第二十八話 コロン
今日もゴブリン退治の依頼を受けようと、ギルドに向かった。
すると、お姉さんが僕に泣きついてきた。
「お願いします。どうかタナカさんの犬の散歩をしてあげて下さい」
「ええ!僕はもうやらないと思ってたんですけど……」
「申し訳ありません。他に受けてくれる人が少ないし、あの狂犬を手懐けられる人もいないんです」
そういえばコロンちゃんは、妙に僕に懐いていたな。タナカさん曰く、今まで来たどのお手伝いさんより懐いたらしい。
「最近物騒な依頼ばかりでしたし、たまには悪くないですね」
そう言って依頼を受ける事にした。
久しぶりに来たお屋敷は、やはり相当な広さがある。
「おお!ケインさん。またあなたに来てもらえて嬉しいよ」
タナカさんは今年70になる大商会の会長だ。
今は車椅子に乗って生活しているから愛犬のコロンちゃんと遊べないんだそう。
「お久しぶりですタナカさん。お元気そうでなにより。コロンちゃんも元気ですか?」
「いやー元気な事は元気なんだが…ケインさんが来てくれなくて寂しかったようだ」
「ははは。じゃあすぐに会わないと」
メイドさんに荷物を預けてコロンちゃんの犬小屋に向かった。
「おお!コロン。ちょっと大きくなったか?」
つい数ヶ月前まで3メートルほどしか無かった体躯が、今では5メートルくらいまで大きくなっている。
そう。コロンは、ただの犬ではなく、Bランク魔物に分類されるグレンダドッグだ。
「ワウッ!ワウッ!」
「やめろやめろ潰れるって」
久しぶりの再会が嬉しかったのかコロンは僕に擦り寄ってきた。
「では、早速コロンちゃんを散歩してきますね」
お手伝いさん達に伝えると、コロンのリードを持って散歩に出かけた。
コロンはやんちゃで珍しいものがあるとすぐに走り出してしまう。
僕は、コロンの挙動にいちいち構ってあげていたら、いつの間にか懐いてくれていた。
久しぶりに、のんびりした気分になった。
ふとコロンを見たら、コロンも目を細めてなんだか眠そうだった。
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コロンは学校が大好きなのだ。
ここに来ると、聞こえてくる楽しそうな生徒の声に思わずスキップしてしまう。
コロンは河川敷が大好きなのだ。
ここに来ると綺麗な川の流れを見ていつも、走り出してしまう。
コロンは丘が大好きなのだ。
ここに来ると街を一望できる、高さに興奮して遠吠えしてしまう。
コロンはこの街が大好きなのだ……
コロンはご主人が大好きなのだ……
コロンはケインが大好きなのだ……
こうしてコロンは大好きを増やしていった。
だから、忘れていたのだ。
自分が嫌いな人間の目を……
でもそれで良い。
もう思い出す必要はない。
コロンはこれからも、この街で幸せに暮らしていくのだから……
コロンの過去について色々仄めかせましたが、多分人気がないとこれらは書かないと思います。
ですから特になんの伏線でも新たな敵の幕開けでもないので期待しないでください。
コロンにも色々あったという事です……




