番外編(地球) ケインと魔法少女達④
「外傷は無し……死因は……毒?精神魔法?それとも未知の何かスキルか……」
失礼とは思いつつもケインは死体の状態を確認する。
見た所、北海道の気温も影響してか、腐敗などはしておらず比較的最近死んだと思われる。
家主は高齢の男性で、顔は苦しんだりはせずに死んだようで、むしろ嬉しそうな顔であった。
「って事は、寿命じゃなければゆっくり効くタイプの毒の可能性が高いな……」
正直、ケインにとっては分が悪い相手である。
回復力があるから、多少の毒なら相殺できると思うが、生憎とEランクまでのスキルに毒対策のスキルは無い。
つまり、相手の毒がケインの『回復の基本』(9999)を上回るダメージを与えてきたら?ケインのステータスならば仮に毒を喰らっても数時間は生き延びる事が出来るだろう。
だが、もしも血清などが無かったら……
「死ぬな。まさかこんな所で毒を使う奴が出てくるなんてな……」
毒を使う相手などケインの星では無数にいた。
今まで戦う事があまり無かったが、実は結構メジャーな魔物なのである。
それでもそこまで強い敵として認識されていなかったのは、あの星ではCランクから対策スキルが豊富になり、野生の魔物の毒はほとんど効かなくなるからである。
そして、高位の冒険者になると、ステータスの高さのせいで毒で喰らうダメージも少なくなるので、余程の相手でない限り警戒する必要はなかったのだ。
ケインは迷っていた。
正直、まだ相手が毒を使ってくるかどうかなど分からないのだ。
とはいえ、死因が分からず、未知の相手なのには変わりない。
そもそも、このままでは魔法少女組の3人が危ないのだ。
そう判断し、3人と合流する事を決意したケインは、家を飛び出て『狂化』を20%だけ発動する。
そして、思い切り地面を蹴り上げて上空に上がった。
ここからなら3人が何処にいるか分かるだろうと思ったケインだったが、思わぬ発見をした。
何と、ケインがいる位置よりはるか上、雲の中に何か大きな鳥の様な生物を確認したのだ。
一度『狂化』を解除して、ケインはその鳥の元まで『縮地』する。
「……なるほど、先程から感じていた殺気はお前だったか」
そこには、ワイバーンと呼称されるCランクの魔物がいた。
見た目は鳥に近いが、体の半分はドラゴンの様である。
戦闘力はそこそこ高く、ステータスは概ね4000程で、限定的だが火属性の魔法まで使ってくる。
しかも、それを手の届かない上空からやってくるのだからタチが悪い。
「……が、相手が悪かったな。僕は『縮地』が使えるんだ」
ケインはそのまま落下する勢いでワイバーンを叩き斬る。
……が、叩き斬った筈のワイバーンは何故かすぐに元通りに回復してしまった。
「何っ!?」
「グググ……グアアアアアアアア!!!!!」
「くっ!」
ワイバーンは怒ったのか火の玉をケインに吐いてきた。
ケインは難なくそれをいなしてみせた。
その後ケインとワイバーンは落下しながらの戦闘を繰り返す。
だが、問題はそれでは無い。
(何なんだ……コイツ。どうして死なない?胴体を真っ二つに斬ったんだぞ?)
ケインは落下しながら、ワイバーンの能力を探る。
……が、考えても考えても分からない。
ケインは落下しながらワイバーンからの猛攻をいなすしか出来なかった……




