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むつのはな  作者: あみか
第二章
34/102

 太知がふっと息を吐き、剣を構える。あの剣、一撃必殺と言うよりは、一対多数に向いていそうな形状だな、と陸奥は思った。

 太知が構えるのを見て、烈と砂も体に力を入れる。主はゆるりと構えているように見えるが、それでも隙らしき隙はない。蛍は、初めて感じる緊張感に、怯えるしかできないようだった。


 先に動いたのは太知だった。上段に構え直し、走り寄りながら烈を目掛けて一気に振り下ろす。遠すぎて全く間合いに入っていなかったが、烈は思わず横に避けた。それは狙って避けたと言うよりかは、気合いや気迫と言ったものに押されたようにも見えたが、結果的にはその動きは正解だった。


 烈の真後ろにあった大木が、大きな音を立てた。えぐるような大きな傷が巨木の真ん中についており、衝撃で枝が折れ、葉が落ちた。

 烈の来ていた衣の裾もスッパリと切れており、その頬には血が滲んでいた。


鎌鼬かまいたちの者か」

 その刃の形、茶色にも見える髪の色、そして風を生み出すその力。

 古来より、知らぬ間に痛みもなく人を傷付ける妖怪として、そこかしこに潜んでいた大きな一族。この里にその一族はいなかったが、その能力は妖怪の中で知らぬ者はいない。


「主様。妙です」

 頬の傷を手の甲で拭いながら、烈は言った。

「うむ。故郷くにを離れれば離れる程、力は衰える。それには例外はない」

「ですがあの威力……」

 古の時代、まだ人々に妖怪が恐れられていた時代には、その強大な力は衰えることなく、全土で奮うことができたと聞く。

「人間を憎みながら、もしや人間に唆されたか……!」

「黙れ!」

 その憎しみを全てぶつけるように、剣を奮う。

 空を切り裂くその一閃は、あろうことか土蔵を直撃し、蔵は上下真っ二つに割れた。


 砕けた壁、大きな塊と小さな塊が一緒くたになって空から降ってくる。

 陸奥は頭を抱えながら、辛うじて転がるようにその場を離れる。こんなことであれば、様子を見ていないでとっとと離脱すればよかった。

 土煙で目は開けられず、下手をすれば咳き込みそうだ。袖で口を覆いつつ、少しずつ後方へと下がって行く。壁の残骸がそこら中に散らばっており、注意しなければ転んでしまう。


 涙目になりつつ後退する中、既に土煙が薄くなっていた。憎しみで彩られた太知の瞳は、ついに陸奥の姿を捉える。

「見つけた」

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