外伝35話 ルーナとは
「あの星はね、すっごく簡単に言うとアタシのエゴで作ったんだよ」
「はぁ……」
「あの星が出来る前からアタシは地球で魔術やらスキルやらを使えた訳だけど、その時はだーれもアタシの言う事信じてくれなくてさ」
それはそうだろう。僕だって、実際に行くまでは地球なんて星があるとはとても信じられなかったのだから。
「実演してみせれば1番早かったんだけどさ、それだとつまらないじゃん?」
「……(何がどうつまらないのだろうか)」
「どうせなら、言葉だけで信じさせた後に真実を見せたいとアタシは思ったのさ」
「それで、信じてくれた人は居たんですか?」
「それがぜーんぜん居ないの。生まれてから15年間もの間会う人会う人に能力を見せたんだけどね?アタシの事を信じてくれた人は14年間現れなかった。でも、15年目に現れたんだよ」
「それがルーナさんですか?」
「おっ!勘がいいね。そうだよ、彼女が初めてアタシを信じてくれたの。魔術……当時は超能力って呼んでたんだけどね、彼女との馴れ初めは今でも覚えてるよ」
「何年前の話ですか?」
「1000年ちょっと前……高校に入学した時にね、アタシの隣の席だったから、挨拶代わりに『よろしく!アタシ鈴木マヒロ。超能力使えるからなんかあったら言って』って言ったんだけどね。そしたら彼女、何て返したと思う?」
「何て返したんですか?」
「『私も超能力が使えるので頼る事はないと思われます』……だってさ!」
「冷やかしって思われてそうですね」
「うん、アタシも初めはそう思ったんだけど、ならどっちの能力が上か勝負しよう!って事になって始まったんだ」
本当に嬉しそうに語る鈴木……どうやら、ルーナの事は他の亜神と違ってかなり大切にしているようだ。
「結果アタシが勝ったんだけど、その時初めて分かったんだ。ルーナとアタシの能力は似ているけど別物だって。後々になって一人一人が持っているスキルを君達の言うところのオリジナルスキルって名前に命名したんだけど、アタシのオリジナルスキルは『創造』だったんだ。このスキルは作ろうと思えば何でも作れてしまうっていう便利スキルでね。まあ上限はあるんだけど……これを使って例の星やスキルのシステムを作ったのさ」
「じゃあ!僕達のご先祖様はそのスキルによって作られた存在だったって事ですか!?」
「いやいや、違うよ。その話はまた後でするとして、ルーナのスキルはね……『作成』だった。彼女もスキルを作る能力だったんだが、アタシとは決定的に違うところがあったんだ」
「決定的に違うところ……?」
「彼女のスキルはね、制御不可能だった。スキルを自動で作り続けるスキル。例えばだけど、異時間空間を作り出して移動するスキル『次元超越』だったり、目と目が合っただけで好意を抱く様にする『寵愛の瞳』だったり、相手のスキルを封じる『無効殻』だったり……」
「それのどこが問題なんですか?」
「大問題だよ。スキルってのはウイルスと一緒でね、元々人間の体にあったものじゃ無くて病気みたいな物なんだ。だから、数千や数万なら兎も角……億を超えるスキルは人の身では耐えられないんだ。16歳の彼女は少しずつ自我を失っていき、体はボロボロになっていった……」




