第十七話『臨時パーティ』
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その後、修也、ヘリヤ、リリーは、四人の人物――パーティと向き合っていた。
先程の戦闘のお礼と、この後どうするかの話し合いをしよう、という向こうのパーティのリーダーの要望があってこんな状況になっている。
「いや、さっきはありがとうよ。お前らが来てくれなかったら死んでたぜ」
親しげにそう話しかけてくるのは、茶色い髪で、なぜか頭以外に青色の全身鎧を着た槍使いの男性だった。戦闘中にも思っていたが、そこまで着るなら頭にも何か着用しろと思う。
修也は男性に返事をした。
「こちらこそ、あなたがたがいなかったら死んでた所でしたよ。まさかボスモンスターが出てくるとは思いませんでした」
「だよなぁ、ボスモンスターの情報なんて今までなかったし……なんでボスモンスターがでてきたんだろうな」
「よく分かりませんね――所で、名前を教えてくれませんか?」
修也がそういった途端、向こうのパーティの残りのメンバーがこちらに集まってきていた。その中にはこちらのメンバーであるリリーとヘリヤがいる。
リリーは上機嫌な様子でこちらに話しかけてきた。
「ねぇシュウヤ、この人たちと一緒に迷宮探索することになったんだけど、良いわよね?」
「はい?」
目を見開いて、修也はその言葉に固まった。向こうの槍使いの男性も同じような事を魔法使いの女性に言われたようで、修也と同じく固まっている。
「いやいやいや、ちょっと待てよ! リーダーも交えてそういう事決めろや!」
「でも良いじゃない、さっき一緒に戦ってくれたんだし、実力は折り紙付きよ?」
「いや、いいんだよ? 俺は良いんだけど、向こうの人たちは……」
槍使いの男性がそう言いかけた直後、ヘリヤとリリーは同時に言う。
「「あ、大丈夫でーす」」
「大丈夫なのかよ!」
そうツッコミを入れた槍使いの男性は、そう言った後にため息をついた。
うん、その気持ちは凄く分かる。
ヘリヤとリリーは勝手に決めてしまったし、向こうの槍使いの男性も、一緒に迷宮を探索することに賛成してしまっている。この場で何も返事をしていないのは修也だけだ。
そう思い立ったものの、修也はどうするかを決めかねていた。向こうのパーティの人たちは、果たして信用に値するのだろうか、という疑問が頭を持ち上げたからである。
会ったばかりの人たちを信用するのはどうかと思うが――女性陣の意見に、修也は賛成することにした。
「まあ、いいんじゃないですかね。特に異論はありません。それに、こういう時に男性は弱いですし」
「全く同意見だな」
そう話しかけてくるのは、向こうのパーティの魔法使いの男性。黒いロープを着て、無愛想なのが特徴だ。彼は、槍使いの男性に話しかけている。
「折れるべきなのはこちら側だし、実際に得る物も多い。戦力の増加だぞ。こちら側の目的と、向こう側の目的は一致している」
「……最深部に行く、か。仕方ねぇよな」
槍使いの男性は呟いて、何度も頷いた後に、修也たちを見た。
「ほら、全員集合! 軽い自己紹介の後に、また迷宮探索をするぞ!」
槍使いの男性がそう言うと、ヘリヤと話していた向こうのパーティの二人はこちらに寄ってきた。リリーは元から修也の近くにいたので、これで全員集合ということになる。
全員が集まった所で、槍使いの男性は自己紹介を始めた。
「んじゃ、まずは俺からだな。俺の名前はテラル=カラコム、見ての通り槍使いで、四人パーティのリーダーだ。ちなみに、パーティの名前はまだ決めてないぜ、よろしく」
パチパチパチと、十秒間ほどテラル以外の六人は拍手をした。拍手が収まると、今度はヘリヤが自己紹介をする。
「私の名前はヘリヤ=エルルーン、剣使いで、ノトス帝国から武者修行に来た身だ。よろしく」
パチパチパチと、六人が再び拍手をした後に、今度は向こうのパーティの魔法使いの女性が自己紹介をした。
「私の名前はエンジュ=ペストル。見ての通り魔法使いで、パーティの後方支援役を担当してまーす。よろしく!」
エンジュは、修也の苦手なタイプの女性だ。なんとなくそんな事を察しつつ、拍手をした。誰も名乗りを上げないので、今度は修也が自己紹介をする。
「俺の名前は早川修也。剣使いで、旅の途中にロクターン公国に立ち寄って、五大迷宮を攻略してやろうと思ったからここに来ました。今後ともよろしく」
修也が自己紹介をすると、六人は拍手をした。今更だが拍手をされると少しだけ緊張する。一礼をした後に、修也は一歩引いた。
今度は、向こうのパーティの一人、剣使いの女性が自己紹介をする。
「私は、えっと、キサイ=チェイドっていいます。剣使いです。よろしくお願いします」
この自己紹介を聞いて、キサイの印象がガラリと変わった。戦闘中の鬼神の如き振る舞いは微塵も見られない。戦闘中は性格が変わるのか?
そんなことを思いながら、修也を含む六人は拍手をした。その後に、向こうのパーティの魔法使いの男性が自己紹介をする。
「僕の名前はゾーン=ソフトライム。このパーティで後方支援を担当している。よろしく」
六人が拍手をした後、最後の人物――リリーが自己紹介をした。
「私はリリー=ロクターン。シュウヤとヘリヤに同行して――」
「ちょっと待って、ロクターン?」
そう言ったのはエンジュだった。エンジュの反応を見て、修也は遅れて気づく。
ロクターンという性は、ロクターン公国でもトップの一族しか名乗ることができないものだ。それをリリーは名乗った。ちょっとまずいかもしれない。
修也がそんなことを考えている間にも、事態は進行していく。
「ええ、私はロクターン公国の姫です」
リリーがそう言うと、途端に向こうのパーティの四人は騒ぎ出す。
「何で、ロクターン公国の公女が、こんな生き地獄にいるの? ねぇシュウヤ!」
エンジュは、そう言って修也の肩を掴んでくる。そのままグワングワンと揺らしてくるので、修也はリリーの事情を説明した。
「姫様は、五大迷宮の最深部にあるとかいう、魔の力に興味があるんだとよ。だから俺たちについてきてるんだ」
「何それ何それ! 運命的じゃない? 私たちが出会ったのも、リリー様の運命なんじゃない!?」
「何言ってんだよ、エンジュ。少し落ち着け」
「てか、何で私には敬語で、ヘリヤとリリー様にはタメ口で話すのよ」
「そりゃあ、ヘリヤさんには出会った時に敬語使ったから、未だにその癖が抜けきらないからだし、姫様は身分が違うからな」
修也とエンジュが話していると、テラルが二人の間に入ってきた。
「落ち着けよエンジュ。とにかく、これで自己紹介は済んだんだ。さっさと探索を再開しようぜ」
「……まあ、テラルがそう言うなら」
「あとシュウヤ、こいつのテンションの高さには疲れるだろうが、どうしようもなくなったら俺を頼れ」
「分かった」
凄いな、これがリーダーシップというやつか。あれほど騒いでいたエンジュが急に大人しくなったし、テラルの言葉にはどことなく力があった。
修也はそんな事を思いながら、リリーをチラッと見た。口をパクパクと動かしているのが見えて、修也は首を傾げた。その後、すぐに前を見る。
「じゃあ、行くぞ! お前ら!」
テラルがそう言って、六人は、
「「「「「「おお!!」」」」」」
そう返事をして、歩き始めた。
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