動き出す不老不死者4
馬車で15日ほど進み、俺は帝国に着いた。
道中は特に話すこともなく帝国と王国の貿易路ということもあり、道も整備され巡回もされているので盗賊などが出てくることはなかった。
一応定刻の商会の馬車に乗って帝国に入る際その商会の人と仲良くなっておいた。帝都に店を構えているらしく来た際は魔道具を下ろしてほしいそうだ。
既存の魔道具ならいくらでも作れるので、ヘルプとしてそこで3か月ほど働き、旅に必要な金銭を稼ごうと思う。
金貨や銀貨などの貨幣は王国から見て北にある宗教国家のパイモン公国が発行しているためどこにいても大体は使える。少なくともこの大陸では使えるだろう。
まず帝国のジューザ領に入った。
ここは王国と隣接しているため大きな砦があり、首都はにぎわっている。
商会の人の説明では帝都の次ににぎわっているらしい。
俺は宿の主人に3週間ほど泊まるといい、金額を払って散策に出た。
散策の結果では帝国の魔道具などはあまり王国と変わらないみたいだ。まあここにはルーム内で育てる食料を集めに来ているのでそこら辺は気にしていない。
魔道具や魔法はさらに東にある魔道国家ゲリュリオンに期待したいと思う。
散策などを打ち切り俺は宿にて料理を食べる。
「ここは料理に胡椒が入っているのか」
「お客さん胡椒が珍しいのかい?」
「ああ、王国では貴族が食べるようなものだったぞ」
「それは輸出を制限しているんだよ。皇帝陛下様が国民でも気軽に食べれるようになってから他国に輸出を本格始動するといっていたからね」
「なるほど、王国ではあまり見かけなかったわけだ」
「お客さん王国の貴族かい?」
「いやただの魔道具技師さ」
そう会話を打ち切って部屋に向かう。
しかし調味料は確保しておきたい。明日にでも確保に向かおう。
翌日の夜俺は胡椒の生産所を訪れていた。
買い付けに来た商人であり、現物をしっかり見てから購入しろと貴族様に言われていると話したらすんなり場所を教えてもらえた。
「見張りがなかなかいるな。超級魔法でも使うか。【インビシブル】」
10分ほど透明になれる魔法を使い畑にある胡椒の苗木を5本ほどルームにしまい込む。中で今では二人いる分身に農作業を頼んでいるため何とかしてくれるだろう。
この滞在している3週間で畑にある果実や野菜などの農作物はほとんどルームに移し替えることができた。
盗賊と変わらないかもしれないが見張りを置いても捕まえれない奴らが悪いのだ。
神様は信じているがどのような行いをしても地獄に行くのなら効率的に悪事を働いていようが関係ない。それに今回は俺は死ぬつもりはないのだ。
ジューザ領ですることも終わり、帝都に向かう。ジューザ領では俺に助けを求めてくる孤児の少女や魔道具技師が足りないから就職しないかなどの声をかけられたが無視をした。
金にはまだまだ余裕はあるし、別に少女に欲情したりしない。地獄での期間が長すぎて性欲などはなくなってしまっている。どこぞのハーレム系主人公にはなる気はない。俺は死なずに理想の異世界を作るのだ。
そうこう考えているうちに帝都についた。
特に何事もない20日だったと思う。帝国は王国より少しデカい農業大国だ。王国が工業大国に近い。鉱山などは豊富にあり、帝国と王国で鉱石と食料での取引を行っている。
そのため帝都はあまり感慨深くもなかった。人が多いだけで王国の街並みのほうがきれいに感じた。
「待っていたよ、ラスク君!」
「これから半年ほどお世話になります。」
「ようこそ、ジッポ商会へ」
帝国に来る間にお世話になったジッポ商会のところにヘルプに来た。今回は収穫した植物の管理などもしっかりしておきたいので、長めの半年の滞在だ。
ルーム内に自分で入り、採取した植物の様子を見る。
鳥小屋から少し離れたところに今回手に入れた植物などを植えさせている。まあ植えているのも自分というところがなんとも微妙というしかないが…
「コケー」
という間に半年がたった。特に問題なく魔道具を納めることができた。自分が魔道具に使う魔石を作ることができるのでなかなかの金額を稼ぐことに成功した。半年間で金貨55枚ほどになる。ジッポ商会はこの後10年ほどは魔石に困らないんじゃないだろうか?
今回一番驚いたことは魔力量の上昇だ。王国を旅立った時から約5倍ほどに増えている。魔力の増え方を一次関数的な増え方ととらえていたが二次関数の増え方に近いのかもしれない。
それによりルームの中にも劇的な変化ができた。大きさを約3倍にしたのだ。そこは5倍にしないのかと聞かれるかもしれないが、中の環境を整えるのには時間が必要なのだ。土入れや、草の成長を待たなければいけない。それに中で働く分身の性能を変更した。
前までは魔力を少し分け3日間中級魔法が使えるくらいまでの性能だったが、与える魔力を多くし、1か月上級魔法を使えるレベルにしてある。農作業をするにも根気は必要なのだ。最近はルーム内で鳥の餌まで作っている。
そしてルームの真ん中を遮るように大きな山を立て、そこから水が流れるようにしてみた。中にいる分身が水魔法で水を農作物に与えることができるが、何より景観が寂しいので追加しただけである。
そのせいで大きくできるはずのルーム内の川を水魔法で満たすことによって、魔力を無駄に使っているのだ。何一つ後悔はしていない(`・ω・´)
次に向かうのは魔道国家ゲリュリオンに向かうことにした。
今回の旅は馬車には乗らず徒歩で行こうと思う。何より行うのは盗賊の討伐だ。正義感とかではなく人間の構造が気になるのだ。
魔力のもとになる器官がしっかりと心臓にあるのかを確かめたい。人間は魔力を心臓から生産していると文献にはそれとなく書かれている。何より自分も心臓あたりにある魔力を感じながら魔法を使っている。
そして俺は魔道国家ゲリュリオンに旅立った。