番外編(地球) ケインと魔法少女達①
これはケイン達の死闘から凡そ2ヶ月前、アスタルテが地球に放った魔物をケインが退治していた時の事である……
珍しくサイクロプスというかなり強い魔物の群れと出会ったケイン。
恭弥の住む岐阜県からはかなり離れた北海道にて、強めの魔物の気配を感じて縮地してきたのだ。
サイクロプスとは、ほとんどのステータスが3万を超えるBランクの魔物だが、その脅威は群れをなす事で数段跳ね上がる。
単体でも無視する事が出来ない強さを持つ魔物だが、厄介なのは無闇矢鱈に攻撃してくるわけではなく、きちんと連携をとってくるのだ。
ケインは他対一が得意ではあるが、慣れない土地でいきなりの戦いであった為少々手こずっていた。
「クッソ!こいつら結構強い……」
「グガァァァ!!!」
攻撃特化のサイクロプスが一体……
恐らく、ステータス的には攻撃だけなら10万近くまであるはずだ。
まともに受ければケインでも痛い。
だが、攻撃特化にしたせいで防御力はザルだ。
「悪いな、縮地が使えなかったら危なかったよ」
そう言ってケインはサイクロプスの背後を取りトドメの一撃を喰らわせようとした……が、
その間に別個体のサイクロプスが入ってきた。
どうやら防御力特化の様で、ケインの全力の一撃に耐えてしまった。
「グぅウウ!!!」
「チッ、だがもう虫の息だ。先にお前から始末して……」
そう思い防御特化の個体に近づこうとしたケインを後ろから殴ってきた者がいた。
スピード特化のサイクロプスである。
咄嗟の事で気付けなかったケインはまともにダメージを喰らう。
ケインは後ろにいたサイクロプスにイライラをぶつける様に魔術を使った。
「『エアバレット』!」
サイクロプスはこの攻撃を受けたが、その自慢のスピードで急所は外れた様だ。
その隙に、先程の防御特化のサイクロプスは自己回復で回復してしまった。
「チッ、本当に厄介だな……」
ケインは最後の手段である『狂化』を使おうと思い、発動の準備をしたが……
「伏せて!そこの人!」
遠くから何者かの声が聞こえてきた。
ケインは言われた通りに伏せる。
そして、直後に頭上を光の矢が通り過ぎて行き、サイクロプスの大きな目玉に直撃した。
「グガァァァ!!!!」
「!?今だ!チャンス!」
ケインはすぐさま剣を取りサイクロプス達にトドメを刺す。
目を失って戦闘力と連携の大半を失ったサイクロプス達はケインの筋力を前にあっけなくやられてしまった。
「ふぅ……助かった。にしても一体誰が?」
光の矢が飛んできた方向を見つめると金髪の……雪国にも関わらずとんでも無く薄着の美少女がいた。
薄着とは言ったが、露出が多いわけではなく、服は何処かの国のお姫様を連想させる様な服である。
金髪美少女はケインに近づいてきて、驚いたらしく声を上げる。
「凄いわ!貴方も魔法少女なのね!」
「……?」
「貴方のラブ・パワーは一体どんな物なの?教えて教えて!」
「えっと……」
どうしようか、この状況は。
ケインが返答に困っていると、金髪の彼女の後ろから青髪の子と桃髪の子が出てくる。
「ちょっとやめなよスズナ。その子困ってるじゃん」
「そうだよー。ラブ・パワーは話したく無いって事もあるかもしれないじゃ無い」
「あ、そうね……ごめんなさい。えーっと、貴方の名前は?」
余計意味が分からなくなったが、助けてもらったのだし、ここは自己紹介くらいしておいた方が良いだろう。
「僕の名前はケインです。貴方達は?」
それに金髪の子が答えた。
「私の名前は菅谷鈴菜。こっちの青色の子が高野日向。それでこの馬鹿っぽいのが白石日奈子よ」
それに異論があったのか、桃髪の子が反論する。
「ちょっと!馬鹿っぽいって何よ!」
「貴方が馬鹿なのは事実よ」
「何よっ!、アンタだってテストの点数そんなに変わんないくせに!」
喧嘩が起きる前にとケインが再び質問をする。
「3人はここで何をしているんですか?」
「ふふふ、私達はね。魔法少女なのよ」
「魔法少女?」
「ええ、ある日突然この力に目覚めたの。3人ともね。だからここ最近悪の組織がばら撒いている悪いモンスター達をみんなの為に人知れず退治しているってわけよ」
「へー……」
何となく訳が分かってきた。
恐らくこの3人は……厨二病であると。