空と君のあいだに。
ポプラ並木の道を、
君と一緒に歩くのが大好きだった。
夏の暑い日や、
雨が降る日は木陰に隠れるように、
木の隙間を縫うように歩いたね。
君を見上げると、
木漏れ日が君を祝福するように降り注いで、
そのまま笑顔で飛び去っていくんじゃないかと不安になったりもした。
学校が嫌いな君は、
何度か学校に行くフリをして僕と遊んでくれたね。
辛いのに我慢して行く必要なんてなかったんだよ。
君は頑張り過ぎて、
人間の友達を作るのが下手になっちゃった。
君が悲しい恋を選んでから、
僕とは遊んでくれなくなったね。
胸を弾ませて家を出て、
塞ぎ込んで帰ってくる君を、
僕は何度も引き止めようとしたけど、
『ごめんね』
と謝られるだけだった。
君は何も悪くないのに。
君があいつと会わなくなってから、
君は部屋から出てくる事も無くなった。
君の両親も困るばかりで、
君のために戦おうとはしなかった。
…だからね、
僕は後悔なんてしていないんだ。
きっと、
君が知ってしまえば飛んできてくれるだろう。
でも、
もういいんだ。
もう悲しい想いなんてせずに、
部屋の中でゆっくり傷を癒して、
元気になったら外に出てほしい。
僕はあの日家から抜け出し、
君を傷付けたあいつを咬んだ。
それから君の両親に連れられ、
この檻の中に入れられた。
知れば君は怒るだろう。
あいつを咬んだ僕に対しても、
僕をこんな所に捨て去った両親に対しても。
君は優しいから、
優し過ぎるから、
自分のせいだとまた苦しんでしまう。
最後まで君を守るためには、
君に知られずに終わる事が一番いいんだ。
もうそばにはいられなくなるけど、
僕は君を愛してるよ。
ずっと、
ずっと。
中島みゆきさんの【空と君のあいだに】が、
犬から見た飼い主への気持ちを綴ったものだと知り、
インスパイアされました。
PS.犬が人を噛んでも殺処分しなきゃいけない法律はありません。
きちんと責任を取った上で最後まで愛してあげてください。