露出にハマる妹とその兄と
ちょっと訳あって、小説自体2年ぶりとなる執筆を行いまして。
2年ぶり最初に着手したのが、まさかのコレです。
幾分前作から2年経ってるので、書き方とかべらぼうですがよろしくお願いします。
『頭隠して尻隠さず』
こんなことわざを、皆さんは知っていますか?
本来の意味としては、悪い事や欠点の1部を隠しただけで、まるで悪事の全てを隠しているかのような感じでいる事、みたいな、そんな意味である。
つまる所のツメが甘い、間抜け、馬鹿。そんな意味にも取れなくはない。
しかしこのことわざを文のまんまの意味で実践(まぁ不可抗力だったらしいんだけど)してしまった馬鹿がいるわけであって、過去の件からもツメの甘さが伺えるわけであって。
まあ何が言いたいかと言うとだな、
「露出すんなら最悪の事態を想定したうえで、その行為を万全の態勢で行え(不本意ながら)」
と言うこの物語の序章部分を暗示させることのできる、1つの複線を表す答えになる訳である。
俺の名前は棚橋空也、4年制大学の2年。
今俺は、
警察署にいます。
「いやぁ! まさに頭隠して尻隠さず。警察に見つかって土手にある土管の中に隠れようとしたんだけどさ、胸が突っかかっちゃって頭しか土管に入らなくて……まさに頭隠して尻隠さず!」
「…………」
「ツメが甘かった……あのスポットは警察の見回りが少ないと油断していた……まさか今日が夜間パトロールの強化月間の初日だったとは……」
「…………」
露出癖のある我が妹、棚橋奈菜(高2)
昨晩深夜2時ごろ、露出して町中を闊歩している所を、
警察に見つかり、現行犯逮捕された。
先ほどの文に語弊があった事をお詫びする。
実際には逮捕ではなく、任意同行である。
「危なかった……もしあの時前のボタン締めてなかったら、逮捕になってたっぽい……」
「まさか……とうとうお巡りさんにお世話になる日が来るとは……」
以前の短編を読んでくださっている常識ある読者の皆様ならお分かり頂けているであろう、この妹の異常性癖、露出。
毎晩……とまではいかないものの、高確率で深夜、家を抜け出しふらふらと町へ、そして衣服を脱ぎ捨て(しかし羽織るモノは1枚のみ持って)暗い路地裏なんかでイッツァフリーダム。
そんな変態痴女の妹が昨晩の露出中、なんとお巡りさんに見つかり、逮捕され掛けたと言う。
深夜3時、我が棚橋家の固定電話が大音量で鳴り響き、寝ぼけまなこな親父が受話器を取り、
そして通話後血相を変えて妹の部屋へ、そして何かを確認した後、親父が荒ぶった。
「奈菜が……奈菜が、そんな馬鹿なぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!」
その後、電話をしてきた近所の警察署へ親父と起こされた俺が直行(お袋は気分を悪くして自宅待機)
で、今に至る。
「お宅の娘さんね、裸にYシャツを一枚着た姿で夜の街にいたのね。お父さん、これ知ってた?」
「い、いえ……そ、そんな事……」
「下に至っては何にも履かず。これさ、一歩間違えたら犯罪だし、そもそもこんな年頃の娘、非常に危ないの分かる?」
「申し訳ない……まさか娘に限って、こんな事をしてるとは……」
警察署のとある小部屋で親父とお巡りさんが重い話をしている中、俺は2人の横にしゃがみ込む妹の側へ。
妹は毛布をかぶっていた。多分その下は裸Yシャツ待った無し。
毛布の裾から見えるスリッパ、そのスリッパを履く奈菜の素足は泥で汚れていた。
「……とうとうお縄についたか馬鹿妹よ」
俺は小声で話掛ける。
「まさか見つかっちゃうとは思ってもいなかったよ、ふふふ」
「お前反省してねぇな?」
「反省はしてるよ。もうあの路地裏では露出しない」
「あの路地裏では……って、お前また別の場所でやる気なのか……」
この前向きかつチャレンジ精神、不屈の闘志。
俺の妹はもうダメかもしれん。
その後、お巡りさんにこってり怒られ、しかしその日の内には警察署から解放され、
帰路についたわけだが……
自宅。
「奈菜、話がある。リビングに来い」
「……うん」
親父、お袋、奈菜の3人はリビングに集まり、会合を開いていた。
俺、蚊帳の外……
「……まぁ、家にいても気まずいし……」
今日は日曜日、家にいてもアレなので、外出。
そして、玄関を出たその目の前に、
1人の男子が立っていたのである。
「……あなたがお兄さんですか?」
「……は?」
第一声がコレだった。
「お前が古池か!!?」
「お初にお目に掛かります、お兄さん」
『妹が露出狂だと言う事実3』にて、奈菜の露出癖を知り、そして何故か奈菜の下を褒め称えたという謎の男、古池くん。
奈菜の同級生であり、奈菜がたまにする雑談の中にも数回登場していたヤツだ。
「奈菜さんが国家の駄犬に束縛されたと聞き、こうして心配して誠に勝手ながらご自宅へと伺った所存であります」
「……うわぁ、たぶんコイツめんどくさいタイプのキャラだ」
あと国家の駄犬って何?
「お兄さん、奈菜さんは……奈菜さんは、無事なのですか!!?」
突然俺の服の袖をつかみ、揺さぶってくる古池くん。
「ちょっまっ……大丈夫、大丈夫だから奈菜は今家にいるからあと誰がお兄さんだコラぁ!」
義兄さん。
「なんと……奈菜さんは無罪放免だったのですか?」
「無罪……なのか? まあでも解放はされて今は家に…」
「なんとなんと! しかし良かった、いや良かった」
パァっと、晴れやかな顔を見せる古池くん。
「いや〜…本当良かった。やっぱりいざという時はプライドを捨ててでも裏から手を回すべきだと実感を得ましたよ!」
「……ん?」
この世界線に於ける、現日本国の国家警察のトップの名を、皆々様はご存知だろうか。
名を、古池征太郎。
その苗字と、ヘンティカン古池くんの今しがた発せられた言葉より、現時点での状況を読者諸君には理解をして頂きたい。
「なんてことだ…」
警察のトップの孫が露出狂に恋をした。
まあ…恋、なのか何なのかはアレだが。
「僕は奈菜さんの、奈菜さんのあの綺麗で可憐でふつくしい下に全てを魅了されたんです。あのコビ砂漠に咲く一輪の花のような、幻想的な花弁。その内より溢れ出る、花の蜜とは花粉とは、この僕の大事なキノコを」
「お前いっそお爺ちゃんに逮捕でもされたらどうだ?」
人の家の前で、熱く熱く俺の妹のアレについて比喩表現ながらも語り説くヘンティカン古池くん。
この町の治安が心配です。
大丈夫かお巡りさん?
「お兄さんは妹さんの…奈菜さんの…あの素晴らしさを、理解しているのですか?」
「貴様は何を言っているのだ?」
「あの華麗な、その滴る一滴の雫…はぁ、良きかな」
「急だな。展開が急だ。古池くんよ、お前強引にオチへ持って行こうとしているな?」
オチ。
どうせこいつも脱ぎ出したりするのだろうな。
最近流れが読めてきている。あの前科一般の妹のせいで。
だいたい最後にどきつい下ネタぶっ込んでEND。
流れは読めているのだ。
故に、油断していた。
古池くんはあくまでサブキャラ。
彼が脱いだとて、インパクトの問題に直面する。
そもそもの話、この小説のタイトルは何だ?
約2年ぶりにぽんこつ作者が小説を書いた。
2年ぶりにもかかわらず、最初に着手した作品がこの露出妹シリーズだ。
つまりそれは、印象が強かった。
妹が露出して町に繰り出し、下ネタ連呼するあの感じが好きだったから。
だから、2年ぶりの復帰でまず真っ先にこのシリーズに着手したのだ。
2年経っても忘れぬ、そのインパクト。
「お兄ちゃん!」
声がした。
背後から声がした。
聞き慣れた、家族の声が。
「……っ‼︎」
目前に居る古池くんの目は俺の後ろを見つめ、その眼は大きく見開かれていた。
その口元には驚きと、そして愉悦の笑みの口。
にやり
と、笑っていた。
俺は、振り返った。
声がした後ろを見るために。
玄関の開かれた扉の向こう。
そこには、
「私ね…この家を出て行く事にしたの。だから、お兄ちゃん…
一緒に…来て!」
一糸纏わぬ、産まれたままの姿の妹が、そこにいた。
「……え?」
短編で不定期に書いてきたこのシリーズも次回でラストです。
もしかしたら次の更新がまた2年後とかになっちゃったら本当スミマセン。
あくまで一時的な執筆再開なモノで…