番外編(地球) 特定
そんな訳でケインは今、長崎県の上空を宿地を駆使しながら飛び回っている。
念の為誰かに見られても大丈夫な様に夜中に全身黒色の服で、フードを深めに被っている。
だが、ケインの綺麗な銀髪はよく目立つ。
目を凝らせば遠くからでも見えてしまう。
まあ、見つかった所で今の日本には変わった魔物が蔓延っているのだから、その類と見られてそこまで大騒ぎにはならないだろうとは思うが……
風でフードが脱げない様にしながらも、ケインは辺りを注意深く観察している。
そこら中、見渡す限り木ばかり。
「岐阜もだけど……ここら辺も結構田舎だな」
ケイン達のいた星、惑星ジムダは科学文明こそ地球に大きく劣っていたが、あまり大きな星でなかった分、都市部が多かった。田中が地球から輸入した知識を用いて、大きな建物もそれなりに建てられていたのだ。その為、意外と発展しており、木に囲まれている村の様なものは殆どなかったのだ。
ここら辺ならばたしかにあるかもしれない。
魔物を改造する為の広い土地が……
ケインはそう考えていた。
しかし、その夜は結局アジトらしきものは見つけられなかった。
ケインは次の日も、その次の日も夜中に飛び回っては探し続ける。
だが、やはりそれらしいものは見つからない。
3日ほどして、恭弥がケインに苦言を呈した。
「やっぱり……この方法じゃ見つけるのは無理なんじゃ……?」
「うーん……正直僕も厳しい気がしてきた。元々確立の高い話ではなかったし、あまりにも手がかりがなさすぎる」
「それに……ケイン。この前X(Twitter)で見かけたけど、夜中に飛び回ってる銀色のUMAがいるって噂になってたよ」
そうして、恭弥から渡されたスマホの画面にはしっかりと飛び回るケインが映っていた。夜中なのもあり、そこまで鮮明には映っていなかったが、たしかに飛び回る何かが写っていた。
一応個人で空を飛ぶ機械もあるにはある。
だが、この映像の人影は定期的に瞬間移動しているのだ。ケインの縮地である。
流石に瞬間移動する機械は無いので、これは何だと話題になってしまったのだ。
「……」
「バレない様にやるにせよ限度がある。これ以上話題になってもし黒幕にバレちゃったら……」
「余計に見つけにくくなるな」
そうなっては本末転倒である。
既にそれなりに話題になってしまっている以上何としても、これ以上目立つのは避けたい。
ケインが何気なくスマホをスクロールすると気になるツイートを見つけた。
「……これは?」
「どうしたのケイン?」
「僕の動画の返信欄に同じ様なものを見たって言ってる人がいる……でもこれは……」
ケインは恭弥に画面を見せる。
それは写真であった。
そこには、ケインの様に空を飛ぶ人形の何かが……しかし、ツノと翼ついていた。
「ひょっとしてこれって……」
「惑星ジムダでも見た事はない……改造された魔物かもしれない!」
確証は無い。だが、ケインは直感でそう判断した。何故なら、今までに人型の魔物というのはほぼ、出会った事がないのだ。例外として魔王軍の四天王であったテクストとネドリア、そして魔王城にいたサキュバスだ。
だが、テクストとサキュバスはガルドのスキル『魔王』によって生み出された存在なのでやはり野生で人型は見た事がない。
惑星ジムダでも極めて珍しい存在であり、ゴブリンの様な半分人型の魔物を除くとデーモンやヴァンパイアなどの上位種だけである。因みにテクストとネドリアがこれにあたる。
しかし、写真の人影は翼で空を飛んでいる様だった。
つまり、サキュバスかヴァンパイアの上位種である可能性が高い……が、ヴァンパイアにはツノが無いはずである。サキュバスの翼はあくまでおまけであり、大きさは掌サイズ。
魔物の持つ翼は基本的には鳥が飛行する様には出来ておらず、あくまで彼らが使う飛行魔法の補助なのだ。
写真の翼とツノは明らかにサキュバスのそれより大きい。
例外的な個体の可能性もあるが、そうでなければ改造された魔物という線が有力だ。
「この写真の出所は?」
「ちょっと待って……ダメだ。流石に分からないよ」
「クソッ!手掛かりらしきものを見つけたったのに……」
「いや、まだ手はあるよ。このアカウントの投稿を遡っていけば……あった!」
「場所が分かったのか!?恭弥!」
「いや、写真の場所は分からないけどこの人が1時間ほど前にいた場所なら分かったよ」
「本当か!?」
「うん、あの写真の投稿の1時間前にコンビニ行ったって投稿があるけど、商品の写真のツイートの中にレシートも映ってた。そこに住所が載ってるよ。えっと……長崎の西彼杵郡ってとこみたい」
「お、おお……なんか特定してるみたいでちょっと気が引けるけど……」
「してるみたいっていうかしてるね。まあせっかく見つけた訳だし、しのごの言ってられない。早く行ってみよう!」




