第百十八話 魔王の過去3
出来ればケイン達には自分が魔王だと気付かれないままに死んでほしい。
それか自分が魔王であるとバレる前に死にたい。
しかし、スキルが自殺をさせてくれない。
このまま旅を続けたら、このパーティーならいつか魔王の元まで到達する。
その時に俺の正体がバレると思うと胸が苦しい。
俺は野外総合活動でネドリアに殺された事にして魔王城に帰る事にした。
「後どれくらいしたらこの街を制覇できるだろうか……」
「ネドリア、お前に命令をしに来た」
「!魔王様……いつの間に。何なりとご命令を」
「では、率直に言うが俺と限りなく見た目が似た人間を探してくれ。最低でも髪色と身長は同じやつを頼む。そして原型が分からないくらいにボロボロにして俺の前に差し出せ」
「……その死体をどうするのか伺っても?」
「…これより勇者パーティーを脱退する。その為に我が死んだ事にするのだ。さぁ、頼むぞ」
それからガルドは魔王城で自分の強化を続ける。
ケインとエルナ、クリフに負けられない……
魔王軍としてあちこちで活動をする様にもなった。
その度に人を殺して、殺した数だけ薄れていく罪悪感。
相反する気持ちの片方だけが無くなっていくのは自分の半分が失われていく様で、怖かった。
俺は魔王としてケイン達を殺す。
彼女達は何も知らずに死んでいってほしい。
そう願って、魔王城にて彼等の来訪を待った。
その頃にはもう理性などほとんど残ってはいなかったが………
これが魔王ガルドによって語られた彼の人生であった。
『勇者』というスキルは所持者に勇気を与えてくれる。
しかし『魔王』はそれと対照的に所持者の心を少しずつ汚していき、判断力を奪い、最後にはただの暴れる魔物になるのだ。
今いる魔物というのは、基本的に昔の魔王が作った者達の子孫……
つまり彼等も元を辿れば人間だったのだ。
だから彼等にもオリジナルスキルのような物があったのだ。
その事実にケイン達は吐きそうになる。
今まで平然と殺していた相手は人間となんら変わらない存在であったのだ………
「さあ、思い出話もこれくらいで良いっすよね?もう待ちきれないんです。始めましょう……殺し合いを!」
「ガルド……その剣を握ったらもう後戻りは出来ないぞ。今ならまだやり直せる……この手をとってくれないか?」
「……散々人類に迷惑をかけた俺が今更謝罪?……出来るわけないでしょ!大体…そんな事したら今まで死んでいった魔王軍の者達にも顔向けできない。ケインさん?ここまで来たら俺はそんな中途半端な結末は嫌です。どちらかが死ぬまでの戦い…それじゃなきゃダメなんです!」
「ガルド……そうだな。僕は一度お前が死んだと思っている。どうせもう一度殺すならこの手で殺してやるよ!」
こうして始まった。
小さな街から始まった少女の魔王討伐の冒険。
その最後の戦いが!
あんまこう言うの良くないかもだけど、伏線になってたのは
・ガルドが闇属性魔法を使える。
・テクストに勇者を操ったな?とか聞いた時に疑問に感じていた事。
・第七十四話のタイトル「黒いチューリップ」の花言葉は私を忘れて。ガルドの心情を表していた。
他にもあった様な気がしますが大まかに言うとこんな感じです。




