実験を繰り返す不老不死者6
やあ、ラスクだ。
大型の魔物を放ったら、大陸が一つ滅んでしまった。
その大陸では完全に魔物テーマパーク同じことが起きている。完全に弱肉強食の世界だ。
他の大陸にそこで生まれたモンスターが進出しないように、結界を張らせてもらった。
さすがに滅んでしまっては実験ができない。そしてまたこの環境を用意するのにも時間がかかるのでめんどくさいと考えたからだ。
他の大陸では亜人の村ごと転移させてみた。その結果、エルフ、ドワーフ、獣人たちはなかなか人間社会になじむことができたと思う。国によっては「人類最高」みたいな宗教を掲げているところもあるが、おおむねは受け入れられているらしい。
ファンタジーの定番、ゴブリンさんやオークさんは受け入れてもらえなかったみたいだ。さすがに自分が作った実験動物が社会不適合者だと少し寂しい。
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そして時はながれ2000年ほど経過した。
なぜこれだけの時間が経過したかというと、何もなかったからだ。
そう何もなかった。戦争などは何回もあったし、魔物と人類の存続をかけた戦いもあった。しかし小説家になろうに乗りそうなご都合主義な展開は何もなかった。
それは俺が何も介入していなければこんなもんと考えるか、そういう世界では必ず神様による介入から物語が始まるのかを考える必要がありそうだ。
この2000年間、時代はみんな大好き中世ヨーロッパに固定され続けていた。そりゃそうだ。科学技術なんて何も発展しないんだもの。
魔石を使用した魔道具で少しは便利な世の中になってはいるが産出するのに、命がけの戦いをしなければならない。
そのため庶民には裕福な家でないと買えない値段設定になっている。魔法の発展を阻害しているこの世界ではこのように時代が止まったままだが、何もしていない外の世界だとどんな結果になるのか楽しみでしかたない。
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「ラスク、お前はもう行ってしまうのか。」
「ああ、さすがにすでに50歳になってしまったし、そろそろ旅に出て自分の魔法の限界でも試してみるさ。」
「貴様はこの領地にもう戻らないつもりか?」
「気が向いたら戻ってくるかもしれないし、もう戻ってこないかもしれない。それとも先に亡くなってしまうかもしれないな。」
「そんな冗談はやめてくれ。死ぬ前に一度は戻って顔を見せてくれよ。」
「ああ」
俺は現実の世界に魔物を放つために50歳にしてついに動き始めた。