」
「許してもらえるのですか?」
「初めに言った様に特に問題にする気も無いので」
「ありがとうございます」
こうして、一悶着あったが、クニトラで大量のスキル獲得をすることが出来た。
ケインの身長158cm
アステナの身長172cm
ケインが訴え無かったのはエクレアのギルドで問題を出したく無かったからです。




