番外編(地球) 隠れ家
ケインが今いるのは上空数百メートルの場所だ。勿論ケインには飛行能力などないので、落ち続けている。
だが、落ちるたびに縮地を使って前に進みながら少し上に戻っている。
こうする事で擬似的にではあるが、ケインは空を飛べるのである。
そして、そんな上空で何をしているのかといえば……
………………………………
………………
……
「「空を飛びながら黒幕を探す!?」」
恭弥と田中はケインの返答に驚いている。
つい先程、ケインは黒幕を探す為に良い方法があると言っていた。
だが、まさかこんな原始的な方法だとは思わなかったのだ。
「い、いやいやケイン?いくら何でもそれは無茶だろ。日本の国土面積知ってるの?そもそも、国内にいるかどうかすら分からないっていうのに……」
それ以前にそんな簡単に見つかる様なら人工衛星やらで見つけられるのでとっくに警察が動いているはずだ。
「まあね。ただ闇雲に探すだけならかなり厳しいと思う……というか見つからないだろうけど、範囲を限定すれば?」
「限定する……?」
「ああ、そもそもドン・ステラが北海道を拠点にした理由は何だと思う?」
「ええ……そりゃあ、広いし面積の割に人は少ないからとかかな?」
「多分そうだろうな。沖縄の場合はそれに加えて交通インフラが他に比べて低い。そうなれば万が一見つかっても逃げる時間が作れるからだと思う」
「じゃあ何でわざわざ沖縄で騒ぎを起こしたのさ?それならもう暫くは潜伏しておいた方が良かったんじゃないの?」
「これも予想になるから真実はわかんないけど、協力者であるドン・ステラが倒されたからそこから芋づる式で辿られるかもしれないと思ったんだろう。実際にドン・ステラを倒したのは僕達だったわけだけど、国が相手だとバレるかもしれないと思って早めの撤退の為にテトラを囮にしたんだと思う」
テトラが暴れてくれればそのどさくさに紛れて自分も沖縄から脱出できる。そう考えての行動だったのだろうが、ドン・ステラを倒したのは国ではなく僕達だったので当然黒幕の正体を掴む術などありはしない。完全に裏目に出てしまったわけだ。
「なるほど……それならテトラの強さが中途半端だった件も含め辻褄は合う……けど」
「けど?」
「それと空を飛ぶ事に何の関係が?」
「北海道と沖縄は除外されるとして、それでも残りの県を探すだけでも相当苦労しますよ」
田中と恭弥はまだ理解出来ないという顔だ。
「いや、そこまで調べる必要は無い。北海道や沖縄は面積が広くて交通インフラが弱かったから拠点にしてたって結論が出たよな?つまりその条件に合致する県を探せば……」
田中はパソコンを取り出して調べ始める。そして数分程して一つの県を見つけた。
「ありました。長崎ですね」
「長崎県……確かに広いし山間部も多くてカモフラージュもしやすい。その上交通インフラは沖縄に次いでワースト2位だ。奴等が拠点にする所としてはうってつけだ」
「北海道程広いわけじゃないが、総合的に見ればここが1番だろうな」
「でも、県が分かったって、もしかしたらドン・ステラみたいに普通の家にいるかも……」
「十中八九そうだろう。でも、ドン・ステラの家にいたのは小型の魔物だけだったんだ。つまり、大型の魔物は何処か別の場所に隠していた筈なんだよ」
「そうなると、何らかの方法で監視カメラや人工衛星を潜り抜けて大型の魔物が管理されてるって事になるよ?」
「ああ、そうだ。というかその方法は見当が付いている。結界だ」
「結界って……、あの?」
結界はケイン達の星には無い概念だ。だから、ケインがこちらの星に来て初めて知った新しい魔法……否、魔術である。
具体的には一定範囲内に何らかの効果を付与できるというシンプルなものだが、ケイン達の星では結界というものは広まっていなかった。
恭弥達地球人が独自に編み出した魔術なのだ。
この結界に魔術的な何かを結界の外から認識出来なくなる効果を付与すれば良いだけだ。
だけなのだが……
「待って、結界って確か莫大な魔力を必要とするよね?あれの効果範囲って凄腕の魔術師でも半径1メートルとかが限界なんだよ?」
そう、これが普及していれば犯罪がとてつもなく容易になるくらいには、悪い意味で便利な魔術なのだが、残念ながら必要魔力量が莫大で使いこなせる者がいなかったのだ。
大型の魔物を隠す事など不可能である。
「ところが、あるんだ。これを可能にする方法が」
「……あっ!」
「そう、その為のキュウでもあったんだよ」
「どういう事?」
恭弥1人だけがまだ理解出来ていなかった。




