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シーロとこちらの恋愛事情  作者: 夕月萌留
9/11

嫌なこと

 シーロが持ってきたアイマスクを装着したとたん、ヨミの目の前には見慣れた自宅のリビングの景色が現れた。レイアウトや室内の装飾、家具などは今と全然変わりない。しかし、そこを眺めている視点がおかしかった。ヨミは天井から部屋全体を俯瞰するように見ていた。そして、ソファーになぜか耕也が座っていて、キッチンには料理を作っている理由がいた。

「できたよ。今日は野菜たっぷり栄養満点の特製シチューです」

「おお、うまそう。さっそく、食べてもいい?」

「どうぞ、召し上がれ」

 耕也は理由が作ったシチューをスプーンですくって口に運んだ。理由はその様子をじーっと観察している。

「ふっ、ふぅ~、はう。ん……はふ……んまい!」

「はぁ~、よかったぁ」

 ほっとした表情を浮かべた後、理由は満面の笑みを見せた。

「さっすが、理由の作る料理はどれもうまいなぁ。うますぎていくらでも食べられそうだ。おかわりある?」

「うん。ちょっと多めに作っておいたから、どんどん食べてね。わたしも一緒に食べよ」

 それから二人は楽しそうに談笑しながら食事をしていて、ヨミはその様子を上から見下ろすかたちで見ていた。時おり思わず話しかけそうになることもあったが、声を出そうとしても喉に力が入らず喋ることができなかった。二人のほうはヨミに全く気がついていないようだった。どうやら二人にはヨミのことが見えていないらしい。

「ふぅ~、食べた食べた。マジで美味しかったよ。ごちそうさま、理由」

「お粗末さまでした。じゃあ、食器片付けるね」

 理由は食器を台所に下げて洗い物を始めた。終始ご機嫌といった感じで、鼻歌交じりに手際よく食器を洗っていく。すると、ソファーに座っていた耕也が立ち上がって理由のところへ近寄っていった。

「ちょ、ちょっと耕也さん。ダメだって……」

 耕也は理由の背後に立つと、理由の腰に腕を回して抱きつくような格好になった。

「やっぱり、俺の思ったとおりだ。俺、昔言ってただろ? 理由はいい嫁さんになるって」

「え~、そうだっけ?」

「そうだよ。理由、いい匂い……」

「やっ、ちょっと……耕也さん……今食器洗って……あ……」

 耕也は理由を自分のほうへ振り向かせると、そのまま理由にキスをした。理由も特に抵抗することなく、そのまま耕也に身を委ねている。

「好きだよ。理由、愛してる」

「耕也さん……あたしも……」

 耕也を見つめる理由は今までヨミが見たことのない表情をしていた。その両頬は朱に染まり、屈託のない微笑みはとても幸せそうなものだった

 そんな二人の様子を見せつけられて、ヨミはこれまでに感じたことのない気持ちに襲われていた。

 

 ドクンッ ドクンッ ドクンッ ドクンッ


 自分の鼓動の音が聞こえる。


 ズキッ ズキッ ズキッ


 鼓動の音と一緒に胸に痛みが走る。きゅうっと、胸が締め付けられるようなそんな感覚。


 痛い、悲しい、寂しい、苦しい、辛い。


 そんな負の感情が雪崩のようにヨミの心を飲み込んでいった。嫌だもう見たくないと思った。こんな気持ちを味わうのは初めてだった。どうしてこんな気持ちになったのか、ヨミにもその意味は理解できた。とにかく、理由のあんな姿は二度と見たくなかった。もう止めてくれと心の底から願ったとき、突然その景色は消え去り、ヨミは元居た場所――リビングのソファーの上に戻っていた。

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