第十三話『アルデス山脈②』
それからすぐに、モンスターと遭遇した。
というか、向こうから向かってきた。殺られた狼の断末魔でも聞きつけたのだろう。
「ッ!」
現れたのは狼の群れ。数十匹の数の暴力により、修也は走りながら戦わざるを得なかった。
5回ほどがむしゃらに斬って、1匹の狼を倒す。それを見た狼たちの攻めが更に激しくなる。
1匹の狼が修也のガントレットに噛み付いてきた。圧迫感が修也の腕を襲うが、逆手に持った剣で何度も突き刺したら、狼は光の粒となって消えた。
だが、噛みつかれた際に足を止めたのが悪かったのか、一度に10匹の狼が襲いかかってくる。
剣に魔力を込めて振り下ろす。魔力が地面に行って、衝撃波となって狼に襲いかかった。
修也の見る限りでは、衝撃波は2回ほど放たれた。同じ場所にではなく、一度目の衝撃波が放たれた場所から少し離れたところに。結果として、全ての狼を吹き飛ばし、その全てが魔石になった。
「ぐっ……」
だがその反動で、体内の魔力が多く消費された。
周囲の魔力を取り込むために、第2の心臓の鼓動を止める。その間僅か3秒ほど。次の狼が向かってくる時には満杯になっており、身体能力を強化すると、狼の脳天に剣を叩きつけた。
「グラッ!」
断末魔を上げて、狼は光の粒になった。
それを確認すると、またすぐに走り出す。
「あと……何体だ」
後ろを振り返り、数を確認する。
残りは……およそ50匹。
まだまだ戦闘は続きそうだ。
「よっと!」
途中にあった岩の壁を乗り越える。壁の上に着地すると、その後またすぐに走り出す。後ろで狼が岩の壁を上ってくるのが見えた。
「ッ!」
前方に、人型のモンスターが見えた。緑色の肌。ゴブリンだ。
「グキャッ!」
ゴブリンは修也の姿を認めると、鳴き声を上げてこちらに向かってくる。
だが、度重なる戦闘で鍛えられた修也にゴブリンは雑魚でしかなかった。
「邪魔だ!」
ゴブリンが剣を振る前に、ゴブリンの手首を斬り落とし、それから首を斬った。魔石になるのを確認した後に、また走り出す。
すると、狼が数匹追いついてきた。走った勢いでそのまま襲いかかってくる。
「ッ!」
前方の1体に剣を振り下ろす。勢いが止まった途端、修也は左右から交互に剣を振り続けた。あっさりと狼は魔石になる。
向かってくる2体の内、1体を蹴って吹き飛ばし、もう1体を斬り上げた剣で飛ばした。しばらくは動けまい。
遠くから、あの狼たちの鳴き声が聞こえる。
また修也は走り出した。
だが、目の前に巨大な熊が立ちはだかる。モンスターだ。
何かされる前に、修也は剣に魔力を込めてそのまま剣を何度も振るうと、何故か剣は熊の肉をあっさりと切断した。
また、体内から魔力が失われる。
「魔力は……剣に込めると……剣の、切れ味を上げるのか」
息を切らしながらそう言った直後、狼がまた数匹襲いかかってくる。
剣に魔力を込めて、衝撃波を放つ。下から突き上げられて、狼達は断末魔を上げた後に魔石になった。
衝撃波を放つ上で、1つ分かった事がある。
大事なのはイメージだ。元は衝撃波ではなく体内の魔力なのだから、操作できるのは当然。もっと明確にイメージできれば、更にその威力を上げる事だろう。
「……まだいるのか」
そう呟いて、剣を構える。
また走るのになんの支障もないが、ここで迎え撃つことにしたのだ。
狼達が向かってくる
その内の1匹が飛びかかってきた。それを避けて、無防備な背を何度も斬りつけた。光の粒になるのと同時に、もう2体がまた飛びかかってくる。
高く跳んで避けると、1体の狼に剣を突き刺した。剣には魔力を込めていたのであっさりとその肉を貫通させた。
すぐ側にいる狼に向かい剣を振る。修也のイメージ通りに狼の下から衝撃波が発生して、狼が舞い上がる。そのまま魔石になったのを確認せずに、修也は大量の狼に向かって突撃した。
「おおおおおおッ!!」
狼も、修也に向かって突撃してくる。
修也は目の前に迫る狼を躱して腹を斬った。その後首に刃を落として狼を魔石に変える。
2体の狼の突進をくらって、修也は後退する。その後すぐに剣に魔力を込めて、衝撃波を飛ばした。数体の狼が衝撃波にやられてその姿を魔石に変えた。
囲むようして狼が迫る。全方位から狼が飛びかかってきたので、再び剣に魔力を込めて、修也はその場で回転した。6体の狼が魔石に変わる。
剣に込めた魔力を衝撃波に変えて放つ。前方の数匹が舞い上がってその姿を魔石に変えた。
その直後、1体の狼が空中で回転し、その尻尾を武器として振り下ろした。
左腕を覆うガントレットでそれを受ける。嫌な音が響いた。恐らく折れたのだろう。左手はポーションを飲まない限りは使えない。
尻尾で攻撃された衝撃で、修也は後退した。そこに数匹の狼が迫る。
剣を薙払って狼達を吹き飛ばし、その内の1体に向かって、剣で何度も斬りつける。狼が魔石になったと思ったら、横から狼が突進してきた。
修也はまた後退する。
一瞬剣を鞘に戻して、バックパックの紐を緩めて、奥にあるポーションを手探りで探す。その間に狼たちが迫って来たが何とかポーションを取り出して、口にする。
すぐにバックパックの紐を締め、使えるようになった左腕で、突進してくる狼を殴った。
完全に治りきっていなかったらしく、左腕に僅かな痛みが走るが、それを無視して、修也は右手で鞘から剣を抜いた。
「グルルルルル……」
狼達は唸り声を上げて、修也の様子を伺っている。
「すぅ……」
深呼吸をして、それから辺りを見渡す。
狼の数は17匹ほどに減っていて、その全てが修也を睨んでいる。
その間、修也は第2の心臓の鼓動を止めて周囲の魔力を取り込んでいた。取り込める量が満杯になったと同時に、第2の心臓を動かした。
「…………」
剣に、魔力を込める。
警戒しながらも、修也は歩き始めた。
それを見て、狼達の内の1体が修也に飛びかかってくる。修也はその場で跳び、勢いをつけて狼を真っ二つにした。勢いをつけすぎたのか1回転して、着地する。
剣に込めた魔力が失われ、修也の中の魔力が少し減った。
修也は再び走り出した。それにつられて狼が向かってくる。何度も斬りつけて、修也は狼を魔石に変えた。
突進してくる狼を蹴り、倒れた所を何度も斬る。狼は光の粒となって消えた。
数体の狼が一斉に向かって来る。
「フッ!」
剣に魔力を込めて、衝撃波を放った。下から突き上げられて、狼達は宙を舞う。
残りの数は少ない。数回衝撃波を放てば十分に倒せる。
そう思ったのも束の間、また数匹の狼が向かってくる。
向かってくる狼の内の1体の脳天に剣を叩きつけた。その後胴体に何度か斬りかかった後、修也は2体目の狼の元に向かう。
跳びかかってくる狼を避けて、その腹を斬った。そのまま動かなくなり、狼は魔石に姿を変えた。
その後、また剣に魔力を込めて衝撃波を放った。それによって狼を吹き飛ばし、狼は魔石になった。
後8体。
狼の元に向かおうとした―――その時。
狼達が、一斉に逃亡した。
「…………」
敵わないと悟って逃げたようだ。
修也は、剣を鞘に収めて、呟く。
「……行くか」
採掘場までの道のりは、まだ長い。
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