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外伝54話 ガルドの血




「ガルド……その名には聞き覚えがあります。たしか勇者パーティーに潜入して自ら情報を得ていたという異端的な魔王……」


「知ってるんですか?嬉しいっすね」


「But……これは一体どういう事ですか?何故ケインの体の中に貴方の精神が?そもそも貴方は死んだ筈です」


「まあ、初めは俺も信じられなかったっすよ。まさかこんな事が出来るなんてね。俺は死んだ後、何故かケインさんの中にいた。初めのうちは朦朧とした意識だったものでしたが、明確に自我が現れたのは……」


喋りかけのガルドに向かってシムは構わずダークレイを放った。


だが、そのダークレイは何故か暴発してシム自身に返ってきてしまった。


まさか自ら傷つけてしまうと思っていなかったシムは、かなりの重傷で動けなくなっていた。


シムが習得したスキルはSランク以上の上位スキルが大半である。

故に、ランクの低い回復系スキルを習得していなかったのだ。

更に、Sランクスキルの中でも特に攻撃系統のスキルのみに絞って習得していた。

最低限耐久力を上げるためにある程度は習得したが、実の所基本的な耐久力は大幅には上がっていなかったのだ。


現在のシムのステータスは筋力が凡そ1000万程。

速度は500万。

それに対して、肉体硬度は精々200万。

体力に至っては50万程である。


つまり、今のシムには攻撃が当たりさえすればそこそこダメージが入る筈なのである。


ケインが苦戦していた理由は単純にスピードに対応出来なかったからだ。


ケインはある程度被弾する事を覚悟した戦法を取っていたので、回復系のスキルは必須だったが、ほぼ被弾しない上に受けたとしても回復魔法で回復できるシムには必要ないと思われたのだ。

だが……どうやら、


尚、Aランクスキルまではステータス補正が多いが、Sランクスキルからは『攻撃した時に同じ威力の衝撃波を与える』や、『同じ魔法を連続して使うと威力が上昇していく』等追加効果の様なものになる。


だから、ステータスは『スキル重複』を持っている割にはあまり高く無いのだ。


だが、それも時間の問題で、シムが全てのスキルを習得したらステータスはほぼ全て1億を越え、回復力もケインと同等か少し上回ってしまう。そうなれば神鈴木以外は誰が相手でも勝てはしない。


そして、そうなるまでにかかる時間は一日あればお釣りが来るのだ。


だが、逆に言えば今ならまだケインやガルドでもギリギリダメージが通り、回復力も低いというわけだ。


シムは回復系のスキルを習得しなかった自分を恨み、すぐさま回復しようと魔法を唱える。


……が、


「Why!?何故回復しないのです!」


「俺の攻撃は闇属性です。そして回復魔法は光属性限定の魔法。この二つは相反する属性であるため、互いに互いの効果が大きくなってしまう。要するに回復魔法で闇属性の攻撃を回復しようとしても属性効果で邪魔されるから俺の攻撃の熟練度を上回るレベルの回復をしないと治せないというわけです」


「What……そんな馬鹿な。勇者エルナには簡単に治せたというのに……」


「ええ、俺もあの時はビックリしました。一度殺した相手を生き返らせられるなんてね。まあ、エルナさんの方が貴方より才能があったというだけですよ」


「Bud!認めません!このワタシが人間如きに劣っている等……そもそも貴方はどうして生きているのです!確かに死んだ筈ですよ!」


「だから、それは俺にもよく分からないって。全く……面倒くさいっすね。まあ、俺のケインさんの友情の力じゃ無いっすかね」


不敵に笑うその姿はケインの見た目と相まって何処かケインの様な雰囲気を感じさせる。


ガルドが魂だけ残留し、ケインに取り憑いて生き続けることができたのには理由があった。


田中が指摘した「何故惑星ジムダには日本人がガルドだけだったのか?」という疑問にも繋がるのだが、その答えはルーナ達にある。


実は、市橋瑠奈の転生の器は全てガルドの子孫だったのだ。


日本人の肉体はどうやらスキルに対する適性が高い様で、ジムダに造られたクローンの中でも市橋瑠奈の魂に耐えられる器は日本人だけだったからである。


同時に、魔王のスキルを受け止められるのもほぼ日本人ばかりだった様で、市橋瑠奈の器にされたり、『魔王』のスキルを手に入れたりしていた結果、日本人は数を減らしていき、今の時代では遂にガルドとその家族だけになってしまっていたのだ。


また、その過程で何度も市橋瑠奈の魂の器の実験をされていた結果、ガルドの血族は皆魂の操作法を無意識的に会得してしまったのだ。


結果死んだガルドは無意識のうちに自らの魂をケインの中に送り込み、つい最近ルーナの試練でケインの精神世界に引き込まれて、意識がはっきりしたというわけだ。


だが、そうとは知らないガルドとシムは本気で友情の力だと思っている。


これが、ガルドとケインにとって良く転ぶか悪く転ぶかは分からないが、ともあれケインは窮地を救われたので、事態は少し好転した。


しかし、ケインの体に魔王の力が上乗せされた今、ステータスはほぼ全て200万。

耐久力くらいしか勝ち目が無いのである。


ガルドは戦力差を埋める為にあのスキルを発動した。


「『狂化』100%」


これにより、狂化の発動率が100%まで上がり、ステータスは300万を超えた。


何故『狂化』を使っているのに暴走しないのか?

それは、スキルの使用者が正確にはケインだからである。

ケインの魂を媒体に『狂化』を発動している為、デメリットである暴走はガルドには効かない。

更に、ケインは気絶している為『狂化』の暴走も今なら起こらないのだ。


総合力ではまだまだ負けているが、これくらいの差ならばスキルや戦い方次第では逆転してもおかしくは無い。


ついでに、シムは現在重症だ。


シムは一気に追い詰められて焦っている。


だが、それはガルドにとっても同じであった……












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