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旅人剣士の異世界冒険記   作者: うみの ふかひれ
第一章 冒険の始まり
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第十九話『一ヶ月後①』

少しペースが速いかもしれませんが、前の話から一ヶ月を経過させました。このままだと起承転結の承から物語が進まない為です。ここから転に入っていきます。

 ――この世界に来てから、一ヶ月が経過した。


 その間なにをしていたのかといえば、クルトと狩りに出かけたり、自己流の剣術を模索したり、迷宮に行ったりと、それなりに充実した時間を過ごすことができたと思う。


 特に、自己流の剣術の模索に関しては大きな成果を挙げられたと言っていい。動きのパターンを決めて、一つ一つの動きを繋げる。そんなことをずっと繰り返し、迷宮のモンスターで実践的な剣術を作り上げた。


 まあ、たった一ヶ月で作ったので、どうしても付け焼き刃感が否めないが、そこはこれからどうにかするしかないだろう。


 と、いうわけで、異世界に来てから36日目。


 この日、修也は23回目の迷宮探索に挑もうとしていた。


 ★★★

 

 この世界とは、全く別の世界に来たような感覚。23回目になると、この感覚も慣れたものだ。そんなことを思いながら、修也は迷宮の中を歩いていた。


 アカゲラの村の名もなき迷宮に来たのは、今までに35回。それほど迷宮に挑んで、分かったことがある。

  

 始めての迷宮探索の時の迷宮のモンスターの少なさは、先行していたエドワードが原因だったのだ。エドワードが迷宮の第一層のモンスターを皆殺しにしたのだと、本人がそう言っていた。


 今の装備は、軽鎧に革製のガントレットにブーツ。背には小さめのバッグを背負い、その中には水筒と携行食。腰にはショートソードと革袋を吊るしている。


 そして、今のモンスターとの遭遇率はというと……。


「グギャッ!」


 数分に一度遭遇するほどだ。


 修也は向かってくるゴブリンを何度も斬りつける。今ではこの作業も慣れたものだった。

 

 ゴブリンの右肩目掛けてショートソードを振り下ろし、振り上げて、最後に左肩から右の脇腹にかけて振り下ろす。何度も繰り返した動作を、修也は繰り出した。


 ゴブリンは光の粒となって消えた。


 その場に転がっている魔石を拾い上げて袋に入れる。そのまま歩き始めると、またモンスターが向かってくる。ゴブリンだ。


 修也はゴブリン目掛けて剣を振り下ろした。ゴブリンはその手に持つ短剣で受けようとするが、修也の剣は、ゴブリンの手首をあっさりと切断した後、その胴体を深く抉った。


 ゴブリンの胴体に裂傷が走り、ゴブリンは光の粒になった。カラン、と音を立てて魔石が転がる。


 地面に転がる魔石を拾おうとした途端、視界の端に鈍色の光が見えた。剣を逆手に持って、修也は飛んできた矢を切り払った。


 矢の飛んできた方向を見ると、矢を構えたゴブリンが次の矢をつがえているのが見えた。


 修也は姿勢を立て直して、ゴブリンに向って走り出す。走り出した瞬間に、ゴブリンは矢を放った。強化した動体視力で矢の動きは見えている。


 放たれた矢を掴んで地面に放っておく。ゴブリンは矢をつがえて第三射を放とうとしたが、その前に修也はゴブリンの首を斬り落とした。


 ゴブリンは光の粒となって消えた。剣を鞘に収めて、先程の魔石と目の前に転がる魔石を袋の中に入れると、修也は先に進む。


 この迷宮は、相変わらず迷路のような構造になっている。まあ、一ヶ月で第一層の構造は覚えてしまったので、この地形は修也にとってなんの意味も成さないが。

  

 コツコツコツと、修也の足音だけが周りに響き渡り、遠くでモンスターの鳴き声が聞こえる。周りの音といったらそれくらいだ。


 見慣れた岩を見つけた。ここを曲がると第二層に続く階段が見えるのだ。難なくそこに着いていざ曲がろうとしたその時、曲がり角から骨の手が見えた。スケルトンだ。


 修也は右手で素早く剣を抜き、スケルトンの胴体を斬った。やけにあっさり行けたと思ったら、どうやら突然現れた修也に対応できなかったようだ。


 自分の動体視力と反応速度に感謝しつつ、修也は転がる魔石を袋に入れて、第二層に続く階段を目指した。

 

 真っ直ぐに続く通路には誰もいない。修也は第二層に続く階段の前に着くと、そのまま階段を降りた。


 さて、ここからが問題だ。


 第二層も同じく迷路のような構造で、その道を修也はまだ全て通っていない。第三層に続く階段までのルートは覚えているが、最短とは言い難いだろう。


 今日はいつもとは違う道を行こうと、修也は覚えのない道を進んだ。第二層も同じく洞窟のような感じで、同じような光景が続くと、道を覚えるのに苦労する。


 そんなことを思っていると、ズン……ズン……と覚えのある足音が聞こえた。曲がり角の先から聞こえる。修也は曲がり角の壁に背を付けて、そっと向こう側を見た。


 醜悪な外見、そしてその巨体。アルデス山脈でも見たトロールだ。その手には巨大な棍棒を持っている。

 

 修也は剣に魔力を込めて、トロールに向かって走り出した。トロールも修也の存在に気づいたようで、こちらに向かって走り出した。

 

 両者武器の間合いに入ると、先にトロールがその棍棒を振り下ろしてきた。当たれば即死。避ければいいのだが、あいにくとそんな暇がないほど速く振り下ろしてくる。


「ッ!」


 修也は気合を上げて、トロールの持つ棍棒を、根本から切断した。下から斬り上げたので、棍棒の大部分が宙を舞う。


 まだ剣に魔力が込められている内に、修也は体に染み付いた剣技を繰り出した。決まった向きに、決まった力で、トロールの胴体に裂傷を作っていく。


 10回ほどトロールを斬った後、修也は跳んでその頭を割った。人間なら鮮血が吹き出るのだろうが、トロールは光の粒となって消えてしまった。

 

 ゴロンと、魔石が転がる。その魔石は一層で手に入る魔石とはサイズが違い、一層の魔石が小石だとすると、二層の魔石はその2倍のサイズだ。


「ふぅ」


 修也は鞘に剣を収めて魔石を拾った。その魔石を袋の中にいれると、修也は先に進む。


 通路を進むと、また分かれ道だ。2つの道の内、一つを選ばなければならない。


「こういう時は……」


 修也は、右の道を進んだ。


 特に今までと変わらない光景だった。曲がりくねった道にの先には、また分かれ道があるのだろう。


 そんなことを思っていると、向こう側から何かが迫ってくるような感じがした。鞘から剣を抜いて、立ち止まる。


 向こうから現れたのは、青い体毛を持った、イノシシ型のモンスター。見慣れない姿だった。


 イノシシ型のモンスターは、修也に向かって突っ込んでくる。すごい勢いだ。あれに突進されたらただでは済むまい。ポーション一本は使う羽目になる。

 

 修也は近づいてくるイノシシ型のモンスターが、目の前に来た瞬間に上に飛んだ。何とか避けられたが、修也が着地した頃には、イノシシ型のモンスターは、もう一度突撃の体制をとっていた。


「ピギッ!」


 そんな声を上げて、イノシシ型のモンスターは再び突っ込んでくる。次は避けるのではなく迎撃を。そんなことを思い、修也は剣に魔力を込める。


 こちらに迫ってくるイノシシ目掛けて、修也は剣を振り下ろした。剣に込められた魔力は下に行き、そのまま衝撃波としてイノシシ型のモンスターに直撃した。


 バギッ! と骨が折れる音がした。イノシシ型のモンスターは宙を舞い、そのまま光の粒となって消えてしまった。


「……ふぅ」


 同種の個体が向こうから来ることはなかった。修也は安心して地面に転がる魔石を拾い、袋に入れた。袋の容量はまだまだ余っている。


 修也は、また通路を進む。


 だが、何故かモンスターが修也に襲いかかってこない。その事を疑問に思いつつも、修也は先に進んだ。


 ――しばらくして、第三層に続く階段が現れた。


 修也は階段の前で立ち止まったが、次の瞬間には第三層に続く階段を降りていた。


 まだ、迷宮探索は続く。

 


 


 

 


 


 


 

読んでくださって誠にありがとうございます。良ければ感想、ブックマーク、ポイント等を入れてくれると嬉しいです。作者のモチベーションになるので……

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