番外編(地球) 逃亡
時は少し遡り、ケインが空から隠れ家を探し回っていた頃……
長崎の山奥で声を荒げる2人組と、彼等から逃げる少年が1人いた。
「……チッ、あの野郎何処に逃げやがった」
そう言って辺りを見渡すのは痩せ細った眼鏡。横に居るのは全身を黒マントで隠した屈強な大男である。
眼鏡の方は160cm程度しか無いが、大男の方は明らかに3m以上ある。
そのせいで、大男のインパクトがより強調されているのだ。
「ハァッ……ハァッ……ここももう駄目かもしれない……」
逃げているのは翼にツノを生やした少年だ。
木の上に登って息を潜めているが、いつバレてしまってもおかしく無い。
とはいえ不用意に動けばそれこそ間違いなく気付かれる。完全に身動きの取れない状態になってしまったと後悔している。
(頼むから早く向こうに行ってくれ……)
しかし、少年の祈りとは裏腹に2人の男はそこに滞在し続けている。
本能的にこの周辺が怪しいと睨んでいるのだ。
しばらくして、大男の方が何かに気付いたように一つの木を見つめている。
「……おい?どうしたデカブツ」
眼鏡に質問された大男は黙って木の方を指差す。
「あぁ?あの木がどうしたんだよ……」
大男は何も発さずにただ上に向けて指を向けた。
「……よくやったデカブツ。見つけたぜ」
「チッ!見つかったか……」
少年は自分が見つかった事に気づき直ぐに別の木に飛び移ろうとする。
しかし、大男がそうはさせまいと拳を大きく振り下ろした。
その振動はあまりにも大きく、少年は木から足を滑らせてしまった。
地面に打ち付けられるも、必死に逃げようとする少年。
眼鏡は胸元から拳銃を取り出して少年の足に向けた。
「逃がすかよバーカ」
そのまま発砲し、狙い通り弾丸は足を貫通していった。
「グアアッッッ!!!」
「手間取らせやがってクソが。どうせ逃げられるわけねえのによ」
「ハァッ……ハァッ……うぅ……ああああ!!!!!」
少年は泣きじゃくり、足を撃たれて尚這いつくばって逃げようとする。
当然逃げ切れるはずも無く、じわじわと距離が近づいてきた。
「やめろ……く、来るな!」
眼鏡と大男は少年の言葉など聞く耳持たず、歩み寄る。
少年はやけになったのか、急に方向を変えて逃げ出した。
「馬鹿が。そっちは崖だろうが」
ほとんど虫のような動きで逃げている少年。
それを面白がるように見ながら敢えてゆっくりと近づいていく眼鏡と大男。
懸命に逃げ続ける……が、崖について遂に追い詰められてしまった。
後ろは断崖絶壁。手前には敵が2人。
「もう……駄目か……」
「大人しくこっちに来いや。命だけは助けてやらぁ」
「そうだ……どうせ死ぬんだ……ならもうここで……」
「あん?何訳のわからない事……ッ!?まさかテメェ……」
眼鏡は少年の狙いに気づいたのか、慌て始める。
「おい、さっさとこっちに来い!来なけりゃ殺すぞ!」
「どうせ殺すんだろクソッたれ。じゃあな」
少年は崖から飛び降りた。
甘かったのだ。眼鏡と大男の考えは。
少年に自殺する様な度胸など無いと、そう考えていた。
しかし、彼は飛び降りた。
「ちっくしょ!!クソクソクソクソクソォ!!!全部パァだ。ここまでの研究が全て無駄になった!ふざけやがってあのクソガキィ!!」
眼鏡は大男の胸ぐらを掴むと睨みつける。
「テメェのせいだぞ失敗作。テメェがさっさと捕まえてりゃこんな事にはならなかったんだ。いや、それ以前に奴を逃したりしなければ……」
大男は眼鏡のことを無視して崖の方を指差す。
「何の言い訳だコラ、ああん!!?」
自分を無視するかの様な態度に腹が立ったのか、大男を眼鏡は殴りつける。
だが、尚も崖の方に指を差し続けている大男に違和感を持ったのか、眼鏡もそちらを向いた。
そこにあったのは、先ほど飛び降りた筈である少年が空を飛んでいる光景であった。
「おい……おいおいマジかよ。信じられねぇ……フハッ!やったぜ!成功だ!直ぐにあいつを捕まえるぞ!」
眼鏡は大喜びして、少年の方に向かう。
しかし、少年は眼鏡に背を向けて、空を飛び逃げていってしまった。
「チッ、流石にここから拳銃で撃ったら殺しちまうな……まぁ良い。どうせここからは出られねぇんだ……」




