第百十一話 容疑者
「いました!あそこです!」
「了解!」
マッドマッドを見つけた僕達は不意打ちを仕掛けようとする。人型だが、その体はヘドロで出来ているようだ。
実の所言うと、クリフの空気操作で空気中の毒も無効化できるのだが、それでは楽勝になってしまうので、訓練がわりにクリフは手伝わないことにした。
「じゃあ、僕の修行の成果を見せてやろうかな」
「ではお願いします」
エルナはマッドマッドの事を舐めていた。
ぶっちゃけ大して苦戦せず勝てるだろうと、
事実、それだけ……いやそれ以上に今のケイン達は強かった。
しかし、エルナの予想は外れる。
「喰らえっ!」
ケインが何気無い一撃のように放ったその技はエルナの目を持ってしてもギリギリ見えるかどうかというところだ。
何回斬られたのか分からないほどにバラバラになったマッドマッドは、とても悔しそうな目をしていた。
苦戦せずに勝てるどころではない、圧勝だった。
もはやそれは戦いとも言えぬほどに………
そのあまりの強さにエルナは軽く恐怖を覚えた。
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………………
……
宿に戻った僕達は魔王の討伐について話し合う。
まず初めにどうやって行くかについてだが、
「僕達は一度あそこに行っている。テクストを倒しに行った時にね」
「そうですね。では縮地で向かいますか?」
エルナの言葉に頷こうとした時に今度はクリフが発言する。
「でも…向こうも何らかの対策をとってくると思いますよ?だってどう考えても王都が支配されてから僕達が魔王城に着くまで早過ぎました。きっと何か特別な魔法で転移してきたに違いないと思って転移先に罠を仕掛けるかもですよ?」
「……それもそうかもな。じゃあ魔王城に直接縮地じゃなくて、近くに縮地するとしようか。今日はこれで解散!明日になったら出発しようぜ」
「……あの、提案が一つ。今日はもう遅いので無理ですが、攻めるのは明日の夜にしませんか?」
「どうして?」
「特に深い理由があるわけでもないのですが夜中なら魔王軍の連中も寝静まっているはずです。不意をつくには丁度良いかと」
「ああ……なるほどね。よし!なら明日の夜に出発するとして、今日はもう寝よう」
話し合いを終えて、明日は準備をするので早めに寝ることにした。
翌朝になって、宿から出ようとした時、僕達の部屋に来たのはクウガさんだった。
「あ!クウガさん、お久しぶりです。こんな所まで来て何かあったんですか?」
「……今の僕は第六騎士団隊長クウガバークだ。君は今少女誘拐事件の容疑者として疑われている。騎士団支部に来てもらおう」




