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むつのはな  作者: あみか
第二章
31/102

 陸奥はぼーっとしながら庭を歩く。手入れの行き届いた美しい庭だった。昨日は気が付かなかったが、この大きな屋敷の外にも家がいくつか立っていた。山の中だけあって起伏も多かったが、日当たりも良好で、小さな畑がいくつもあった。

 芥はどうやって事件を解決するつもりなのだろう。なんの手掛かりもないというのに。

 陸奥は首を振った。自分にはもう関係のないことだ。


 暫くうろうろしながら、地下牢にでも行ってみようかと思い立つ。寝不足のせいか、頭が回らない。暖かな日差しが更に眠気を誘う。部屋に隣接したベンチに腰掛ける。地下牢に行く前に、少し眠った方がいいかもしれない。

 座ったベンチの木も温かく、うとうとまどろみ始める。

 芥。道。主。真昼様。カグリの街を襲った二人。いろいろな人物がぐるぐるとし、夢の中へと落ちていく。


「何してんの」

 急に声をかけられて飛び跳ねるように起きる。びっくりしすぎて声も出ない。

「あ、ごめん」

「あなた、昨日の……」

 黒に近い灰色の短髪。主の脇に控えていた、烈の隣に座っていた男。陸奥から少しだけ距離を取って座る。

「あんたはあいつと一緒に行かないの?」

 神隠しの件を芥が引き受けたことを聞いたのだろうか。陸奥が一人残っていることを訝しんでも仕方がない。

「私は……あの人とはもう関係ないから」

 自分で言った言葉でチクリと胸が痛んだ。

「ふーん」

 それ以上彼は何も聞いてこなかった。ただ二人並んで座って、庭を眺める。陸奥はなんとなく気まずくなってくる。

「あなたも、人間が嫌い?」

 黙っているのに耐えられなくなって、陸奥は質問を投げかける。

「別に。どうでもいいよ」

 冷めたような、本当に興味がないような。憎しみを露わにしていた烈とは反対だ。

「本当に、あの男は解決できんの?」

「どう、だろうね。手がかりもないし。時間がかかるんじゃないかな」

「だろうな。主様もなんであんなのに頼んだんだか」

「……。あなたの知り合いも、いなくなったの?」

 お互いただ庭先を見詰めるだけで、目を合わせない。だからその顔色は見ていない。それでも、何の抑揚もない、冷たい声のトーンだけが耳に届く。

「砂、だ。まあ、小さい集落だし、皆知り合いみたいなもんだよ」

「そっか。早く帰ってくるといいね」

「生きてたらな」

 陸奥はそれ以上何も言えなかった。この人はもう諦めてしまったのだろうか。その可能性は考えても、口に出すには覚悟がいる。

「最初の奴がいなくなってから、もう七、八年くらい経つ」

「そ、んなに……」

「あの男にも、そんなに期待してないし」

 愕然とする陸奥を後目に、彼はそう言って去っていった。


 その後は誰をどこの街に派遣するのかという話し合いのために、屋敷にぞろぞろと人が集まってきた。陸奥は睨まれたりひそひそと悪口を言われるのに耐え切れず、部屋に籠って一日を過ごした。

 食事は蛍が部屋に運んでくれるので、二言三言言葉を交わすが、怯えさせているのが申し訳なくて話し相手には出来なかった。

 結局眠気には勝てず、その日は地下牢に行く前に眠ってしまった。

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