シーロとこちらの
シーロ――シーラ・アクアリア・メロ・ディーヴァ・リラ・シグナール・ミユ・マンデス。彼女の国は深刻な人口減少に陥っており危機的状況にある。彼女のいた世界ではいつからか男性に関心を持たない女性が増えていった。それは同性愛というものとは違う。同性の友人同士の関係を最も重視し、恋愛を含む異性との関係に無関心なそういう種類の人たちが現れ出した。一方では男性が一人を好むようになり、女性を振り向かせるコミュニケーション能力を序々に失っていった。それらの相互作用によって、カップルや夫婦といったペアを作る男女は激減し、必然的に出生率も急激に低下していった。人口の減少が進むにつれて人の生活圏は狭まっていった。沢山あった国々は次々と併合されていき、やがて全ての国は一つに統合された。人は世界のごく狭い地域でのみ活動するようになり、民族の区別というものはなくなっていた。
人類の消滅という言葉が現実味を帯びてきた頃、それを打開するためのプロジェクトが立ち上がった。恋愛という概念がまだ普通に存在している世界の男女を観察し、その生態を調べ、子孫繁栄への新しい道を模索する研究が始まった。シーロはそのプロジェクトチームの一員であり、この世界の男女が有する恋愛感情について調べるためにこちらへやってきた。プロジェクトチームの優秀なメンバーであるシーロは、早速一つのサンプルデータを手に入れて研究所に送信した。
彼女の進む道は大変厳しく険しいものだ。研究を進めるためには膨大な量のデータを手に入れる必要がある。シーロの仕事はまだ始まったばかりだ。これから先もっと沢山の人々と出会い、コミュニケーションをとって様々なパターンのデータを収集する必要がある。彼女の国の命運は彼女自身の仕事のパフォーマンスと、こちらの世界の恋愛事情にかかっている。
―― 完 ――




