番外編(地球) ケインと魔法少女達⑩
「勿論……逃げさせてもらいましょう」
「させねえよ」
「させてもらいましょう!R型!」
「……何をするつもりだ?」
直後、キュウが不審人物の喉元に噛み付いた。
そして、噛み付かれた首元は薄く光り、この光が流れて不審人物の体を発光させる。
「ムフフフフ!美味い!良くやったぞR型!」
「キュウ!」
「おい、テメェ何をした?」
「テメェ……ではありません。そうですね、本名は言えませんが取り敢えず悪の組織の親玉ドン・ステラとでも呼んでください」
「ドン・ステラだぁ?きな臭き名前だな。いや、今はお前の名前なんてどうでも良い。何をした?」
「ムフフフ、良いでしょう。貴方達のお陰でこれだけのエネルギーを集められたのですからね。種明かしくらいして差し上げましょう」
ケインは一歩下がった。
ハッタリかもしれないが、やはりキュウとドン・ステラの正体が分からない以上警戒しないわけにはいかない。
ましてや、今は鈴菜と日奈子もいるのだ。
ケインが無茶をしたせいで2人に何かあれば……そう思い、後退りしてしまったのだ。
今回は、これが吉と出た。
発行していたドン・ステラは、いきなりエネルギーを更に凝縮した高エネルギー波を突然ケインに向けて撃ってきたのだ。
見た瞬間ケインは避ける事を考えるが、後ろには鈴菜と日奈子がいるのだ。
避けては2人が死んでしまう。
ケインは自らそのエネルギーに当たりに行ったのだった。
高エネルギー波にぶつかり、大爆発が起こる。
……が、ケインが盾となった事により他の2人は無事だった。
だが、病室は半壊しており他の部屋の患者に影響が出ていてもおかしく無い。
それだけのエネルギー波を食らったケインだったが、当の本人は以外と無事そうである。
そこそこのダメージを受けてはいるが、3秒もすれば元通りだ。
とはいえ、今のケインが回復に3秒かかったという事は、ステータス的にはケインの3分の1程度の人間には防げないという事だ。
ケインの体力や肉体硬度のステータスは10万を超えるくらいである。
という事は、逆に言うと3万程の体力や肉体硬度だと、耐えれないかもしれないのだ。
通常、地球の魔術はケインの感覚からすると1最も強い魔術でも1万程のステータスなら耐えれるという感じである。だから、威力はどう考えてもケインが地球に来てから最強クラスであった。
考えられるパターンとしては2つで、ドン・ステラがそれだけの使い手だったか、直前の行動から見るにキュウを使って何かしらのドーピングをしたかである。
というか、ぶっちゃけ九分九厘後者だと思う。
「ムフフフ、中々良い威力です。名付けるなら『スピリットカノン』……」
「おい、騙し討ちとは卑怯な事をしてくれるじゃ無いか」
「失礼しました。少々興奮してしまいましてね……」
「それがお前の秘密か?キュウを使ったパワーアップ」
「ええ。キュウには噛み付いた相手から魂のエネルギーを奪う性質があるのですよ」
魂のエネルギー……
その単語に何となくケインはガルドの事を思い出した。
恐らく、ガルドやテクストが使っていたパワーアップと同じ様なものであるが、少し違う。
ドン・ステラの言う事から察するに、自分はほぼ無条件でパワーアップし、代わりに他人の魂のエネルギーを使ってパワーアップしているのだ。
「この北海道に毒をばら撒いたのもお前か?魂のエネルギーをキュウが回収しやすくするためにな」
「正解ですムフフフ。単にキュウが噛みつきエネルギーを奪うだけでは国に奪われかねません。噛み付かれた人からの擁護の為に毒から守ってくれた救世主キュウを作り出したのですよ」
「そうか、聞きたい事は終わりだ。お前を拘束する」
「ムフフフ……1つ、良い事を教えて差しあげめしょう。キュウの唾液は回復薬なんかではありません。中毒性と快楽を与える単なる麻薬ですよ」
「な、何っ!?」
ケインが一瞬怯み、その隙にまたドン・ステラが光り出した。どうやらまた『スピリットカノン』を撃つつもりなようだ。
「クッ!同じ手を食うかよ!」
ケインは剣を抜き取って『狂化』を10%発動する準備をする。
……だが、
「ムフフフ、貴方が優しくて良かった。さらばです!」
ドン・ステラは真後ろに向けて高エネルギー波の『スピリットカノン』を撃った。
「何だと!?」
「ムフフフ、今度はあなたが騙されましたね、ケイン」
後ろに放たれた『スピリットカノン』は病室の壁をぶち抜き、夜空の遥か彼方に消えていった。
「追ってきたら……そこの娘がどうなるか分かっていますね?」
「クッ……」
ドン・ステラは壁に空いた穴から外に飛び出し逃走した。
ケイン達は取り逃してしまったのである。




