四話
夕食時。
「うん、美味い。久遠、また料理の腕を上げたか?」
「ふふふ、日々精進しておるのじゃ」
「そうか。うんうん、美味いぞ」
本当に美味しそうに自分の料理を食べてくれる夫を見て、嬉しそうに微笑む久遠。
朝陽も夢中になって食べていた。
暫くして、ウィルは隣に置いておいたプレゼント袋を手に取る。
「ふっふっふ、久遠、朝陽。実はお前達にプレゼントがあるんだ」
「本当!?」
朝陽は食事を一旦止め、席から立ちあがる。
「こら、行儀が悪いぞ」
「あぅ……ごめんなさい。ママ」
久遠にぺちっと頭を叩かれ、座る朝陽。
ウィルは苦笑した後、まず大きいプレゼント袋を朝陽に渡した。
「ほら、朝陽の分」
「わぁぁ……っ。ねぇパパ、今開けてもいい!?」
「勿論」
朝陽は慌てず包装を解いていく。
中から出てきたのは、大きな狐のぬいぐるみだった。
「これ!! 私が前欲しいって言ったお人形さん!!」
「旦那様、覚えておったのか」
「忘れる筈ないだろ」
「ありがとうパパ!! 大切にするね!!」
ぎゅううとぬいぐるみを抱きしめる朝陽。
朝陽がぬいぐるみに夢中になっている間に、ウィルは久遠に小さいほうのプレゼント袋を渡す。
「今開けてもいいぜ?」
「……いいや、後でにする。楽しみにとっておきたい」
「そうか」
プレゼントを抱きしめる久遠。
ウィルは微笑んだ後、食事を再開する。
「よーし! 今日は一杯食うぞー! ハッハッハ!」
ウィルは豪快に笑いながら、料理を口に運んでいった。
◆◆
夕食後。
寝室で。
「くぅ……くぅ」
朝陽は狐のぬいぐるみを抱きしめながら眠っていた。
ウィルはその寝顔を愛おしそうに見つめ、頭を撫でる。
「おやすみ、朝陽」
「ん、ぱぱぁ……」
寝ながら笑う朝陽に布団をかけ直してやり、ウィルは寝室から出て行った。
リビングには、久遠が待っていた。
「またせたな、ハニー」
「ふふふ、ダーリン♪」
ウィルは久遠をお姫様抱っこする。
久遠は嬉しそうにウィルの首に手を回した。
ウィルはリビングに向かい、久遠を抱いたまま座る。
「ありがとう、俺がいない間に朝陽を育ててくれて」
「朝陽はいい子じゃ。心配ない。何せ妾と旦那様の」
ウィルは久遠の唇を人差し指で塞ぐ。
「二人きりの時は?」
「……ダーリンっ♪」
久遠は嬉しそうに囁く。
ウィルは微笑んで、久遠の稲穂色の長髪を撫でた。
「今夜は存分に甘えてくれ。……俺はお前だけの男だから」
「……嬉しいっ♪」
久遠はウィルの首筋にキスする。
久遠の九本の尻尾は、愛しい男を決して離さないとばかりに各所に巻きついた。
「……そういえば、プレゼントは見てくれたか?」
「ネックレスじゃろう? ほら」
久遠は胸元にぶら下がったネックレスを愛おしそうに掬う。
「ありがとう、ダーリン。本当に嬉しいのじゃ……っ」
「よかった」
微笑むウィル。
久遠はとろんと蕩けた瞳で、ウィルの瞳を覗いた。
「なぁ、ダーリン」
「どうした?」
「……二人目、欲しくはないか?」
久遠の発言にウィルは瞳を丸めた。
が、すぐに柔和に微笑む。
「ハニー。俺はお前との子なら、何人でも欲しい」
「っ。嬉しい……妾も、ダーリンとの子供がもっと欲しい」
真っ赤な顔ではにかむ久遠。
ウィルは立ち上がり、二人の愛の巣へと向かった。
「今夜は長いぞ。ハニー?」
ウィルはふわりと、久遠の唇を奪う。
唇が離れた後、久遠はあわわーっと顔を真っ赤にした。
九本の尻尾は、ぴちぴちとせわしなく動いている。
二人はそのまま、愛の巣へと入っていった。