番外編(地球) ケインと魔法少女達㉑
病院に着いた僕達は直ぐに日向の病室へと駆け込む。
「ちょっと!今は面会時間外ですよ!ってか今朝の4時だぞちょっとは時間考えろやボケェ!!!」
受付のお姉さんにキレられたが構わず病室に行く。
「日向!」
「……ひな……こ?すず…な……に、ケイン……も」
病室には既に衰弱しきった日向がいた。
顔色はもはや悪いどころでは無く、まったく血が流れているように見えない。
日向は元々少し肥満な方な体型だったのに、明らかに痩せ細っていて、手足が棒のようになっている。血管は浮き出ていて、肌は艶がない。
それでもどうにか生きてはいるし、話す事も出来るようだ。だが、案の定時間は足りていない。
「キュウ、お願い」
「キュウ!」
そう言ってキュウが日向の元に行き噛みつこうとする。
……が、日向はそれを全力で拒否した。
「やめ……て。もう、……やめて」
「大丈夫だ日向、キュウも逆らえなかっただけなんだ。今はもうドン・ステラもいない。キュウがきちんと日向に奪われた分のエネルギーを返してくれる」
しかし、日向は拒み続ける。
「ごめん……なさい。でも……こわ…くて」
見ると、全身震えている。当たり前である、1度殺されかけた相手を信用しろというのだ。
それに、日向は現在進行形で死ぬ思いをしている。もう嫌だという気持ち、トラウマはこの場の日向が1番強いのだから、僕達3人が軽々しくもう信用できるなどと言えたものか。
「キュウ……」
無理やり噛み付くわけにもいかず、キュウは肩を落とした。
……が、そんな日向を見て鈴菜と日奈子が少し怒ったように言う。
「日向、確かに貴方がキュウを信用するのは中々出来た事じゃ無いわ」
「ええ、貴方にとっては恐怖そのものでしょうしね、でも……」
「「それでも前に踏み出さないことには変わらないわよ」」
「……っ!」
その通りである。どのみちこのままでは日向は衰弱して死んでしまう。
そして、その残り時間はもう数時間も無いだろう。
そのことを理解したのか、キュウの方を見つめる。……が、やっぱり怖いのか目を逸らす。
何度もそうして迷った末に、日向はキュウの方に手を伸ばす。
彼女は今、前へ踏み出したのだ。
………………………………
………………
……
日向の治療が終わった後、病院にいる他の患者所にも向かった。
残念ながら説得する時間も無く、深夜だったのもあり眠っている全員の首元に噛みついてもらい本人達には無断でエネルギーの返却をした。
エネルギーの一部はドン・ステラが使ってしまったようだが、幸か不幸か既に死んでしまった人もいたので、エネルギーの総量的には良い感じに足りたのだ。
その後、入院していた人達は回復してきているらしい。
元々脳内麻薬のお陰で痛みを感じていたなかったようだから当の本人達はあまり変化を感じていないようだった。
そして、その後直ぐにドン・ステラの回収に向かったのだが……
「……おい、これは何の真似だ?」
「おや?どちらさまですか?貴方は」
「とぼけんな。何の真似だって言ってんだよ」
「何の真似と言われましても……そちらこそ勝手に人様の家に入ってきておきながら何をおっしゃるのですか?」
どうやってか知らないが、拘束を解いたドン・ステラは丁重に僕をもてなしてきた。
まるで記憶を無くしたように……
「お前……自分が何したか覚えてないのか?ドン・ステラ」
「ドン……ステラ?何ですかその厨二臭い名前は。鷲の名前は福島賢介ですよ」
「本名ドン・ステラじゃねえのかよ!」




