二話
南方の王国は酷い有様だった。
男を中心に子供、老人まで皆殺しにされ、女は慰め物にされていた。
栄華を誇った王国の面影はどこにもなく、冷たい風と共に朽ちていく廃墟が虚しさを強調する。
城の地下牢に、サーティス王国の姫君は囚われていた。
ジメジメとした湿気に包まれ、蝋燭の灯りが仄かに辺りを照らし出す。
鉄格子の牢に閉じ込められている姫君は、奥まで逃げてガタガタと震えていた。
その様子を眺めて、門番のモンスター達は下品な笑みを浮かべる。
「ヒヒヒッ、い~い娘だぁ。魔王様の命令がなけりゃ、とっくに玩具にしてるのに」
「おいおい。……まぁ、わからなくはねぇがな」
視姦され、姫君は自分の身体を抱きしめた。
嫌悪と、それに勝る圧倒的恐怖。
魔王の命令が無ければ、今頃強姦されている。
想像し、恐怖のあまり涙を流す姫君。
そんな彼女の泣き顔が、門番達の嗜虐心を刺激する。
「涎が出ちまうなぁ……最高の泣き顔だぜ。あ~、今すぐ犯してぇ」
モンスターの一匹が舌なめずりしながら鉄格子を掴む。
やれやれと肩を竦める隣のモンスター。
次の瞬間、事は起きた。
鉄格子を掴んでいたモンスターが突然倒れたのだ。
隣にいたモンスターは訝しげに倒れた同僚の元へ向かう。
揺さぶり、意識がないことに気付いて、動揺するモンスター。
しかし彼もまた、糸切れ人形のように意識を失った。
暫くして、モンスターが何者かに引きずられ始めた。
姫君には、その何者かを視認できない。
だが、確かに誰かがそこにいる。
地下牢の出口まで、モンスターを運んでいるのだ。
恐怖のあまりガチガチと歯を鳴らす姫君。
モンスター達が地下牢の外へ運び出されると、ゴキ、ゴキッ、と不気味な音が鳴った。
「申し訳ありません。あまり見せたくなかったもので」
何もないところから声が出る。
スゥゥと姿を現したのは、黒髪の美丈夫、ウィルだった。
「ひぃぃ……ッ」
姫君は悲鳴を漏らす。
ウィルは苦笑して、自分がどのような存在であるかを説明した。
「安心してください、姫君。俺はサーティス王国の国王に頼まれて、あなたを救出しに来たんです」
「!!……で、でも、信用できないわ!!」
「信用して貰わなければ困ります。ですが……現状はお察します」
ウィルは拳を握る。
「もう少し待っていてください。魔王を始めとしたモンスターを倒してきます。その後、姫君を救出します」
「……ッ」
「では、失礼します」
ウィルは透明になって消えていった。
完全に見えなくなる。
姫君はまだウィルを完全に信用したわけではない。
が、ほんの少しだけ、期待していた。




