表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅人剣士の異世界冒険記   作者: うみの ふかひれ
第二章 魔法の国ロクターン
66/100

第二十七話『カーナの迷宮③』

 七人はその後、再びモンスターと戦っていた。


「くそっ!」


 テラルは悪態をついてその場から離れる。この山岳地帯、一本道なのでモンスターを索敵して避けようとしても避けることができないのだ。


 故に、こんなことになる。


 そこにいたのは、ティラノサウルスのような姿をしたモンスターだった。その体躯は巨大であり、坂道の下にいて高所の有利があるのはこちらなのに、七人は苦戦を強いられていた。


 ドシンと、足音を立てた直後、その体からは想像できないほどの高さまで跳躍したティラノサウルスは、空中で回転しながらこちらにその尻尾を振り下ろしてくる。


 その衝撃で道が割れた。七人は何とか避けたが、ティラノサウルスはすぐに体制を立て直して、鳴き声を上げた。


「ガァァァァァァッ!!」


 道は狭い。七人で横に広がりながら歩くのがギリギリの足場で戦わざるを得なくなった。修也は無意識にリリーの方に視線を向ける。


「戦うしかねぇ! 後退しながらこいつを倒すぞ!」

 

 テラルの声が聞こえて、修也はその方向を向いた。

 

 そして無言で頷くと、修也は錬剣を抜いた。他の六人は遅れてそれぞれの武器を持つ。


 修也が片手で錬剣の柄を強く握りしめた直後、ティラノサウルスがこちらに向かって走ってくる。近づいてくるにつれて、七人の緊張感は増していく。


 ドシン! と、足音が目の前に来た瞬間、修也は上に跳んで、ティラノサウルスの頭蓋に錬剣を袈裟がけに振り下ろす。


 だが、それはあっさりと受け止められる。皮膚が硬いのか、それとも頭蓋が硬いのかは知らないが、修也の錬剣の刃が通らなかった。


「くっそ!」


 錬剣を弾かれて、修也は元いた場所に戻る。左手を地面について、右手で錬剣を持った修也は、六人の次の行動を見守る。


「ハァッ!」


 次にティラノサウルスに斬りかかったのは、ヘリヤだった。彼女はティラノサウルスの足に魔力を込めた剣を振り下ろす。ヘリヤの剣はティラノサウルスの足に多少めり込んだが、すぐに刃が止まった。


 ティラノサウルスは、ヘリヤの剣がめり込んでいる足を振りあげる。ヘリヤはそれで後方に飛ばされたが、幸いにも、平らな道がある所にヘリヤは落ちる。

   

 その後、ティラノサウルスはその尻尾を振り回して、七人を下に落とそうとした。全員がそれを跳んで避けると、このモンスターは息を吐いた。


 魔法使いの三人は、修也たちのような身体能力は無いと思っていたが、どうやらそうではないらしい。たまたま物理攻撃じゃなく、魔法攻撃を攻撃手段としただけの違いのようだ。


 着地して、その直後にテラルは駆ける。槍を弓のように引き絞った後に、テラルは槍をティラノサウルスに突き刺した。


 ここで驚いたのは、槍がティラノサウルスの足を貫通したこと。どうやら、一点集中の攻撃が、あのティラノサウルスには有効らしい。


 自分の足に穴が空いたことに驚いているのか、ティラノサウルスはテラルが槍を引き抜いた直後に離れた。そのままティラノサウルスは修也たちに視線を向ける。


 その間に、リリーは全員に聞こえる音量で言った。


「テラルの突き攻撃を、あのモンスターの首に打ち込ませましょう。モンスターの生体は未だに解明されてないけど、他の生物と同じで死ぬような傷を負えば、あのモンスターも死ぬはずよ」


 その言葉を聞いて、修也はリリーに質問する。


「でも、そんな隙なんてなさそうですよ? どうやって隙を作りますか」


「それはほら、テラル以外の私たちでどうにかするしかないじゃない?」


 とにかく攻撃を仕掛けようということになったので、七人はそれぞれの役割を果たそうと動き始めた。


 止まっているティラノサウルスに突っ込んでいったのは、キサイだった。片手で持ったロングソードを、キサイは振り下ろす。


 すると、ヘリヤが斬った所にロングソードを振り下ろしたからか、ティラノサウルスは明らかに苦しそうな声を上げた。それを確認すると、キサイはすぐにその場を離れる。


「ガァッ!」


 ティラノサウルスはそんな声を上げて、頭を使って攻撃した。要は頭突きである。次に攻撃しようとしていたヘリヤは、それを剣で受けた。


 修也はそれを見て走り出す。上に跳んで錬剣に魔力を込め、《魔力物質化》を使った。ティラノサウルスの胴体に、青白い光の剣を振り下ろす。


 だがそれは、ティラノサウルスの皮膚を多少抉っただけ。振り抜いて、光の剣を振り下ろした所を見ると、肉の断面が多少見えただけだった。


 ティラノサウルスの後ろに着地して、そのまま様子を見る。二人の攻撃を受けてもなお、ティラノサウルスに隙が生まれることはない。テラルは攻撃しようか迷っている。


 それを見て再び攻撃しようと思ったが、その前にゾーンがティラノサウルスに魔法を放つ。


 氷がティラノサウルスの足に迫り、そして凍らせる。地面に接合された足は、ティラノサウルスの動きを止めていた。


 間髪入れずに魔法を放ったのはエンジュだった。火の槍がティラノサウルスの顔面に何発も放たれた。着弾地点に爆発が起こり、ティラノサウルスの顔面を焼き焦がす。


「テラル!」


「すまん、みんな!」


 リリーがテラルの名前を呼んで、その直後にテラルの声が聞こえ、走っているような音が聞こえる。修也の視線はティラノサウルスの体に遮られて、向こう側がよく見えない。


 ティラノサウルスは、凍らされている足を何とかして動かそうとしているようだったが、上手く行っていない。テラルがだんだんと迫っていく間にも、ティラノサウルスは藻掻いていた。

 

 そして、ティラノサウルスは迫っていくテラルに気づく。


「ガァッ!!」


 そんな声を上げて、ティラノサウルスはテラルに噛み付こうと、口を開いてテラルに頭を近づけた。


 テラルはそれを見ると、上に跳んだ。ティラノサウルスの頭がテラルのすぐ下を通り、それによって起こる空気の流れがこちらにまで届いてくる。


「おおッ!」


 そして、自由落下の勢いを利用して、ティラノサウルスの首を一突き。穂先をティラノサウルスのうなじに指すと、テラルは《魔力物質化》を使った。


 槍の穂先を突き刺している部分が青白く光り――爆発する。修也は目を閉じてその光を見ないようにする。


 再び目を開けると、そこには首を吹き飛ばされたティラノサウルスと、その上に乗っているテラルの姿が目に入る。その直後、ティラノサウルスの体が光に包まれて、魔石に変わっていた。


 その場を静寂が支配した直後、全員がこの結果に喜ぶ。


「いよっしゃぁ! 見たかみんな、俺の槍捌きをよ!」


「見た見た! 流石うちらのパーティのリーダーを担当することになってる人!」


 テラルとエンジュは、そんな事を話し、


「や、やりましたね、シュウヤさん」


「そうだな、良かった良かった。あとなんで敬語? タメ口で良くない?」


 修也とキサイはそんな事を話している。


 すると、リリーが二回ほど手を叩いたので、全員がリリーの方を向いた。


「倒したのを喜んでないで、先に進むわよ」


 その言葉に、ここにいる六人は無言で頷いた後に歩き始めた。

 

 


 


 


 

 

読んでくださって誠にありがとうございます。良ければ感想、ブックマーク、ポイント等を入れてくれると嬉しいです。作者のモチベーションになるので……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ